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かけもち監督? 10

 「はい」と引きつった笑顔で返事をしたものの、きっと内心は辛かったろうと陽介は思っていた。


 しかしこのチームは、構成員が若いだけあって現在陽介が監督をしているチームより、比較的素直に練習に取り組んでくれる。


 陽介より年齢が上の構成員が2人しかいないことで、気を遣っているが故なのかもしれない。


 或いは本当に上手くなりたい・試合に勝ちたいと思っているのかもしれないと、陽介は思った。


 基本的なフォームからアンダーパスの練習を終えたメンバーは、足はブルブル膝はガクガクの状態だった。


 陽介は、皆なを集め「繰り返し言いますが、基礎練習を真剣にやると物凄く疲れます。しかしこの基礎が出来ないとバレーボールを楽しむことが出来ないのです。だから、くじけず・めげず是非頑張って下さい。試合に勝つための一番の近道は、基本的なプレーを正確に出来るようになることですから。」と言った。


 皆、素直に「はい」と返事をしていたが、陽介が監督になれば練習時間のほとんどが基礎練習になることを不安に思っていたに違いない。


 話が終わると陽介は、体育館の時計を確認した。


 練習終了時間まであと20分残っていた。


 陽介はヘロヘロになっているメンバーを見て、少し気分を変えようと残りの時間ミニゲームをすることにした。


 ただし、練習に10人位しか参加していないので、5人ずつ両サイドのコートに入り、さらに今日練習したオーバーパス・アンダーパスのみを使用し、必ず3コンタクト(自陣のネットに触れた場合は4コンタクト)で相手コートにボールを返すこと。そしてサーブはエンドラインからアンダーサーブで優しいボールを打つこと。またサーブを2本ミスした者は、その場で腕立て伏せを3回することをルールとした。


 そして時間もないので、直ぐに始めると指示をした。


 皆、辛い基礎練習の後なので、それはそれは大喜びだったが、陽介の指示したオーバーパスとアンダーパスだけで、しかも3~4回のコンタクトで相手コートに返すというルールは、基本的なプレーが出来ない者にはかなり厳しい条件だった。


 なぜならば、自陣のコートでパスを回している間にミスが連発し、相手コートにボールを返す以前に自軍の仲間による自爆点で相手に点数を与えてしまうからだ。


 5人ずつに分かれエンドラインに並んだメンバーが、陽介の吹笛でコートに入った。


 続けて陽介がサーブ許可の吹笛をし、ミニゲームが始まった。


 サーブ権を持っているチームのサーブが、無事相手コートに入った(ミスをすれば腕立て伏せのペナルティがある)。


 レシーブ側のコートのメンバーは、今日の練習を生かし何とかアンダーレシーブをした。


 しかし、2人一組対面でやっていた基礎練習とコートの中では違う。当然ながら5人コートにいる。


 誰にパスをして良いかも分からず、やみくもにただ腕に当てるだけのレシーブを、何とか次の者がこれまたやみくもにレシーブを続け、最後のコンタクトをやっとの思いで相手コートに返す。


 この繰り返しが何回か続いた。


 陽介は、一旦プレーを止め、「このままだと、ただ時間が経つだけになってしまうので、5点先取とします。そして負けた方のメンバーは罰ゲームとして、足上げ腹筋を30秒してもらいます。」と言い、ミニゲームを再開した。


 罰ゲームが付いたことで、メンバーはやや真剣にプレーを始めたが、真剣になればなるほどミスを連発し、自爆点が増した。


 片方のチームが5点を取り、ミニゲームは終了。


 負けチームが足上げ腹筋を30秒したが、これもかなりキツかったと見え、30秒経たないうちに足やお腹をツッてしまう者が出た。


 陽介は皆を集め、「ミニゲームも罰ゲームも、皆さんが思っている以上に大変だったでしょ?、もし私が皆さんの監督になって勝てるチームにするためには、こういった練習が暫くの期間続きます。もう一度皆さんで話し合って、私を皆の総意で監督にするかフサエちゃんから連絡を下さい。もちろん理不尽な練習を強要するつもりはありません。では、本日の練習は終わりにしましょう!」と言い、挨拶を交わした。


 ママさん達が、「ありがとうございました!」と大きな声で挨拶をした時、今まで別の小部屋でゲームにふけっていた子供達が一斉に部屋から飛び出してきて、陽介に「ありがとうございました!」と挨拶をしてくれた。


 一人の子供が、「おじさん、また練習に来てくれる?」と聞いて来たので、「うん、ママ達がおじさんと一緒にバレーボールをしたいって言えばね!」と笑顔で答えた。


 子供は、「それじゃぁ、またネ!」と言ってくれたが、はたしてママさん達は今日の練習をどう思ったか?、


 いずれにせよ、フサエちゃんからの連絡を待つことにした。

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