A氏最後の監督、親睦大会(おおらか杯) 1
イッちゃんから今度の日曜日に行われる親睦大会に、A監督と一緒にベンチに入って欲しいと言われた陽介だが、「A氏が監督として、最後の采配を振る試合なので僕はベンチには入りません。その代わりギャラリーから一生懸命応援しますネ!」と、ベンチ入りを断った。
陽介がベンチに入れば、A氏が気を遣ってしまうと思ったからだ。
イッちゃんは、渋々了解した。
そして親睦大会当日、陽介はその地域の大きな市民体育館(この体育館では、様々なインドアスポーツを行うことが出来る。しかも国際規格で観客席も立派だった)の観客席に陣取ることにした。
その親睦大会の名称は、『おおらか杯』。
公式戦とは違い、5部から下の部に所属するチームが各部で抽選をし対戦相手を決める。
そして、各チーム最低2試合をすることが出来るようになっているが、2セットマッチで行われた。取得セットが同じ場合は、2セットの合計取得点数が多い方が勝ち。2セットの合計取得点数が同点の場合はジャンケンで勝ち負けを決めることになっていた。
陽介は、フサエちゃんのチームの応援はもとより、今後監督して戦うであろう8部に所属する8チームと、昇格した場合の7部に所属するチームの試合を重点的に見ておこうとと思った。
そして、「そういえば、フサエちゃんのチームの名前は何て言うの?、良く考えてみれば今日この時まで聞いてなかったことに、今気が付いたんだけど…。」とフサエちゃんに聞いた。
フサエちゃんは、「あっ、本当だ!、監督から聞かれなかったから、私も言うのを忘れてた!」と言い、陽介に渡した対戦表を指さし、Dコート2試合目の『SIEG』( ズィーク )ドイツ語で『勝利』と言う意味です!」と教えてくれた。
陽介は、「良いチーム名だネ!、『勝利』を目指して頑張りましょう!」と言った。
SIEGの試合は2試合目なので、8部の1試合目と、昇格した場合のことを夢見て7部の1試合目をよくみて見ようと陽介は思った。
試合が始まった。
8部のチームの対戦は、SIEG同様サーブを如何にレシーブ出来るか?がメインの試合だった。我々が俗に言う『サーブの殴り合い』の状態が続き、そのセットの勝敗が決まるような内容だった。要するにバレーボール以前の試合内容が、8部に所属しているチームだと言っても過言ではない。決して馬鹿にしている訳ではない。文字にして説明をすると、どうしてもそのような表現になってしまう。ご容赦願いたい。
もっともSIEGはサーブレシーブ以前に、サーブが入るかが問題だが…。
そして7部のチームの対戦は、8部の試合内容とほぼ変わらない。
陽介は、「ヒョットすると、ワンチャンスで7部に上がれるかも知れない!」と思った。
8部の1試合目が終わり、SIEGの試合の番が来た。
陽介は観客席最前列から、身を乗り出し皆に声をかけた。
すると運営の役員が飛んで来て、「子供が真似をするので、身を乗り出しての応援はやめて下さい!」と注意を受けてしまった。
陽介は、「スミマセン!」と運営の役員に大きな声で詫びたが、その声が大きすぎたのかその運営の役員が恐縮しながら、「そんなに謝らなくても、別に良いんですよ!」と笑いながら言った。
SIEGのメンバーはその様子を見て、大笑い。
和やかな雰囲気でウオーミングアップを続けた。
この地区の連盟が行う試合(親睦大会等を含む)は、当該チームの2試合目から公式練習(3分)が行われないローカルルールが適用されていた。
要するに、SIEGが今日行う試合で公式練習を行えるのは、この1試合目だけとなる。
SIEGのメンバーは、9人がコートに入り、#5セッターフサエちゃん(主将)がトスらしきものを上げ、前衛レフト#4イッちゃん・中衛レフト#3アブちゃん・ハーフセンター#9じょんちゃん・中衛ライト#1ユッケっちゃん・前衛ライトに#10セイちゃんが、アタックらしきものを打っていた。
そして一通りアタックらしき練習を終えると、残りの30秒位で中々ネットを越えないサーブ練習をした。
主審の吹笛があり、両チームの公式練習が終わった。
サーブ権は対戦相手の、パパクラブ。
両チームがエンドラインに並び、主審の吹笛でネット際まで走って行き、お互いに握手した。
SIEGは、公式練習の時にアタック練習らしきものを行っていたメンバーの他に、バックレフトに#13オキヨちゃん・バックセンターに#15マリちゃん・バックライトに#2アシミちゃん(この試合の後、直ぐにSIEGを辞めた)がポジションに着いた。
そしてベンチには、A監督の他、#6あずみちゃんが入った。選手は10名である。
副審と記録係がメンバーチェックを終え、主審がサーブ許可の吹笛をした。
パパクラブのサーブが、SIEGコートに向かった。




