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ここで筆者の言い訳 3

 13:30頃寝ていた陽介は、「陽介さ~ん」という暫く聞いたことの無いような可愛い声で目が覚めた。


 その声の持ち主である先生は、「午後のリハビリを担当します○○です。宜しくお願い致します。痛みは如何ですか?」と、マスク越しではあるが笑顔が可愛い若い女性の先生だった。


 陽介は、「こんなに若い女性が、比較的老人といってもいい人達が多く入院している病院で仕事をしてるんだ!?」と思いながら、「かなり痛いです!」と言った。


 ○○先生は、「手術翌日だから仕方ないですよ。でもリハビリ室で3ポ歩いたんですって?陽介さんは若いから凄いですね。私もこの病院に来てこの手術をした方が、手術翌日に3ポ歩いたのは初めて聞きましたよ!」と言い、「午後は午前で使った筋肉を少しほぐすようなマッサージをした後、これから通常に歩けるようになるための筋肉を付けていくようなことをして行きますね。勿論今日は初日ですから無理のない程度にやりますから…。」と話してくれた。


 陽介は、○○先生のリハビリを受けながらお互いを知るために世間話もした。


 当然陽介が世間話として話した内容は、○○先生にとっては問診の域だったが、陽介には術後の痛みをまぎらわす楽しい会話だった。


 もちろん陽介はバレーボールの話もした。この時は先述したように高校生を指導している時で、その高校生達が陽介がバレーボールをしていた昭和の時代と違って、何かにつけ不甲斐ないことを話した。例えば腕立て伏せや腹筋やスクワットなどの基礎トレーニングとしてやらせると、直ぐに音を上げてしまい「何休んでるんだ?、もうこれで終わりか?、情けないなぁ~。それでも高校生か?」と陽介が叱咤激励をすると、「はい。高校生です。」と生徒に言われ、陽介が期待していた応えとは違う反応をされてしまった話しなどをした。


 ○○先生は、陽介の話を大笑いしながら聞いてくれていた。


 しかしこの会話が、後のリハビリの内容に大きく影響した。


 術後一週間くらい経ったころであろうか、午前のリハビリで手すりをつかまりながらではあるが、歩行練習器具を5往復くらい出来るようになっていた。午前の先生は、「陽介さん、素晴らしく回復が早いです。このままの調子ならこの病院の退院にかかる期間の最短記録を更新するかもしれませんよ!」と言ってくれている状況だった。


 陽介も退院最短期間更新を目指し頑張ろうと思っていた。


 午後からは若い女性の○○先生。マスク越しではあるものの可愛いと思えるのは本当に癒される。陽介は午後のリハビリが楽しみになっていた。そしていつも優しく午前中に使った筋肉やリハビリの影響で普段使わない筋肉をほぐしてくれていた。


 ただし、前回までだった。


 午後○○先生がいつものようにやって来て、「陽介さ~ん、今日はマッサージを少しした後、筋力強化のリハビリをしますね。」と笑顔で言った。


 陽介は、「ハイ!、わかりました!」と言い、○○先生とのリハビリの時間を楽しもうと思った。


 だがしかし、マッサージの後の○○先生の筋力強化リハビリトレーニングは、まだかなりの痛みが残る陽介にとっては極めて厳しいものだった。


 先ずは歩行器を使用して、陽介の病室の2階病院内を端から端まで3往復。午前中のリハビリでは歩行練習器具の手すりを利用してやっと5往復くらい出来るようになったばかりだったのにもかかわらずだ。


 確かに歩行器を使用すれば、痛いとは言いながらもゆっくりと歩くことは出来る。しかし決して普通には歩けない。時には痛みに耐えかね立ち止まり休憩をとらなければ歩き続けることは出来ない状況だ。


 1往復終われば給水をして、直ぐに2往復目を始めることになる。距離にすれば片道30mくらいの往復だったが、3月初旬にも関わらず真夏の外を2㎞位歩いているように陽介には思えた。しかも大汗をかきながら…。


 そして歩行器によるリハビリが終わると、ベットに戻った。


 陽介は、「今日はハードなリハビリをしたので、これで終わりか?」と思った。


 しかし、○○先生は「はい。これから普通に歩くために必要となる腹筋のトレーニングをします。これから痛みを克服しながら普通に歩くようになるためには、今まで以上に腹筋を強化しなければなりません。頑張ってやりましょう!」と言って、陽介を仰向けに寝かせ両ひざを立させ両手をおへその上に置かせた。そして「ゆっくりと息を吐きながら体を起こし、私が10秒数えたら今度はゆっくりと体を戻しましょう!」と優しく言った。


 だがこの腹筋トレーニング、そもそも手術から一週間間しかたっていない手術箇所の物理的な痛みに加え、股関節に人工関節という異物が入っている痛みとで、腹筋トレーニング動作さえままならない。


 陽介は顔をしかめながら、「まだ手術した箇所が痛くて起き上がるのは無理です!」と伝えた。


 しかし○○先生は、「痛くても頑張ってやらないと、手術箇所が固まってしまい復帰が遅くなってしまいますよ!、陽介さんは高校生に叱咤激励するんですから自分でも頑張らないと高校生に笑われますよ!」と言い、「それではやりましょう!」と言った。


 陽介は、「この先生、可愛い顔して言うこととやることが、えげつないな!、余計な世間話なんかしなきゃよかった…。」と思いながら、地獄のような腹筋トレーニングを続けた。

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