えっ、来週試合なの?
2チームの監督になった陽介だが、前に言った通りフサエちゃんのチームはかなりの弱小である。
サーブも相手コートに届かない事が多々あるチームだった。
サーブが相手コートに届かなければ、試合にならない。
また、オーバーパス・アンダーパスに至っては、同伴している未就園児や小学校低学年の子供達の方が上手いのではないかと思える状態だった。
陽介は、基礎練習を繰り返した。
このチームが登録しているのは、この地域の家庭婦人連盟。
陽介が監督になった時には、全部で64チームが登録していた。1部~8部まで、各部に8チーム所属しトーナメントを行う。(以前は9部まであったらしい。)
対戦相手は各部ごとに抽選によって決めているようだった。
原則、毎年5月と9月に公式大会が行われる。またその他に、やはり毎年5部から下の部に所属しているチームに親睦大会が2回、また企業の冠が付いている大会に参加希望の全ての部のチームから抽選で31チームが出場出来る大会が1回行われていた。(なぜ抽選で31チームが参加かというと、大会が1日開催であるため4面で使用できる大きな体育館で試合をしても、32チームによるトーナメントが限界であるという理由からだった。ちなみに残りの1チームは大会主催者の企業チームが出場。また親睦大会は5部から下の部に所属しているチームが参加なので32チームである。)
公式大会は参加チームが多いので、1・3・5・7部と2・4・6・8部のように2日に分けて行われていた。(公式大会開催日は原則日曜日で2日に分けて行われる。運営に携わっていた方達は大変だったと思う。)
そして、決勝に残った2チーム(各部のトーナメントで連続で2回勝つと決勝戦に残れる)が、一つ上の部に自動的に昇格出来る。また各部のトーナメントで1回戦を負けたチームの内、2回連続で負けた2チームが、自動的に一つ下の部に降格する。
こういった昇格・降格があるトーナメントを開催している地域は多いが、試合中精神的には結構厳しい面もある。
なぜならば、たった一つのミスが、チームを降格させてしまう原因の一つになりかねないからだ。選手としては辛い経験をする者も出てくる。
しかし一方では、決勝戦まで勝ち進めば翌期は一つ上の部に上がれるというモチベーションにもなる。
さらには、各部の決勝戦を戦うチームのみがその日3試合をすることが出来る。
自チームのユニフォームを着て公式戦を3試合出来ることは、どの部に所属していても誇りであるに違いない。
それが証拠に、各部で優勝したチームは大声をあげて喜びを表す。
どの部にいても、3試合勝ち抜き優勝することは格別であるに違いない。
そして、1部に所属しているチームの中で優勝したチームが、この地域の家庭婦人連盟に所属している全チームの1位となる。
フサエちゃんのチームは、そういった地域の家庭婦人連盟に登録をしていた。
そしてフサエちゃんのチームが所属していたのは8部。
要するに、64チーム中57番目~64番目を争う部だ。
フサエちゃんの話しによると、9部があったころ、一度だけ勝ったことがあると言うが、いずれにせよ「勝ったことがない」と言いきって良いとのことだった。
そうであろう、現状64チーム中64番目のチームなのだから…。
陽介は、監督を引き受けた以上このチームを何とか勝たせてやりたいと思っていた。
構成員は若いママさん。
同伴している子供が小さく大変なのにもかかわらず、子供に目を配りながら陽介の指導を素直に必死に練習する。
辛くて面白くない基礎練習を必死に練習をする。
きっと、勝ちたいんだろう。
陽介はこのチームに、試合に勝つことによってのみ味わえる、「喜び・楽しみ・感動」を分からせてあげたいと、心から思っていた。
陽介が、監督になって3回目の練習日であったろうか、今まで監督をしていた方が体育館に来た。
仮にA氏としておくが、軽く挨拶を交わしたあと、突然「私とパスをしてくれませんか?」と陽介に言って来た。
陽介は自分が試されているようで嫌だったが、その申し出に応じた。
数十分パスや対人レシーブに付き合っただろうか、A氏が「私は人に指導するタイプではなく、自分がプレーヤーとして楽しみたいタイプなんです。だからこのチームの皆は、監督としての私をあまり評価していないと思います。でも私の最後の試合となる次の親睦大会は、一生懸命頑張りますネ!」と言った。
陽介は、近々行われる親睦大会でA氏が監督を正式に辞めるので、陽介をこのチームの監督として登録するのはその直後であるこをフサエちゃんから聞いて承知していたが、当時監督になったばかりで試合のスケジュールを全く把握せず練習に来ていた。
陽介は、フサエちゃんを呼んで「次の親睦大会って、いつ?、僕は何も聞いてないけど…。」と聞いた。
するとフサエちゃんは、「今日の練習後に監督には伝えようと思っていたんですげど、来週の日曜日です。」と言った。
陽介は、「しまった。事前にスケジュールを聞いておけば、A氏が監督するチームに何もこんなに辛い基礎練習をさせなくてもよかった!、正式に監督に登録されてからにすればよかった!、A氏にも失礼だし…。」と思った。
陽介は、「では、来週の試合はギャラリーで応援しますね。」と言ったが、その様子を見ていたイッちゃんが慌てて「監督!、ベンチに入って下さい!」と言って来た。




