友達のお兄ちゃんと友達になるのは難しい4
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「これは次代の勇者殿、お久しぶりですね。こうやって直接お言葉を交わす事は初となりますが」
たぶんだけどメフティアがイジメられてる。
俺は振り返ったメフティアの顔を見てそう判断した。
俺がヴァリア王子に声をかけた瞬間なんか、メフティアがそりゃもう凄い顔をしていた。
可哀想に、実の兄からイジメられるだなんて……メフティアが無能だからといって何でもしていいわけじゃ無いだろ。
俺はメフティアとヴァリア王子の間に割って入る。
メフティアの兄、ヴァリア王子に関しては、王様から雑用を頼まれる時によく玉座のそばに立っていたので顔は良く知っている。
いつも優しそうに笑っていたので良い奴かもしれないと思っていたが、実の妹をイジメるとんでもねぇ奴だった。
「私がメフティアをイジメているとは、実に心外ですね。むしろ今イジメられているのは兄である私のほうですよ?」
「おいメフティア。駄目だぞ兄弟は仲良くしないと」
メフティアがイジメられていると思ったら逆だったようだ。
兄弟は仲良くしないと。
「誤解です!」
メフティアが悲鳴を上げる。
「ヴァリア兄様も! あまりショウ君を《《揶揄わないで》》ください!」
「なんだ、冗談だったのか」
兄弟同士のじゃれ合いみたいなものだったのかな?
分かりづらいなぁもう。これだから王族とか貴族は駄目なんだ。
何をするにしても回りくどくて分かりづらい。
「ふむ。少し落とし所としては凡庸ではあるけども……。可愛い妹の頑張りが見えるのは兄としては楽しいものだね」
なんか含みあるなぁコイツ。
俺は一応確認のためにメフティアの方を振り返り視線だけで確認する。
〝こいつ殴らなくて良い?〟
メフティアが一瞬だけ悲鳴を上げそうな顔をする。
「ヴァリア兄様、お戯れは本当にご遠慮ください。竜の逆鱗を逆撫でしたところで触れている場所に変わりは御座いません」
「成る程、二体の竜を従える姫君のお言葉だ。素直に聞いておくとしよう」
目の前で、何か難しい事を言っている、という事だけは分かる。
まいったな、あまりに頭の出来が違うと友達にはなれない、とかいう話を聞いた事がある。
ここは何か俺も、頭が良さそうな事を言わなければならないはずだ。
「えっとぉ……俺よぉ、バカだから良く分からないんだけどよぉ。竜の爺さんは一人しかいねぇと思うだよ」
「そうですね、ジイ様はただ御一人です」
メフティアが急に優しい顔をする。
なんだろう? 今なにかを諦められた気がする。
「ふむ、これは私に対する警告ですかね?」
ヴァリア王子が首を傾げているが、安心してくれ俺も自分が何を言っているのか分からない。
自分の頭が悪いことに自覚があるのに変な事をしようとした俺が悪い。
メフティアと友達になれないかもしれない、そう思ったらちょっと焦ってしまった。
俺が反省していると、ヴァリア王子が微笑み、竜の爺さんに向けて頭軽く下げる。
「今日に関しては私が少々気が逸りすぎましたね。次代の勇者殿に挨拶が出来たことだけで満足して帰りましょう、派閥の者達はこれで私がヴァンセル兄様と並んだと納得もしましょう」
あー、分かった。コイツ頭が良いんだな。
そんでもって、コイツは話す相手の頭の良さとかどうでも良いタイプだ。
相手が理解できるか? とかまったく気にしていない。
今も竜の爺さんに頭を下げつつ、俺と挨拶できてよかったと、明らかに何か含みのある事を言っているが、それが俺に正しく伝わっているかどうかは全く気にしていない。
「妹には妹の考えがあるようですし、今日のところはこれで失礼させて頂きますね」
言うだけ言って去っていくヴァリア王子の背中を見て思う。
絶対に友達にはなれないと。
きっと頭のできが俺とは違い過ぎて会話にならないだろう。
俺にはメフティアぐらいが〝丁度いい〟のだ。
「いやでも竜の爺さんは一人だけなのに、二匹の竜とか言ってたからそんなに頭は良くないのか?」
俺が首を傾げていると、メフティアがでかい溜息を吐いた。
「自分が普段ショウ君と会話できているのが不思議になってきました」
おいやめろよ、俺が馬鹿すぎて会話になってない可能性に不安になるだろうが。
ヴァリア王子がいなくなったからか、気の抜けた顔に戻ったメフティアが呆れた顔で俺を見てくる。
「俺はメフティアとの会話はいつも楽しいぞ?」
「それはそれは、ありがとうございます」
メフティアが呆れ顔のまま竜の爺さんの腕の中に戻る。
「できれば今後とも人間の言葉を話して頂けると助かります。私は今日これ以上なにかあったら爆発する自信があります」
疲れたー、もう今日は何もしないー。
メフティアが俺でも分かる王女として駄目な言葉を吐いて爺さんの腕の中でゴロゴロする。
あーこれだ。俺がメフティアとの会話が楽しい理由。
コイツは自分の気持ちを、相手が分かってくれると信じて投げてくる。
「メフティアが爆発しそうになったら俺がどうにかするよ」
ヴァンセル王子は自分の言葉が正しく伝わることを疑わないし、ヴァリア王子は相手に正しく伝わっていなくても気にしていない。
彼らは正しく聞く耳を持っているのかもしれないが、友達としてはよろしくない。
俺は友達が嬉しいなら一緒に笑いたいし、悲しんでいるならどうにかしたいのだ。
だからメフティアの言葉にやどる、伝わって欲しいという願いが好ましい。
気が付けばメフティアが身を起こして俺を見ていた、真剣な顔で。
「それだけは本当に勘弁してください」
あーこれはアレだな、本音としてはその時は宜しくお願いします、だな。きっと。
「ああ、任せろ」
しっかり伝わったぞと、力強くうなづき返したら。
メフティアが小さな声で「クエェエエ」と呻いた。




