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赤嶺美月の幼女任侠伝  作者: スパイク


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ツインテール姐さん成長物語 ――元気が余りすぎた結果、ヒロインになりました 第9話 夏休みは現場主義――質問地獄で工場が止まる日

夏休み。

それは子どもにとって夢の時間であり、

大人にとっては試練の期間でもある。


赤嶺美月の場合――

試練のレベルが違った。


「ひまやああああああ!!」


朝九時。

すでに全力である。


「走ったで!

もう走ったで!

つぎ何するん!?」


春菜は冷静に答える。


「……知らん」


真人は新聞をめくりながらつぶやく。


「もう一回寝てくれへん?」


「いやや!」


即却下。


このままでは家が持たない。

いや、家は持つが大人の精神が持たない。


そこで春菜が一言。


「……じーじのとこ行く?」


その瞬間。


「いく!!」


決定。


東大阪・赤嶺製作所。


金属の削れる音。

油の匂い。

職人たちの真剣な顔。


そこへ――


「おはよー!!」


場違いなほど明るい声。


「来たでえええ!!」


低めツインテールが揺れる。


清一

「おお、みーちゃんか」


「じーじ!

これなんや!?」


入って五秒で質問。


指差した先は、旋盤。


清一

「これはな、金属削る機械や」


「なんで削るん?」


「形作るためや」


「なんで形作るん?」


「使うためや」


「なんで使うん?」


清一

「……」


いきなり詰んだ。


別の職人の元へ。


「これなんや!?」


「これはドリルや」


「なんで回るん!?」


「モーターや」


「モーターってなんなん!?」


「……電気や」


「電気ってなんなん!?」


職人

「……みーちゃん、

ちょっと休憩しよか」


完全敗北である。


事務所。


ベテラン事務員のおばさんが、帳簿をつけている。


そこへ。


「おばちゃん!

これなにしてるん!」


「お仕事やで」


「なんでお仕事してるん!」


「お金もらうためやで」


「なんでお金いるん!」


「……生活するためや」


「なんで生活するん!」


おばちゃん

「……花さーん!!

助けてー!!」


花が出てくる。


「どうしたん?」


「質問止まらへん!!」


花は美月を見て笑う。


「ええやん、元気で」


「元気すぎるんや!!」


工場の奥。


美月は次々と場所を移動する。


「これなんや!」

「これどうやるん!」

「これ重いん!?」


完全に現場を回しているのは美月だった。


清一は頭をかきながら言う。


「……みーちゃん」


「なに?」


「ちょっとだけ、

静かにできるか?」


美月は一瞬考えた。


「できるで」


――そして五秒後。


「でもこれなんや!?」


無理だった。


昼休み。


全員、ぐったり。


「……こんな疲れる日、

久しぶりや」

「質問だけで体力持ってかれたわ……」


その真ん中で、美月は元気いっぱい。


「たのしいな!!」


誰よりも元気。


誰よりも笑顔。


誰よりも声がデカい。


花がぽつりと言う。


「この子な……

ただ騒がしいだけちゃうねん」


「え?」


「ちゃんと見とるねん。

ちゃんと覚えようとしてる」


清一もうなずく。


「……せやな」


午後。


「みーちゃん、

これ持ってきてくれるか?」


職人が軽く言う。


「これやな!」


即正解。


「おお、分かっとるやん」


「さっき見てたもん!」


この一言で、

空気が少し変わる。


夕方。


「また来るで!」


美月は元気よく帰っていく。


静まり返る工場。


職人がぽつり。


「……嵐やったな」


「でもな」


別の職人が言う。


「ちょっと、

おもろかったな」


清一は笑った。


「せやろ」


その夜。


真人が聞く。


「どうやった?

工場」


美月は満面の笑み。


「めっちゃおもろい!!

また行く!!」


真人

「……毎日はやめとこな」


こうして、

夏休みの新しい居場所が決まった。


それは、

公園でも、家でもなく――


町工場。


まだこの時は、

誰も気づいていない。


この“質問地獄の幼児”が、

やがて現場を仕切る存在になることを。


そして――

この日を境に、

赤嶺製作所の空気が、

ほんの少しだけ明るくなったことを。

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