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赤嶺美月の幼女任侠伝  作者: スパイク


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ツインテール姐さん成長物語 ――元気が余りすぎた結果、ヒロインになりました  第8話  ニュースは重たい、みーちゃんは軽い――景気後退を走り抜ける幼児

2011年前後。

テレビをつければ、どのチャンネルも同じ顔だった。


難しい顔のアナウンサー。

低い声の解説者。

そして、重たい言葉。


「景気低迷」

「先行き不透明」

「復興への道のりは――」


赤嶺真人は、ソファに沈み込むように座りながら、

その言葉をぼんやり聞いていた。


「……はぁ」


そのため息は、

仕事なのか、ローンなのか、世の中なのか、

もはや本人にも分からない。


春菜はキッチンから声をかける。


「またため息ついてるやん」


「しゃあないやろ……

会社もな、ちょっと怪しい空気やねん」


「ふーん」


「ふーんて何やねん」


その時だった。


「うわあああああああああ!!」


廊下を、何かが通過した。


真人は振り返る。


「……今、何通った?」


「みーちゃんやろ」


再び通過。


「いくでええええ!!」


今度はリビングを一周して消えた。


真人

「……元気すぎひん?」


春菜

「元気しかないからな」


テレビではまだ、

重たいニュースが続いている。


だがその横で、

全力疾走の幼児がジャンプしている。


この温度差である。


夕方。

近所の公園。


お母さんたちが集まり、

世間話をしている。


「ほんま、大変な時代やねぇ」

「将来どうなるんやろなぁ」

「不安やわぁ」


その背後で。


「まってええええ!!」


美月、全力疾走。


「はやいでええええ!!」


さらに加速。


「つぎ、ウチな!!」


割り込まずに主張する。


お母さんたちは、

その様子を見て苦笑いする。


「……あの子だけ、

別世界生きてへん?」

「むしろ希望やわ」


夜。

食卓。


真人はニュースを見ながら、

深刻そうに言う。


「なあ春菜」


「何?」


「日本、どうなるんやろな」


春菜は味噌汁をよそいながら、

さらっと返す。


「なるようになるやろ」


「軽いなぁ……」


その時。


「おとーさん!」


美月が全力で駆け寄る。


「見て見て!

ジャンプできるで!」


その場でぴょんぴょん跳ねる。


「……すごいな」


「せやろ!」


「いや、そっちちゃうねん」


寝る前。


美月はしろくま先生を抱きしめていた。


「せんせー、

きょうもな、

いっぱい走ったで」


先生は無言。

だが最前列で聞いている。


「また明日もな、

いっぱい走るねん」


満足そうに目を閉じる。


数秒後、もう寝ている。


リビング。


真人はソファに座り、

ぼんやりとその寝顔を見ていた。


「……なあ春菜」


「何?」


「この子、

何も知らんのやな」


「そらそうやろ」


「世の中がどうとか、

景気がどうとか」


「知らん方がええ時期や」


真人は少し考え、

ふっと笑った。


「……せやな」


テレビではまだ、

重たいニュースが流れている。


だが、その横で、

今日も全力で生きた子どもが、

安心して眠っている。


それだけで――

少し、救われる気がした。


「……オレ、

まだ頑張れるわ」


春菜は、

少しだけ優しく言った。


「そやろ」


翌朝。


「いくでえええええ!!」


また走っている。


真人

「……ほんま、

止まらんな」


春菜

「止めたらあかんタイプや」


この頃、まだ誰も知らない。


この“軽さ”が、

この“無邪気さ”が、

この“止まらなさ”が――


やがて、

多くの人を救う力になることを。


世の中は重たい。

でも、みーちゃんは軽い。


そして――

それでええのだ。

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