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ワールドプリズン 〜その監獄からは逃げられない〜  作者: HAKU
第四章 神造巨像

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26話 未熟なるギャラク

 前回のあらすじ

 再び、アネモネが殺される直前へと戻ってきたコウ。しかし、彼の前に『腸の発掘家』は現れず、アネモネのライブと、祭りは無事に終了した。

 祭りの片づけをしながら、「やはり、俺がココル大尉に助けられたときに見たアイドルは、アネモネと違う人物だった気がする。」と話すコウを、アネモネと体を左半分しか表していない、ピンク髪の女の子が見ていた。


 別のところでは、キキの人形である、メリーを直したギャラクは、彼女のいる牢屋に行ったが、彼の修復が下手だった為、キキはそれに憤怒した。

 キキが怒った理由が分からなかったギャラクは、「なぜ怒っている」かを聞いたが、それに対して怒りをあらわにした、キキとイルオに、『何か嫌な物』を感じたギャラクは彼女達の元から去ったが、一緒にいたメガイラは、ティシポネルとアレクトロを連れて、イルオを夜中に森に連れ出した。森の中で、ティシポネルは死者の手に足をつかまれ、『三女神(エリネイス)』達は、森から逃げ出してしまうのだった。

 狭い会議室。そこに、6人の男女が座っていた。


「お前達、わざわざご足労ありがとう。」


 そう言って、会議室に入ってきたのは、鎧をしっかりと身に着けた男、ジーギガスだった。

 彼の言葉に、机に突っ伏したままの、水色髪の女性。ガラネラネが、文句を言う。


「本当だよ…。ここまで来るのも…面倒なんだよ…。」


 彼女の言葉に、ジーギガスは自分の席につきながら言う。


「何を言ってるんだ。お前が会議に来ないから、わざわざ、お前の研究施設に、部屋を増設して、会議室を作ったんだぞ。」


「だってぇ…。ここに来るまでに6歩も歩くんだよ…。遠すぎるよ…。」


 ガラネラネのその言葉に、今度はオニギジアが、立ち上がりながら文句を言う。


「てめぇ。そりゃ、俺が席に着いた瞬間、『対象と位置を入れ替える魔法』を使ってからの歩数じゃねぇか!毎回毎回、入れ替えやがって。しかも、それを当たり前だと思ってやがんな!?」


「いいじゃない…。アンタが一番早く会議室に来るんだから…。あと、騒がしいから、目覚ましにもなるし…。」


 彼に銃を向けられているにもかかわらず、ガラネラネは机に突っ伏したまま答える。

 その様子を見て、オニギジアに無数の青筋が浮かぶ。


「てめぇ。いい加減にしろよ!頭ぶち抜くぞ!」


 その言葉に反応して、ガラネラネから突如、強者のオーラを出す。


「じゃあ…。やれよ…。」


 そのオーラは、外にいる研究者を怯えさせるほどのものだった。

 しかし、会議室にいる6人は普段通りだった。


「いい加減やめろ。会議が始まらん。ガラネラネに文句を言った私が悪かった。」


 口では謝りつつも、彼らを威圧するようなオーラを出すジーギガス。

 それを見て、オニギジアは銃をしまって、席に座る。

 それを確認すると、ジーギガスが改めて言った。


「それじゃあ、会議を始めるとしよう。今回は主に、前回行われた祭りについての報告が貰いたい。」


 彼の言葉に、ジルドが席を立ち、報告する。


「はい。祭りで市民及び、護衛対象(アネモネさん)の怪我人、死人は確認したところ0名。しかし、1人、死者が…。」


 彼が言葉を濁していることを察して、ジーギガスは彼に、「なんだ?どうした?」と質問する。


「えっと。ライブの午前の部終了時に、アネモネさんを殺そうとしていた男性がいたのですが。その男性が、バグジアスさんの手によって、その命を失ってしまいました。」


 ジルドの悲しそうなひと言に、バグジアスが、席を立つ。


「ちょっと!! なんじゃ、その言い方!まるで妾が、悪いことしたみたいじゃないか!!

 妾は、オニギジア殿が『その男が死刑囚』じゃと言うから、契約に従って食らっただけじゃぞ!!」


 バグジアスの言葉が終るか終わらないかというところで、ジルドは彼女と同じぐらいの声量で返す。


「ああ、そうでしたね!バグジアスさんは、そこら辺の良し悪しの分からない方でしたね!常時、食欲ですから!」


 彼の言葉に、バグジアスは、自分の指同士を、ちょんちょんとくっつけながら、「そんな、妾が世間知らずみたいな…。これでも、頑張って覚えていってるつもりなんじゃが…。」と口をとがらせる。


「問題は、オニギジアさん。貴方の方ですよ!貴方はまだ、良し悪しの分かる方でしょう!あの方は死刑になる罪を犯しましたか?」


 ジルドの言葉に、オニギジアが答える。


「ああ。あいつの罪は、『統一機関』への暴力で、10年の懲役。そのうえで、『八元帥』への暴力だから、追加で50年。つまり、60年の懲役。

 そして、俺の怒りを買った罪。これは必ず死刑だろ。」


 彼の言葉に、バグジアスが「ほら!言った!今、彼は死刑だって言った!」とジルドに抗議した。

 それに対して、ジルドが、「もとより、オニギジアさんの怒りを買ったら死刑という法律は作っておりません!!」と返し、会議室は再び騒がしくなった。


「落ち着けお前ら!ジルド、報告感謝する。バグジアス、確かにお前には死刑の決まった犯罪者の処理を頼んである。が、契約変更だ。私か、ジルドが言った『死刑』の決まった者のみ、殺害を許可する。それ以外は生け捕りにしろ!!」


 ジーギガスの言葉で、会議室は静かになる。

 しかし、契約変更の内容を聞いて、バグジアスが驚く。


「な!生け捕り!? 妾が、生け捕り!? で、出来るかなぁ。人間もろいからなぁ。」


「もし、これを破った場合は、減給する。」


 ジーギガスのその言葉を聞いたバグジアスは、「りょ、了解なのじゃ!」とすぐに敬礼をした。


「そして、オニギジア。お前は、勝手に、罪の計算をするな。絶対死刑が入るじゃないか!お前、減給な。あと、罰として、一か月間トイレ掃除しろ。」


 ジーギガスにそう言われて、立ち上がり、怒りをあらわにするオニギジア。


「はぁ!? ふざけんなよ!! なんで、俺がトイレ掃除なんかしなきゃならねぇんだよ!!」


 彼の言葉に、ジーギガスは「では、なんだ?私を倒して罰を消すか?」と、兜の中から、にらみを利かせる。


「ちっ!わーったよ!てめぇと()り合うぐらいなら、素直に従った方が楽だ!」


 オニギジアが、諦めて、席に座った時、ガラネラネが机から顔を上げ、にやりとする。


「ついでに、一か月間、アタシの移動用の車ね!」


「はぁ!? ざけんな!引きこもり野郎!なんで、俺がてめぇなんかの車にならなきゃなんねぇ!!」


 オニギジアが怒るのを見て、ジーギガスが静かに言う。


「そこまで嫌がるなら、相当な罰になりそうだ。それも追加しよう。」


 彼の言葉に、オニギジアは「なっ!?」と驚きの声を上げ、ガラネラネは「イーッヒッヒッヒ!!」と、笑い声をあげた。


「じゃ、よろしくね!オニギジア元帥君。イヒ。」


 ガラネラネのにやり顔を見て、オニギジアは歯を食いしばりつつ、席に座る。


「それで、祭りの報告は以上か?他に気になる点は?」


 ジーギガスの確認に、バグジアスが「そういえば。」と続ける。


「なんじゃか、『腸の発掘家』がおったそうじゃの。妾はそれらしい人物を見ておらぬが、そやつは見つかったのか?」


 バグジアスの言葉に、オニギジア達が驚く。


「はぁ!! 蟲野郎!! その情報どこから仕入れたんだ!?」


「なんじゃ、オニギジア殿、汝も見ておったじゃろ?」


 バグジアスのその答えに、オニギジアは、「見ていた?何をだ!?」と返す。

 それを聞いて、バグジアスはこう返す。


「勇者の卵君。なんじゃっけ?コウ=シュージン殿?が、アヒル女…。ココル=ロココ殿?に言っておったぞ。なんかキョロキョロしとって、目立ってたと思ったら、彼女になんか話してると思って、口の動きを見たら、『腸の発掘家を見つけた。』って、言っておったぞ!オニギジア殿、妾と同じ方向を見てたのに、彼の口元を見てたわけじゃないのか?」


 バグジアスの言葉に、オニギジアは再び怒りを覚え、静かに言う。


「あのなぁ。誰もがお前みたいなバケモンじゃねぇんだよ。普通、声も聞こえねぇところから、口元で何言ってるか判断できるやつ、いねぇんだよ。」


「うーむ。そういうもんなのか。」


 オニギジアのその言葉を聞いて、バグジアスが、腕を組みながら、納得する。


「ふむ。『腸の発掘家』の姿や、被害者、それらしい死体を見たという情報は、入ってないな。」


 ジーギガスがそういうと、ジルドが彼の言いたいことをくみ取り、代弁する。


「『腸の発掘家』は己が殺した人達を、見つかりやすいところに放置する傾向にありますからね。遺体が無いということは、彼女は今回の祭りでは1人も殺してないってことになりますが、猟奇的な彼女のイメージとはかけ離れてますね。」


「うーむ。じゃあ、勇者の卵君の勘違いじゃったのかなぁ。

 すまんの。無駄に騒がせた。」


 そう謝るバグジアスに、ジーギガスが言葉を返す。


「いや。そういうことを報告してくれて助かる。出来れば、次回はそういうことを見たり、聞いたりしたら、すぐに私か他の八元帥に知らせてくれ。

 そうだなぁ。知らせてくれたら、ボーナスをやる。」


 『ボーナス』という言葉を聞いたバグジアスは、目を輝かせて元気に答える。


「うん!妾、頑張る!!」


 そんな彼女を見て、オニギジアは「こいつ。単純だな。」と漏らした。


 ──────────


「さて、今度こそ、報告はないか?」


 ジーギガスが、改めて確認をする。新しい報告はなかった。


「では、最後に、なにか話すことはあるか?」


「あー。俺からいいか?」


 ジーギガスの質問に、ギャラクが、手を上げる。

 皆が、ギャラクに目線を送る。


「正直、個人的なことだし、『怠惰の魔女』にでも、聞けば解決することかもしれんが、『殺人人形』の牢屋に行ったのだが、どうやら俺が、やつを怒らせちまったみたいなんだが。

 その時、『何か嫌な物』を感じたんだ。正直、科学じゃ証明できそうにねぇ。だから、俺の専門じゃねぇ他の分野じゃねぇかって思ったんだ。

 『怠惰の魔女』。お前、奴に魔力を感じたりしたか?」


 ギャラクに呼ばれた、ガラネラネは、ダルそうな顔で彼の質問に答える。


「魔力があるか、ないかで言ったら、あるよ…。魔力は、誰の体にも流れている…。

 アンタが言いたいのは、その『何か嫌な物』が、魔法の類いじゃないかって事でしょ?

 それはないよ…。牢屋に人が入れば、その魔力を調べられるように仕掛けをしている。でも、彼女の魔力は魔法使いの量じゃないの…。

 魔法を使えば魔力は増えるからね。きっと、あの子は魔法なんて全く使ったことないわ…。」


 彼女の言葉を聞いて、ギャラクは腕を組み首をかしげる。


「科学でも分からない。魔法学でも分からない。なら、奴から感じた『何か嫌な物』は何なんだ?」


「うーむ。何か攻撃をされたわけではないのか?攻撃されたのなら、その形や音、におい等から、判断できるかもしれんのぉ。」


 バグジアスの言葉を聞いて、ギャラクは首を横に振る


「いや、攻撃などはなかった。非科学的で嫌だが、何やらオーラのようなものを感じた気分だった。」


 彼の言葉を聞いて、「そうか。」と悩むバグジアスに、ギャラクは質問を返した。


「なぜ、お前は俺が、攻撃を受けたと思ったんだ?」


 質問をされた、バグジアスはキョトンとして返した。


「汝の手、痛いのかむず痒いのか、度々動かしてたではないか。それに合わせて、汝の方から漂う、微かな血の匂いが濃くなっていった。皆、気付いていたのではないか?」


 バグジアスの言葉に、しーんと静まり返る会議室。

 それを見て、バグジアスは「あれぇ…。これも妾だけだったかぁ…。」っと、『やっちまった』という顔でつぶやく。


「ああ。そうだな。私達人間には、無理だな。身内の異常に気付いたのであれば、それを即刻、報告してもらいたい。」


 ジーギガスが、そう言うと、バグジアスが「って、ことは、もっと早く言っていれば、これも『ぼーなす』の…。」と縮こまって聞く。


「ああ。対象になるな。」


 ジーギガスの回答に、バグジアスは、「ああ!やってしまったのじゃぁぁ!!」と頭を抱えて叫ぶ。

 そんな彼女を無視して、ギャラクは己の手甲を外す。


「まぁ、こっちも相談したかったことだからな。見ての通り、手を針で刺してしまってな。浅い怪我だ。」


 そう言って、左手を見せるその手には至る所に、絆創膏が貼ってあった。


「すでに、血は止まってると思うが。まさか、手甲に隠れてる絆創膏についた血の臭いを感じ取るとは。改めて、『貪食の怪物』の五感の鋭さには驚いた。」


「その怪我。いったい、何があったんだ?」


 ジーギガスの質問に、ギャラクは自分の左腕の鎧についている、ポケットからボロボロのメリーを取り出す。


「うむ。これは、『殺人人形』が持っていた人形なのだが、勝手に動く仕組みを調べようと、解体をしたのだが。結果、中身は普通の綿で、解体した途端、ただの人形になってしまったんだ。

 それで、研究も終わったし、持ち主に返そうと思ってな。一応、元通りにして返そうと思ったのだが、俺は裁縫が出来なくてな、『三女神(エリネイス)』達もそこら辺は駄目だからな。

 それで、出来る限り直したのだが、気に入らなかったみたいでな。『殺人人形』の怒りを買ってしまったということだ。

 ちょうど、彼女の点滴をしていた看護師には、『ふざけるのも大概にしなさいよ!』と言われてしまった。

 悪いことをしてしまったと思ってな。もっとしっかり修復したいのだが、裁縫ができる者はいるか?」


 ギャラクの言葉に、ジルドが話す。


「私は苦手ですね。ジーギガスさんは、そんな暇ないでしょうし、ガラネラネさんは、そんなことしなさそうですし、オニギジアさんは、普通に出来なさそうですし。」


 オニギジアが、ジルドの言葉に、「おい!!」ってツッコミを入れる。


「アタイも苦手だなぁ。強くなるのに関係ないことは、やってこなかったし。」


 クレッシェも首を横に振る。

 そんな中、バグジアスが、手を上げる。


「はいはいはい!! 妾出来る!!」


「本当か?」


 ギャラクの質問に、バグジアスは胸を張ってこたえる。


「汝らと、最初に合った時に来ていた服。あれ、妾が縫ったんじゃぞ。」


「ふむ。なら、任せられそうだ。」


 ギャラクは、バグジアスの元に行き、メリーを彼女に渡す。


「感謝する。今度何か奢ろう。」


 ギャラクの言葉に、バグジアスは「良いのか!?」と目を輝かせる。

 それを見た、ギャラクは、「1万までな。」と付け加える。


「ああ…。はい…。奢っていただき感謝します…。じゃ…。」


 あからさまに落ち込みながら、バグジアスはそう返した。

 次回予告

 ヒルから解放された、シャーロッテとズバクは、行きつけの酒場へと足を運ぶ。そこで、新たなお宝の話を聞くのだった。


 次回 27話 神が作った巨大人形

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