18/25
第18章 別れ
店を出た後、二人は駅までゆっくり歩いた。
何度も歩いた道だった。
季節だけが変わり、もうすぐ冬になろうとしている。
改札の前で足が止まる。
言いたいことは山ほどあった。
それでも、どんな言葉も足りない気がした。
由香が先に口を開く。
「元気でいてください」
健一は少し笑った。
「由香さんも」
短い言葉だった。
だが、その中には伝えきれない感情が詰まっていた。
電車がホームに入る音が聞こえる。
もう時間だった。
由香は一度だけ頭を下げ、改札の向こうへ消えていった。
健一はしばらくその場から動けなかった。
やがてスマートフォンを取り出す。
由香とのトーク履歴を開く。
何百通ものメッセージ。
楽しかった記憶。
苦しかった記憶。
すべてがそこに残っていた。
しかし健一は静かに画面を操作する。
連絡先を削除するためだった。
これで終わりだ。
そう自分に言い聞かせながら。
だが、その時の健一はまだ知らなかった。
三年後、この別れが本当の終わりではなかったことを。




