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定期会合という表向きの公務は無事に終わった。だが、ケンジたちにとっての本番はここからだ。目的である「ゴーレム技術の入手」を引き出すには、まずはこちらの有用性を知らしめる必要がある。
ケンジは王宮の従者に、ゼノス将軍との面会を調整するよう依頼した。
「……ほう、何か企んでいると思ったが、準備ができたようだな。面白い、行こう」
ゼノスからの返答は快諾だった。
合流したケンジとリィザ、そしてゼノスの三人は、先日ザルガスに案内された広場へと向かった。そこには、王都の象徴でありながら、今は静かに鎮座するだけの「噴水のゴーレム」がある。
「将軍、少し試したいことがあるんです。このゴーレムを、少しだけ詳しく見させてもらってもいいですか?」
「構わんが、無駄足だぞ。我らもこれまで、ゴーレムを再稼働させるべく研究は続けてきた。だが、結局は魔素不足が原因だ。動かすためのエネルギーが足りん以上、どうにもならんというのが結論でな……」
ゼノスが腕を組み、諦めを含んだ口調で語る。その横で、ケンジはゴーレムの冷たい石の肌にそっと手を触れた。
(マスター、回路のバイパスルートを構築しました。現在の環境魔素を一点に凝縮・最適化すれば、駆動系への供給は可能です)
「……やってくれ」
ケンジが小さく呟き、指先から微細な魔力を流し込む。それは、ゴーレムを無理やり動かすための力ではなく、滞っていた魔力の流れを整える「呼び水」だった。
直後――。
ゴゴ、と地響きのような低い駆動音が広場に鳴り響いた。
「なっ……何だ!?」
ゼノスが驚愕に目を見開く。
次の瞬間、ゴーレムの口から少しずつ水が出はじめたかと思うと、一気に勢いよく噴出した。数百年もの間、沈黙を守っていたゴーレムから放たれた水しぶきが、陽光を浴びてキラキラと輝き始める。
「な……水が……。信じられん、ケンジ、お前は何をした!?」
「将軍の仰る通り、魔国全体の魔素が減っているのは事実です。全体を動かすには足りないかもしれませんが、特定の個体……いくつかのゴーレムに絞って回路を最適化すれば、今でも動かすことはできるようですね」
ケンジは涼しい顔で説明すると、再度ゴーレムに触れた。噴水はまた、何事もなかったかのように静かにその動きを止める。
驚きのあまり言葉を失っているゼノスに対し、ケンジはこれ以上ないほど穏やかな微笑みを向けた。
「他にもいくつか、見ておきたい場所があるんです。……ついては将軍。この技術調査の継続、王の許可を取っていただけますか?」
ゼノスは呆然と噴水の跡を見つめ、それからようやく、面白そうに口角を上げた。
「……ハッ、全く。お前たちはどれだけ俺を驚かせる気だ。……分かった、王のところへ行く。許可を貰ってくるから、ここで待っていろ」




