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赤嶺美月の幼女任侠伝  作者: スパイク


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ツインテール姐さん成長物語 ――元気が余りすぎた結果、ヒロインになりました 第10話 うるさいのに優秀――みーちゃん、現場に配属される

東大阪・赤嶺製作所。

金属の削れる音が響くこの町工場に、

この夏、新しい“何か”が配属されていた。


名前――赤嶺美月(五歳)。

役職――未定。

特徴――とにかくうるさい。


「おはよー!!」

朝一番、元気な声が工場に響く。


「これなんや!」

「なんで回るん!」

「これ重いん!」


質問三連発。


職人たちは顔を見合わせる。


「……来たな」

「今日も長い一日や」


だが、不思議なことが起きていた。


前回までは――

完全に邪魔だった。


しかし今回は違う。


「そこ危ないで」


「はい!」


即停止。


「ここ触ったらあかん」


「わかった!」


絶対に触らない。


言われたことは、確実に守る。


しかも――

やたら観察している。


午前中。


清一が旋盤を回している。


美月は少し離れた位置で、じっと見ている。


「……じーじ」


「なんや?」


「それ、

次これ使うやろ?」


指差したのは、工具。


清一は一瞬止まる。


「……せやけど、

なんで分かるん?」


「さっきも使ってたやん」


正解である。


「……お前、

見とるな」


「見てるで!」


得意げ。


別の作業台。


職人が言う。


「みーちゃん、

そのレンチ取ってくれるか?」


「これやな!」


迷いなし。


「おお、合ってる」


「次、これやろ?」


もう一つ持ってくる。


職人は笑う。


「……先読みするなぁ」


事務所。


おばちゃんが帳簿をつけている。


「みーちゃん、

これ持ってってくれる?」


「はい!」


頼まれた書類を、

ちゃんと目的の人に届ける。


戻ってきて一言。


「終わったで!」


おばちゃん、感動。


「……この子、

普通ちゃうな」


花が横でうなずく。


「せやろ」


昼休み。


職人たちが弁当を食べながら話す。


「最初な、

完全に邪魔や思ってたんやけどな」

「せやな、質問多すぎて」

「でもな……」


一人が言う。


「邪魔せえへんねん」


これが大事だった。


危ない場所には入らない

-作業の流れを止めない

-言われたことは確実にやる


しかも、

覚えようとしている。


午後。


「みーちゃん、

これここ置いといて」


「ここやな」


正確。


「終わったで!」


声も大きい。


清一が笑う。


「お前な、

声だけもう一人前やな」


「ほんまか!」


褒められていると思っている。


さらに。


「これ次いるやろ?」


誰にも言われていないのに、

必要なものを持ってくる。


職人たちの動きを見て、

自然と理解している。


「……なあ」


一人が言う。


「この子、

普通の子ちゃうな」


「せやな」


「なんか、

現場分かっとる」


夕方。


仕事終わり。


「また来るで!」


美月は元気よく帰る。


静かになる工場。


職人の一人がぽつり。


「……おらんと、

ちょっと寂しいな」


「せやな」


清一は腕を組む。


「最初は邪魔や思ってたんやけどな」


花が笑う。


「今は?」


「……戦力や」


その夜。


真人が聞く。


「今日、どうやった?」


美月は即答。


「働いたで!」


「……え?」


「レンチ持ってって、

紙も持ってって、

見てた!」


真人は春菜を見る。


「……これ、

バイト代いる?」


春菜

「五歳です」


布団の中。


美月はしろくま先生に話しかける。


「せんせー、

ウチな、

工場のこと分かってきたで」


先生は無言。


だが、

最前列で聞いている。


この頃、赤嶺製作所の人々は気づき始めていた。


ただ元気なだけではない。

ただうるさいだけでもない。


見る力

覚える力

空気を読む力


それらを、

無意識で使っている。


そして何より――

楽しそう。


清一は静かに言った。


「……この子、

只者ちゃうな」


誰も否定しなかった。


こうして、

“邪魔な子”だった美月は、


気づけば――

現場の戦力になっていた。

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