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続続 男の夢が叶いそうでした……三度目の正直なのか?二度あることは三度あるなのか?


 ……なんて、俺は思わない。


 伊達に長く片思いしてる訳じゃない。

 相手はクラリスだ。そんな甘ったるい話があるわけない。俺が思うに「婚約破棄の件、いいこと思いつきました!」なんて内容をニコニコ語られるのがオチだ。


 とりあえず王宮に帰るため、クラリスを先に馬車に乗せ、俺も乗り込もうとした時、どこからかエドワードが現れ、俺に顔を寄せ耳打ちをする。


「馬車で2人きりだからといって、変な気を起こさないでくださいね。しかし、クラリスの為、人攫いに立ち向かった王子の根性は認めますよ」


 俺を認めるとの台詞に驚き、振り返るとすでにエドワードの姿は消えていた。


 あのエドワードが認めるだって? 天変地異が起こるのではないか? 


 背筋に冷たいものが走りつつも、嬉しい気持ちを隠すことができず、にんまりしてしまう。エドワードの消えた方角をぼんやり見ていたが、車内から心配そうに俺の名を呼ぶクラリスの声が聞こえたので返事をし、不満顔のジェスターとミカエルに「じゃあな」と伝え、馬車に乗り込んだ。


 クラリスとむかい合って座ると同時に、馬車は動き出し、窓から見える西の空がオレンジ色になり始めているのが目に映る。


 俺は、コホンと咳払いを1回して、クラリスの目を見て質問する。


「何か俺に話でもあったか?」


 エドワードの件で忘れそうだったが、2人になりたい……なんて、あまりいい話じゃないのだろう? さっさと終わらせたいからな。俺は決して浮かれないぞ。


「ああ、えっと……」


 クラリスはバッグを開け、かわいくラッピングされた袋を手に持ち、俺に差し出した。


「アルベルト様、これ……」

「なに?」

「アルベルト様、今日はお付き合いいただきありがとうございました。チーズのクッキーなんですが……」


 ……クッキー?

 これまた予想を遥かに上をいく言葉で俺は躊躇してしまう……いや、てっきり、婚約破棄の話かと思い、気合を入れて臨んだのだが……くっきぃ?


「……クラリスが作ったのか?」

「はい!」

「すごいな……」

「ふふっ、簡単なんですよ。甘いケーキにお付き合いいただいたので、甘じょっぱい系にしてみました……お渡しする前にミカエルとジェスター様に偶然会ってしまって……」


 あれ? これ、浮かれていいやつなんじゃ……


「あ、ありがとう」


 顔が赤くなるのが恥ずかしくて、うつむき加減にお礼の言葉を口にしたが、すごく嬉しいのに単純な言葉しか出てこず、自分の語彙力(ごいりょく)のなさが悔やまれる。


 本当にだめ……2人っきりの状況でそんな風に笑顔で手作りクッキー渡されて、理性が保てる男がいるのか!?

 いや、いねーよ。

 誰か俺の理性が欲望に負けないよう止めてくれ。


「美味しくできたと思うのですが……お口に合うかしら? 1枚食べてみます? もし、好みでなかったら、私が責任を持って食べますから!」


 「まかせて下さい!」と胸を張るクラリス。

 女性の……いや、クラリスの胃袋ってどうなっているんだよ……でも、まぁ1枚くらいなら食べられるし、クラリスに美味しいと伝えたいし……食べるだけならば、俺の理性も保てそうだし。


「そうだな……いただこうかな」

「はいっ」


 元気よく返事をしたクラリスは、クッキーを1枚つまみ、俺の口元に持ってくる…………え? まさか、あーんってやつか!?


 理性、崩壊寸前……

 

 わざとか? わざとなのか!? 俺を弄んでいるのかぁぁ!?


 弄ばれていようが、天然だろうが、鈍感だろうがいい!(クラリスの場合、後者2つだが……)もちろん、食べるぞ。こんなチャンスないからな。


 俺は広くない車内を何度も見渡し、誰にも邪魔されない状況である事をしつこく確認する。


 今まで、散々邪魔をされている……いきなり、ジェスターやミカエルが壁から現れても、俺はもう驚かないぞ。


 疑心暗鬼になっている俺にクラリスが不思議そうに首を傾けた。


「アルベルト様?」

「ああ。すまない。あー、このクッキーを食べたらいいのか?」


 俺はクラリスが手にしているクッキーをチラリと見る。


「はい。アルベルト様のお手を汚しては、と思いまして……お嫌ですか?」

「いや、大丈夫だ」


 なんとか平静を装いながら、口を開けるとクラリスはそっと口の中にクッキーを入れる……クラリスの手から食べたクッキーは照れと緊張とで最初は味も良くわからなかったが、この喜びの瞬間と手作りクッキーを味わう為、何度も何度もゆっくり噛み続ける。


「チーズが濃くて美味いな」


 素直に感想を言うと、クラリスは嬉しそうに微笑んだ。


 なんだこれ……幸せ空間なんだけど……邪魔も入らないだと!? 最高じゃないか! こんな空間が世の中に存在していいのか!?


 クッキーをクラリスから渡され、感慨深く眺めているとメモが張り付いていて……メモ? 俺はメモを手に取り、読もうとした。「あっ」という声と同時にクラリスは手からメモを取っていき、チラッと上目遣いで俺を見る。


 ……今の一瞬で見えた文言。



「婚約破棄、計画書」



 俺の幸せ空間は速攻崩れた……




お読みいただきありがとうございます。


三度目の正直でした。

たまには、作者も優しいのです……たまにはですが。



今回で50話になりました!

皆様に感謝です。ありがとうございます。

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