サイドA その2
【登場人物】
アイリ……普通の女子高生
コウスケ……私の幼馴染
ヒメカ……名家の黒髪お嬢様
スミレ……フワフワ、癒し系女子
ココ……無口な文学少女
エミリー……金髪元気はつらつ留学生
一つ目の試練を乗り越えた私達は階段を降りて二つ目の試練の部屋まで辿り着いた。そこには一つ目の試練とは似た試練が待っていた。
「えっと、なになに……この筒に手に入れた先にボタンがある。それを押せば扉は開かれる。ただし、ボタンを押すと同時に筒から無数の針が飛び出し腕を突き刺す。無理矢理引っ張るも良し、備え付けの斧で腕を切り落とすも良し。どのような形であれ腕を抜けば次へ進める──こんなの誰がやるんだよ……」
コウスケが説明を読み上げた。
これに限らず初めの部屋だって誰だってやりたくない。
先ほどとは違い名乗り出る者はおらず部屋には沈黙が訪れた。
数分間、誰も口を開かない状況が続いたが、
「あ、あの……黙っていても進まないから……なんらかの方法でボタンを押す人、決めた方がよくないですか?」
普段はあまり話さないココが口を開いた。
「何で決めるよ?」
私がそう疑問をくちをすると、
「そうだな、後腐れなくジャンケンをしよう。もちろん不公平じゃないように俺も参加する」
コウスケがそう言った。
コウスケが負けたらこのデスゲームが意味が無くなるかもしれないと思ったが、腕を切り落としてでも先に進めばいいからコウスケはそれも考えての発言だったのか……それより、私が負けたらどうしよう……筒から手を引き抜くのも、腕を切り落とすのも、どちらもできる自信がない。
もし負けたら斧でコウスケを殺して私も死ぬ。それしかない。
そう決死の覚悟を決めてジャンケンに挑む。
「じゃーんけーん、ぽん!」
コウスケの掛け声でそれぞれが手を出す。
私とコウスケ、それとヒメカはパー。スミレとココはグー。
あっさりと決まった。五人のジャンケンなんてどう転ぶか分からない。単純に運が良かった。勝ち抜けた。
負けたスミレとココは悲壮な顔付きで二回目のジャンケンを始めた──そして、スミレが敗北した。
「うっ、うぅ……負けちゃった……痛いのは嫌だな……でも、みんなで決めたことだから、私、頑張るよ」
スミレは泣きながらそう言うが、普段のふわふわした感じの彼女がこんなにあっさり覚悟を決めるものなのか、と感心してしまった。
それと彼女は大粒の涙を流しているが、極限になると人間の涙ってこんなに漫画やアニメみたいに大粒で流れるんだなと変な感動をしてしまった。
「なんとか腕を抜くように頑張るから……私が頑張る顔を見られると普段とイメージと違っちゃって恥ずかしいから、みんなは早く先に行ってね」
スミレは私達に早く先に行くように促す。本当に彼女の頑張りだけで腕が抜けるか不安なのだが、彼女の恥ずかしがる理由も分かる。
それは全員が同じだったようで、私達は次の試練に向かった。
♢
次の試練はわかりやすかった。
部屋の奥にボタンがあり、それを押すと次の扉が開く。しかし、それと同時に廊下側の檻の柵が閉じ、逆にヒグマが閉じ込められている檻が開く。ボタンを押した一人はヒグマと同じ檻の中に閉じ込められるのだ。救済措置としてはヒグマに首輪が掛けられていて、そこに脱出用の鍵がある。つまり、ヒグマを倒すと檻から出られるのだ。
ちなみに過去にはこの試練にここまで残った全員で挑み全滅したグループもあるらしい。
「確かに大人数で挑めばヒグマに勝てる可能性があるように見えるが、そんなのは幻想だ」
ヒメカが冷静に判断する。その通りだ。
「挑んだのは俺達とは逆で、女子を囲う逆ハーレム状態の人達で男子全員で挑めばいけるかもって思ったんだろうね」
「じゃあ、なんで全滅してるのよ? その女子だけ助かったかもしれないじゃない」
「それは分からないよ。もしかしたら一人でも多い方がいいと思ってその女子も檻に入ったかもしれないし、それか一人で先に進んでも試練がクリアできなかったかもしれないし」
「確かにそうね」
私とコウスケがそんなこの場ではどうでもいいような会話をしていると、
「ここは私が行く。それが一番生存確率が高いと思うから」
ヒメカがそんなことを言い出した。
「本気なの?」
私はヒメカの提案に驚いて聞き返してしまった。もちろん私が檻の中に入っても生き残れるとは思えない。先程と違ってコウスケを道連れにするためのそれらしい言い訳も思い付かない。だからと言って、ヒメカが提案したことにいきなり賛成するのも不自然ではないかと、心の中で葛藤が生まれた。
「そうか、それなら頼む!」
コウスケはあっさりと承諾した。
私は単純に驚いてしまった。
「何言ってるの? コウスケ、正気?」
この喜ばしい状況でも私の良心がどこかで勝ったようだ。
「だって、ヒメカはやってくれるって言ってるんだ。それならお願いした方がいいだろう」
「でも、ヒグマと戦うことになるんだよ? もっと冷静に話し合った方がいいんじゃ──」
「じゃあ、アイリがやるかい?」
コウスケにそう提案されるとは思わなかった。どう答えたらいいのだろう。
「えっ……私は……」
「今はそう仲間割れをしてる場合じゃない。合気道を習っている私ならヒグマぐらいなんとかしてみせると言っているんだ。アイリも私を信じてくれ」
ヒメカは確かに合気道をやっている。それどころか柔道、剣道、空手、弓道に薙刀と武道と呼ばれる多くのものをやっていると聞いた。黒髪パッツンの長髪お嬢様の自己防衛のためのお稽古としてはやり過ぎな気もするのだが……
「分かった。私もヒメカを信じる」
私のその言葉を聞くとヒメカは頷き檻の奥へ進んでいった。
「私がボタンを押して扉が開いたら振り返らずに先に進んで欲しい。スミレと同じで必死な姿を見られるのは少し恥ずかしくてな」
ヒメカはそう言ったが、私は必死な姿よりもヒグマに八つ裂きにされるヒメカの姿の方が見たくない。
「分かった。俺達は先に行かせてもらう。ヒメカが試練を突破してくることを信じている」
コウスケのその言葉と同時に扉は開き、私達は先に進む。
それにしてもコウスケの今の言葉は何だ?
ヒメカがヒグマに勝つと本気で思っているのか?
どうもコウスケの言葉や行動が私のコウスケへの好意を減らしていってるような気がしてならない。
お読みいただきありがとうございます。
4〜5話で完結予定です。
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似たような世界観で書いている作品をシリーズでまとめてますので、もしよろしければそちらもご覧ください。




