サイドA その1
【登場人物】
アイリ……普通の女子高生
コウスケ……私の幼馴染
ヒメカ……名家の黒髪お嬢様
スミレ……フワフワ、癒し系女子
ココ……無口な文学少女
エミリー……金髪元気はつらつ留学生
私はこの国に制定された「ラブコメハーレム禁止法」を上手く使って幼馴染のコウスケを独占することを考えた。
周りに邪魔者が多過ぎる。
名家の黒髪お嬢様のヒメカ。
フワフワ、癒し系のスミレ。
無口な文学少女のココ。
金髪元気はつらつ留学生のエミリー。
なんで彼の周りに集まる女子は全員可愛いの?
何で本当にアニメやラノベみたいなハーレムが、別に特徴もなくそこら辺にいそうな私の幼馴染のコウスケの周りにできるのよ?
もっとうちの学校にはただただイケメンや万能スポーツマンやクール系天才男子やほんわかしてる女子のような可愛い系男子とか──とにかく、もっと女子が喜びそうな男子がたくさんいるのに、なんで勉強も運動もルックスも全部平均のコウスケにあんなに可愛い子が集まるの?
邪魔な女子を「ラブコメハーレム禁止法」で消すことにした私は自身の身の危険を心配しつつも密告制度を利用して通報した。
一人による異性の独占を禁止した法律なのだが、
・平等に恋愛する権利を広めるために一人による異性の独占を禁止する
・ハーレム状態になった場合、一人を選ぶためのデスゲームを実施。見せ様的な面もある
・生き残った者には結婚から出産まで幅広く国としてサポートを行う
・ただし、複数人が生き延びた場合は重婚を認める
要約するとこんな感じだ。
複数人生き延びた場合は、と書かれているが今まで実施された中ではこのケースはない。
しかも、ほとんどの場合が男女ともに全滅、ハーレム主だけ生還などまともな結果を出してないクソ法律である。
廃止した方がマシなのだが、私は利用することにした。
もちろんデスゲームで私が生き残る確率は低いかもしれない。
もし私が死ぬ場合はコウスケと心中すると決めている。普通の生活の中で心中するとなると残されたお互いの家族に向けられる目も厳しくなるだろうが、このデスゲームの中での心中なら多少は和らぐだろう。というか、心中かどうかも分からないのではないだろうか。
とにかくコウスケといい関係になりたい私は藁をも掴む感じで通報制度を利用した。
♢
通報してから約一ヶ月後、私達は無事にデスゲーム会場に連れて来られた。
私は一番に目が覚めた。
「何よ、これ?」
私の次に目が覚めたヒメカが首に嵌められている首輪を触っている。
デスゲームあるあるの首輪だ。
全員の首についている。
ヒメカの声で続々と全員が目を覚ます。
『ようこそ、死の学園へ』
どこかの廃校を利用しているのか、学校のような場所がデスゲームの会場のようだ。
私達のいる教室のような場所──本来は教室前方に黒板があるはずのところは大型モニターが嵌め込まれ、そこに変なピエロのマスクをした男が映し出された。
首輪にピエロの仮面の男、それに死の学園……全てがあるあるで、さらにダサい。
国の事業だからセンスがないのだ。
『君たちは「ラブコメハーレム禁止法」の対象になり、この死の学園に連れて来られた。コウスケを求めていくつかの試練を乗り越えてもらう。各試練で一人以上の犠牲者が出るかもしれないが、それを乗り越えた愛を成就した者には結婚から出産、それにその後の孫作りにも国が全面的に支援することを約束する。頑張って試練を乗り越えてくれたまえ』
もっと全員騒ぐかと思ったが、大人しくモニターのピエロの男の話を聞いていた。
『ルールは簡単。十二時間以内にこの死の学園から脱出すること。それができない場合は首輪の爆弾が爆発して死を迎える。過去には全員で死ぬことを選び、初めの部屋から制限時間まで部屋で全員でヤることヤって死んでいった連中がいるがそうならないように願う』
全滅したのはそういう奴らなのだろう。気持ちは分からないではない。
『爆弾を無理矢理外そうとした場合もセンサーが感知して爆発するから気を付けるように。ルールは以上。健闘を祈る』
そう言ってモニターが消えた。
「だから、俺はハーレムなんて望んでいなかったのに! 何でこうなったんだ?」
コウスケが叫んだ。
まぁ、これが普通の反応だろう。
「コウスケ君、生き残るために一緒にがんばろ」
私が声をかけようとしたら、スミレが声をかけていた。
体格で言えば私は女子高生の平均くらいで158センチ。ヒメカが同じくらい。エミリーは私より少し高いから160センチ台半ばくらいか。逆にスミレとココは私より低い。ココは150センチちょうどくらいで、スミレはさらに低い。
もし単純な殴り合いになってもスミレとココには負けないと思っている。
私の立場を取ったスミレに対して殺意を抱いた今なら殺せそうだが、この後の試練が何があるか分からないので不用意に殺すことはできない。
「この部屋から簡単には出れないようだな」
ヒメカが扉を開けて外を見ている。
「危険だから近付くなよ。廊下が突き抜けていて、落ちたら下の階まで真っ逆様だ」
「部屋の後ろにレバーがありました。説明も書いてあります……うーむ……このレバーを倒し続けていると廊下に橋がかかるみたいです」
ヒメカの注意の後に、レバーを発見したエミリーが続ける。
「じゃあ、それって誰か一人はここに残らないといけないっこと?」
「そういうことになりますね」
コウスケの当然の疑問にエミリーも当然でしょ、って感じで答えている。
「誰も見捨てられないよ」
「ワタシが残ります」
エミリーはあっさり言った。こういうのってもっと揉めるものじゃないの?
それで決められなくてさっきの説明にあった回みたいなことになるんじゃないの?
私はそれならそれで、コウスケと結ばれてから死ぬのもいいと思っていたけど……
「ちょっと待って」
私はすかさず疑問に思ったことを伝える。
「エミリーちゃんがレバーを引くにしても渡っている途中にレバーを離したらそれで下の階に落ちて死んじゃわない?」
「向こう側から来る跳ね橋なので、一度乗ってしまえば大丈夫ですが確かに不安ですよね」
それはそうだ。この場面で揉めないのは何か裏があると勘繰ってしまう。
「それなら俺がエミリー以外が渡るまではレバー倒すよ。それで俺が渡る時はエミリーにレバーをお願いする。これならアイリも納得できるだろ?」
「いや、納得というか……エミリーちゃんはそれでいいの? 跳ね橋が無かったら脱出できないんだよ?」
「うーん、でも何か他に方法があるかもしれませんし、十二時間もあれば発見できるかもしれません。それなら私が一番適任でしょう。でも……もし私が助からなかったら母国のパパとママに私は最期まで勇敢だったと伝えてください」
「分かった。ここはまずは俺に任せてこの部屋から脱出しよう」
私以外の三人は頷いているのだけど、本当にこれでいいのか?
「まだまだ先はあるんだ、急ごう」
コウスケがレバーを倒している間にエミリー以外の女子は教室を脱出した。
コウスケからエミリーにバトンタッチする時にエミリーがコウスケの頬にキスをしてるように見えた。
まぁ、これがエミリーの最後なわけだし許してやるか。
コウスケがこちらへ渡りきり、エミリーは自らレバーを離した。
そして、私達に別れの挨拶で手を振っていた。
コウスケに想いを告げられたからか、これから死ぬ者としては晴れやかな表情だった。
お読みいただきありがとうございます。
4〜5話で完結予定です。
ブックマークや評価をいただけると励みになりますので、お願いします。
似たような世界観で書いている作品をシリーズでまとめてますので、もしよろしければそちらもご覧ください。




