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ワールドRe:トライ・セブンオーブ  作者: 下級魔術師17号
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第20話 退治(3)

 

 「やはり、“核”を狙わないといけないか……」

 『なんだ。知っていたのか?』


 焚き火が赤々と燃える前で、ルディオスは、難しい顔で腕を組んでいた。

 あのあと、結局、再戦する気も無くなり、そのまま野営地で二日目の夜を迎えてしまった。


 少し離れた場所で寝そべるクロガネの横には、未だに目を覚まさないシオンが眠る。

 本人に自覚がない為に、ここまで体調を崩すとは思わなかった。それも、ルディオスを苛立たせている原因の1つだ。

 シオンが体調を崩してしまうのは仕方がない。

 “聖なる存在”は、魔物などの負の力に弱い。とくに力を覚醒していない“子供”は、殊の外、陰気に弱いという。故に、逆に上位の魔物などがその血肉を狙われやすい。

 見た目は20歳近いシオンだが、種族的にはまだ“子供”なのだろう。


 「よく、今まで…………」


 どこで生まれ、どこで育ったのか。

 “翼種”のように、隠れ里があるのか。だが、それでは説明も出来ない部分もある。

 本人に記憶が無いから、問いただすこともできない。


 『ふむ。そんなに心配しなくてもいい。“子供”というのは案外強い。目が覚めたら、ケロッとしておるわ』

 「……心配はしてない……」


 憮然としたルディオスが、クロガネを睨み付ける。だが、クロガネは、フンと鼻で笑う。


 『お前は若いな。もう少し素直になればいいのだ。“翼種”が主を求めるのは、本能だ。主以外に惹かれるものはない。

 お前の相方の方がまだ素直だぞ?』

 「………………悪かったな」

 『だが、まぁ……、あの娘はシオンが誤解してるのをいいことに、少々鬱陶しいが』


 ぐるる……と、唸るクロガネ。


 「カリナは、シオンを“主”と認めているのか?」

 『知らん!だが、何かを感じているのは、間違いない。あの娘、“緑翼”であろう?

 見た目の年ではないはずだ。そなたより年上ではないのか?』

 「ああ………、カリナは、オレより年上だな」


 ルディオスは、溜め息を吐いた。

 長年、一緒にいるが、カリナには読めない部分がある。それは、女性だからなのか、ルディオスには分からない。


 「オー!やっと、片付いたネ!お嬢さん、人使い荒いヨ!」 


 腕を回しながら、疲れた様子でユーグが現れる。

 ユーグは、ルディオスの向かいに腰を降ろすと、盛大に溜め息を吐く。


 「カリナは?」

 「水場に残ったから、多分、水浴びじゃないか?女の子は、大変だネ~」


 “女の子”という年齢ではない。

 ルディオスも、クロガネも、同時に思った。相変わらずの“見た目”詐欺である。


 「それより、シオンくんはどうだい?」

 『大丈夫だ。顔色は悪くない』

 「それは良かったヨ!そうそう、聖属性のアイテムに、シオンくんに合う外套があったから、後で渡すヨ。ちょっと高いから、あげれないけど』

 『ふむ。それは助かる』

 「あげれないというと、“商品”か?いいのか?」


 ルディオスの問いに、ユーグはニヤリと笑う。


 「大丈夫!………でも、できれば、シオンくんの“正体”を教えて欲しいカナ~?

 主従でもないのに、“聖獣”がべったりの“少年”。しかも、魔物の陰気に弱い!……シオンくんは、ひょっとして[神人(セラティア)]の末裔ダロ!?

 ふふふ、この私の目は、誤魔化されないネ!」


 キラン!と、ユーグの眼鏡が光る。


 『…………ふむ。まぁ、似たようなものだ』


 クロガネが答える。

 

 『だが、シオンに聞いても無駄だ。我と会う前の記憶が無いらしい』

 「………そうか。それは、大変だネ」


 ユーグは、真面目な顔で呟き、眠るシオンを見た。


 「本人は平気そうだが、実際のストレスはかなりあるだろうネ。記憶がないことで、精神的に不安定な部分も体調に影響しているカナ?」

 「ああ、そうだな………」

 「なら、早くこんな場所から抜け出さないとネ!」


 パチリと、ユーグはウインク1つ、おちゃらけた口調で言った。


 「さて、問題は、あの“スライム”ネ~。スライムのクセに中位って、なんなの?あれ?」

 「少なくとも、最近ではあまりいないタイプだ。しかも、この[カラチ平原]は、魔物や野獣が多く危険だと言われるが、レベルの高い中位種は滅多にいないはずだ」

 「質より量で脅威な場所なのネ!」

 『スライムなら、“核”を壊せばすぐに消滅するが、あれは闇色といい、奇妙なスライムだ』

 「オー!スライムは、普通、ちっちゃくて弱いネ!子供時代、よく投げて遊んだヨ!」


 通常のスライムは、薄青色のボールのような小さいモンスターで、よっぽどでない限り害はない。

 1匹や2匹程度なら子供でも倒せる弱さだ。

 問題なのは、大量発生したり、他の色をした別種のスライムだ。

 大量発生すると、互いに融合して巨大化して、脅威になる。他の種類のスライムだと、特殊な能力を有しており、人に害をなす場合がある。

 だが、いずれも体内にある“核”を壊せば、あっけなく倒せる。ただし、“核”には物理攻撃しか効かない。


 「真っ黒だと、“核”が分からないネ!」

 『ふむ。“核”が別の色なら分かるが、透けていないから見つけるのは困難だ』

 「あと、スライムの場合、“核”があちこち移動する。あのデカさでは、カリナの精霊術で全部は凍らせれない」

 「となると、難しいネ~。“核”を見つけ出すのが、一番なのに………」


 うーんと、三者三様に考え込み、唸る。


 「とにかく、攻撃して少しずつ削るしかないな」

 『小さくなれば、あの娘が凍らせるようになるが、時間が掛かるぞ?』

 「ここの守護結界って弄れないカナ?」

 「ダメだ。古い時代のものだから、下手に弄ると結界自体が消失する可能性がある」


 ユーグの提案に、ルディオスは首を横に振った。

 100年以上前に、周囲から自然に魔力を集めることで、半永久的な守護結界を維持する術が開発され、この[カラチ平原]を通る当時の商隊などが、魔術師に依頼し、少しずつ野営地を作り、結界を張ったのが、[カラチ平原]における野営地の歴史だ。

 今の時代、新しい魔術システムの台頭により古い時代の魔術は廃れつつあり、この守護結界を張り直せる魔術師はいないと聞く。

 元々、それほど強い結界ではないのだ。

 今回のような中位の魔物に効力を発揮し、侵入を防いでいるだけ、この野営地の結界は腕の良い魔術師が処置を施したのだろう。

 野営地により、結界の強弱があるのは、周知の事実だ。

 この野営地の結界が、それなりに強力だったのは、運が良かったに過ぎない。


 「………はぁ、じゃあ、明日も一戦するのネ……」


 ユーグが、がっくりと肩を落とす。


 「明日は、ちゃんと援護射撃してくれ」

 「分かったヨ!………クロちゃんは出ないのかい?」


 チラリと、ユーグはクロガネに視線を向ける。

 “聖獣”であるクロガネが参戦すれば、少しは楽になるのだ。それは、ルディオスも分かっている。


 『出てもよいが、シオンを1人にするのは心配だ。体調もだが、本人に自覚が無いからな。自身が役に立ってない足手纏いだと思ってるから、何をしでかすか分からん所がある』

 「うーん、シオンくん。そんなに突飛な行動をするようには見えないけどなぁ………」


 ぼりぼりと頭を掻きながら、ユーグは首を捻る。


 『とにかく、不安定で心配なのだ』

 「…………クロちゃん、過保護って言われない?」


 ユーグの呆れた言葉に、クロガネが「ぐぅ……」唸る。どうやら、自覚はあるようだ。


 『ま、まぁ、…………シオンの様子次第では、明日は我も参戦するのもやぶさかではない』

 「だってさ、ルーくん」

 「それは止めろ!オレはルディオスだ」


 ルディオスを見たユーグ。

 ルディオスは、不機嫌な顔でユーグを睨みつけた。だが、ヘラヘラと笑うユーグには、ルディオスの鋭い睨みも効果がないようだ。

 ルディオスは、深く溜め息を吐いた。


 「………分かった。とにかく、今日はもう休むぞ。作戦は、明日、シオンの様子を見てからだ」

 「……………ここにも“過保護”がいたネ……」


 憮然と言ったルディオスに、ユーグは苦笑して肩を竦めた。それに答えず、ルディオスは、話は終わりとばかりにそっぽを向いた。


 『………若いな』

 「若いねぇ………」


 ニヤニヤしながら見るユーグとクロガネのつぶやきが重なる。

 結局、カリナが戻ってくるまで、ルディオスの不機嫌さは周囲をピリピリさせたが、誰一人としてそれを気にする者はいなかった為、ルディオスは1人深い溜め息を吐くのだった。


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