友達のお兄ちゃんと友達になるのは難しい1
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「なあ爺さん」
俺は学園の営庭で、その巨体をどーんと横たえる黒竜のジイに声をかけた。
爺さんの前足の間は腰掛けるのに丁度良い。
「俺とメフティアって何に見える?」
竜の爺さんは気持ちよさそうに日光浴をしながら、そうじゃのぉと呟く。
ちなみに竜の爺さんは種族としてはまだ中年にもなっていないらしく、話す言葉がやたらと昨今聞かないような爺言葉なのは、初代国王様がそう教えたから、らしい。
人間相手には丁度良いハッタリだ、とはご先祖様ノートに書いてある初代国王様の言葉だ。
「凄く、凄く頑張って、かつ甘めに見て、やっとでどうにか、恋人かもしれんのぉ」
「そうかぁ頑張って見て恋人かぁ」
声に残念という気持ちが乗る。それは俺が求める物じゃない。
「青春じゃのぉ」
そうである、俺が求める物はそれである。
貴重な十代を、王国からの雑用に浪費するのではなく、キラキラした青春を送りたいのだ。そして借りを返したい。
メフティアと友達になれば、青春の象徴である友人も手に入り、王家からの借りも返せる。一挙両得である。
やはり俺はメフティアと友達になりたい。
「どうすれば良いと思う?」
竜の爺さんは、俺からすれば人生の大先輩だ。良いヒントをくれるかもしれない。
「ワシ竜じゃからのぉ」
竜だからなんだと言うのか? 竜だって友達ぐらい作るだろ。
だいたいご先祖様ノートには、竜:俺の二人目の友達、って書いてたぞ。
つまり友達になる方法を知っているはずだ。
吐け! 吐くんだ! 爺さん!
「ワシあんまり経験ないからのぉ。でもまあ一般論で言うなら優しくしたり、後は何か贈り物をしたりとかじゃなぁ。個人的な経験で言うなら、親切にしたり、優しくするのが一番のような気がするのぉ」
あんた竜だから個竜的な経験だろ。
いやしかし。
「優しくかぁ……。優しくしているつもりなんだけどなぁ?」
「男女の優しいって結構違う事あるからのぉ。まあこれも個人差が大きいんじゃがな」
「難しいな、爺さん」
「難しいんじゃよ、ボン」
日の光を吸って、ほんのり暖かい爺さんの身体を背中で感じながら、俺はもしかしたら今まで俺がやっていた親切や、優しさは間違っていたのかもしれないと思った。
自分でインドア派で一人バーベキューもしないと言っていたメフティアだが、本当は誘われたら行くわ派閥の人かもしれない。
偶にいるよね、そういう奴。
自分自身では絶対に自分のセオリーを曲げないくせに、人から誘われると簡単に曲げるというか折れる奴。
俺は非言語活動的野郎と勝手に呼んでいる。
「ところでボンよ。メフティアちゃんはどうしたんじゃ? 一緒に行ったはずなのにボンだけ戻ってきたが、何かあったのかのぉ?」
やっぱり急にワシが来たせいで迷惑かけとるんじゃないか? 人間は先ぶれとか言うのが必要なんじゃろ? と竜の爺さんが見当違いの心配をしている。
貴族でもあるまいし、先ぶれなんて必要ないだろ。
街中に爺さんを連れて行くなら準備も必要だろうが、俺はちゃんと営庭の広さなら爺さんをゆっくりさせられると、広さを確認してから呼びに行ったのだ。
戻ってきたら何故か、全校生徒が営庭に集まっていたのは予想外だったが。それ以外はメフティアの反応も含めて想定内だ。
俺は驚いていたメフティアの顔を思い出す。
サプライズ大成功って奴だ。凄く友達っぽい。
「メフティア曰くなんだけど、爺さんを人に合わせるにしてもその順番とかがあるらしくて、その連絡とか準備をするんだってよ」
ぬくぬくの爺さんの鱗に後頭部を乗っけながら伝えてやると、特大の溜息が頭上から降ってきた。
かすかな硫黄と、冬の枯れ葉が燃えた時の匂い。
「ボンよぉ。そういうのを手伝わんかい。優しくしとるんじゃろ?」
「手伝おうとしたら断れたんだよ」
ショウ君に手伝われると竜の髭すら絡まります。代わりにジイ様がお暇せぬようお相手してください、と言われてしまったのだ。
「なあボン。本当はメフティアちゃんに嫌われておるとか無いよな?」
ねぇよ! 失礼な竜の爺さんだな!
俺とメフティアは仲良しだよ、そう答える俺に。
「ほんとかのぉ」
と竜の爺さんは空を見上げて呟いた。
本当に失礼だな、今度証明してやるからな!
よし! メフティアと一緒に竜の爺さんと空飛んで仲良しアピールしよう!
俺は日の温かさを含んだ鱗に背中を預けながらそう決心した。




