ツインテール姐さん覚醒編 ――笑いで制圧、正義で統率 第1話 可愛さ詐欺、校庭に現る――女子やけど主力や!
春。
ランドセルがやたらデカく見える一年生たちが、校庭に解き放たれる季節である。
その中でもひときわ目立つのが――
低めツインテールを揺らす、小柄で愛玩動物のように可愛らしい少女。
赤嶺美月。
ぱっと見の印象はこうだ。
小さい
可愛い
守ってあげたい系
つまり――
完全にナメられるタイプである。
休み時間。
男子たちは校庭でサッカーを始めていた。
「よっしゃ、やるで!」
「パス回せー!」
そこへ、ひょこっと現れる美月。
「ウチも入る」
男子、即反応。
「えっ」
「女子やで?」
「ケガするで?」
完全に“戦力外扱い”。
だが美月は平然としている。
「関係ないやろ」
その一言で、なぜか少し空気が変わる。
「ほな……入るだけ入ったら?」
半分冗談で参加を許可。
この判断が、後に全員の価値観をひっくり返すことになる。
試合開始。
ボールが転がる。
偶然、美月の足元に来る。
「はいはい、取るでー」
男子が軽く詰める。
次の瞬間――
トン。
ボールが消える。
「え?」
足元から消えたボールは、美月のコントロール下にあった。
小刻みなタッチ。
低い重心。
無駄のない動き。
スッ、スッと一人、二人と抜いていく。
「えっ、速っ」
「取られへん!」
三人目。
フェイント一発で置き去り。
ゴール前。
「いくで」
シュート。
――決まる。
沈黙。
校庭、完全停止。
風だけが吹いている。
一人の男子が、ぽつり。
「……今の、偶然やんな?」
二回目。
今度は完全にマークが付く。
「絶対止めるで!」
囲まれる。
だが――
「遅いで」
スルッ。
抜ける。
また抜ける。
最後はなぜかキーパーの横をすり抜けるように決める。
確信に変わる。
「……これ、ヤバいやつや」
試合終了後。
男子たちが集まる。
「なあ」
「何や」
「レギュラーやな」
即決。
だが本番はここからだった。
次の日。
今度は野球。
「外野行っとき」
完全に遠ざけられるポジション。
美月、素直に行く。
「ええで」
一球目。
カキーン!
高い打球。
外野の頭を越える……はずだった。
だが。
美月が走る。
一直線。
落下地点を読む。
ジャンプ。
――パシッ。
捕る。
「うそやろ!?」
「今の捕る!?」
二球目。
今度は横に強い当たり。
美月、飛ぶ。
ゴロゴロ転がる。
砂まみれ。
だが――
ボールはグローブの中。
「アウトやで」
ドヤ顔。
三球目。
今度は送球。
美月、構える。
投げる。
ビシッ。
ストライク送球。
完全に空気が変わる。
「……女子やけど」
「いやもう関係ないやろ」
「普通にうまい」
そして本人。
汗もかかず、平然と一言。
「普通やで」
普通ではない。
周囲の評価が変わるのに、時間はかからなかった。
可愛い子 →
ちょっと変な子 →
ヤバい子 →
頼れる主力
完全に格上げ。
だが、美月はそこでもブレない。
ただ楽しいからやる。
ただ勝ちたいから動く。
そして――
チラッと周囲を見る。
(見てるな)
ニヤッ。
「ええやろ」
完全に理解している。
注目されていることを楽しんでいる。
帰り道。
蓮がボソッと言う。
「なあ……」
「なんや」
「お前、ほんまに女子なん?」
美月、即ツッコミ。
「何言うてんねん」
(間)
「女子やけど主力や」
決まった。
その日以降。
校庭の常識が変わる。
女子だから遠慮
女子だから別枠
そんな概念は――
ツインテールに踏み潰された。
先生は職員室で言う。
「赤嶺さん、すごくいい子なんです」
「うん」
「でも……」
「何?」
「運動会が怖いです」
理由は明確。
どの競技でも主役になる未来が見えているから。
こうして。
小さくて可愛いツインテールは――
校庭で“戦力”として認められた。
見た目とのギャップ。
圧倒的な運動能力。
そして、人を惹きつける存在感。
そのすべてが揃った時。
赤嶺美月はもう、ただの一年生ではなかった。




