いよいよ始まった陽介監督の練習 2
陽介はSIEGの監督を引き受ける前に行った、オーバーパスやアンダーパスの体重移動について、あらためて体重の移動は上ではなく、前であることを力説した。
「体重を上方向に移動すると、ボールは上に上がってしまいます。それを無理矢理前方にいる目標の人にパスをしようとすると、どうしても腕や手首を必要以上に振ってボールを前に出さなくてはならなくなります。そしてそのようなプレーをすると、ただでさえ正確なパスが出来ないのに無駄な動きでさらにパスを出すことが難しくなってしまいます。
前にもお話ししましたが、プロや長年の練習で培った技術を持っている人は腕や手首を振ったプレーをしても、きちんとパスを出すことができます。しかしこれは基礎がしっかりと身についているが故のことであることを理解して下さい。
したがって、皆さんがそのような方達のまねをしても決して上手になることは出来ません。むしろ下手に拍車をかけることになるでしょう。ですから、自分達と全日本の選手を重ね合わすのはやめましょう。
皆さんは、これからこの地域の家庭婦人バレーボール大会で活躍することを目指そうとしている、この地域で一番弱いチームの一員なのだということを、理解して下さい。」と言い、「バレーボールの体重の移動は、前です!、そして以前私が指示をしたような基本の姿勢・動作からパスを練習して下さい。」と、自らがフサエちゃんを相手にオーバーパス・アンダーパスをやって見せた。
陽介は、「前回私がパスの練習を皆さんにやってもらったのは、連続3分間でした。しかし私が見る限り3分間連続は難しい様子なので、1分間連続でやってもうらおうと思います。先ずは2人一組になって、一方の人だけがオーバーパスを練習します。一方の相手は下からボールをおでこに向かって山なりにボールを投げて下さい。1分経ったら交代です。ただし楽をせず必ず基本の姿勢・動作からパスの練習をして下さい。最初はパスをする相手との距離やお互いの技術力の違いなどで上手く行かないかもしれません。しかしお互いの距離感を覚えるのも練習の内ですので、繰り返しやって下さい。」と、メンバーを2人一組にした。
そして、「それでは、始めます!」と言って、自前のストップウォッチを押した。
SIEGのメンバーは、2人一組みの相手がおでこに向かって投げたボールを、陽介が指示した基本の姿勢・動作でオーバーパスを出そうと頑張った。
しかし以前と同じく、基本姿勢そのものがツライ体勢だいうこともあり、その体勢に気を取られるあまりおでこの前でオーバーパスをすることが中々出来なかった。
中には、オーバーパスが指先だけになってしまい、試合では絶対にドリブルの反則になるような者や、やっている本人はそのつもりが無いものの完全なホールディング状態に見える者もいた。
1分が経ち、陽介は交代を指示した。
そして2人共1分ずつオーバーパスを終えると、陽介は以前同様ハーハッーと荒く息するメンバーに1分間の休憩をその場で立ったまま取るように指示をした。
そして、「皆さんは、私が指導した基本の姿勢・動作でオーバーパスをしようと頑張りました。しかしながらそのオーバーパスは、ドリブル或いはホールディングの反則をとられても仕方ない人ばかりです。皆さんが所属する8部では反則の笛は吹かれないかも知れませんが、一般的には反則の域であることは間違えありません。なので、次は相手がおでこに向かって投げたボールをおでこの前でオーバーパスの手の形で、あえて一旦ホールドしましょう!、そして基本の姿勢・動作で相手に返すようにして下さい。」と言い、「それでは休憩の1分が経ちましたので、今言ったようにオーバーパス始めて下さ~い!」と指示をした。
フサエちゃんは、「まだ10時なんだけど、これから約2時間この基礎練習を続けるのか?」という表情で陽介の顔を見ていた。
陽介は、フサエちゃんの視線を感じてはいたが、何食わぬ顔で練習を続けた。
そして、お互いが5回ずつ交代でオーバーパスを終えた所で、3分の休憩をとった。
休憩が終わり、「では、引き続きアンダーパスの練習を行います!」と言うと、ツライ基本の練習で引きつった表情のメンバーが「ハイ!」とか細い声で返事をした。
陽介は、「ツライでしょ!?、基礎練習は誰もが嫌がる練習です。しかし何回でも言いますがこの基礎を身に付けないと、バレーボールを競技として楽しむことが出来なんです。私を信じてついてきて下さいネ!、理不尽な無理はさせませんから…」と言い、オーバーパスより基本の姿勢・動作がキツイ、アンダーパスの練習を指示した。




