大人数のパパクラブ 8
陽介の指示で次のセットに向けパスの練習をしていたSIEGだが、パパクラブの部長さんの指導(説教)があまりにも長く、未だ開始されない次のセットにいら立ちさえ見受けるようになっていた。
パパクラブは、今まで公式戦や練習試合で負けたことのないSIEGに負けたのが、よほど悔しかったか或いはプライドが許さなかったか、皆神妙に部長さんの指導(説教)を聞いていた。
SIEGは、しびれを切らせたイッちゃんが指導中(説教中)のパパクラブの部長さんの所に行き、練習試合の再開をお願いした。
パパクラブの部長さんは、顔を引きつらせながら「ゴメンナサイ!、話しが長くなっちゃって。もう少しで話が終わりますから…。」と言って直ぐに練習試合の再開を約束した。
イッちゃんはSIEGのメンバーにエンドラインに並んで試合再開を待つように指示をした。
SIEGはパスをやめ、エンドラインに並び試合再開を今か今かと待っていたが、パパクラブの話し(説教)は終わる様子が無い。
時計を見ると、時刻は11:20を回っていた。
体育館の使用時間は12:00まで。片付けや着替えを考えると11:45には練習試合を終えなければならない。
そして、そうこうしている内に、ユッケっちゃんの子供が「ママ~、おしっこ!」と叫び、エンドラインに並んでいるユッケっちゃんが慌ててトイレに連れて行く始末。
陽介は、ギリギリ練習試合を体育館使用時間内に終わらすことが出来ると思っていたのに、難しくなったと判断し、パパクラブの部長さんの所に行き「長々とご指導(説教)ご苦労様です。このままだと練習試合を続ける時間が無いので、11:45分まで合同練習ということにしては如何でしょうか?」と提案し、了解を得た。
陽介は、イッちゃんに直ぐその旨を伝え、SIEGは再びパスの練習を再開した。
10分位SIEGが練習を重ねた頃であろうか、パパクラブの部長さんが陽介の所に来て「こちらから練習試合をお願いしたのに、不甲斐ない内容になってしまいゴメンナサイねぇ~。ところで陽介監督は練習試合なのに、どうしてセット終了後にメンバーに短い時間しか指導しないんですか?、そのセットで気付いた事とか技術的なこととかたくさん指導することがあると思うけど…。」と言った。
陽介は、「SIEGは、私が気付いたことや技術的な指導を伝えるレベルには無いもので…。それよりは多くの時間をゲームと言う練習で本人達が何を感じるかに費やしてあげたいんです。ましてやその指導に長い時間を費やしてしまうと、ただでさえ下手なのにその指摘されたことなどでバレーボールをプレーすることが嫌になってしまうと思うからです。」と、SIEGと同じ8部そしてSIEGより一つ上部の7部に所属している、同類であろうパパクラブA・Bに対し、多少嫌味を交えて答えた。
パパクラブの部長さんは、顔色を変えずに陽介の話を聞いていたが、後にSIEGと仲の良いパパクラブのメンバーからSIEGとの練習試合以降、パパクラブの部長さんの話が短くなったと聞いた。
ともあれ、陽介がSIEGの監督に就任して初めての練習試合は終了した。
陽介もSIEGのメンバーも、この練習試合で何かを得たと思ったに違いない。
ただ変わらぬものもある。
イッちゃんとユッケちゃんという実姉妹の関係。
陽介は、この関係がSIEGという家庭婦人チームに、悪い影響を与えるのではないかと嫌な予感がしていた。
そして、陽介と練習を続けたSIEGは、間もなく5月の公式戦を迎えることになる。




