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話し合いが長引きました……いや、話し合いっていうか……なんていうか……


 ナクサスは俺を(おとし)め、嫌われる作戦は埒が明かないと、別の角度から説得にかかる。


 まず、最初に俺を貶めるって、酷すぎじゃね?


「マリー様、失礼ですが、クラリス様は身分も魔道士ランクも格上のご令嬢。申し訳ございませんが、ここは諦めていただけませんか?」


 格上の令嬢ならば仕方ないと諦めてもらう作戦か……ちょっと酷な言い方だけど、しょうがないな……かわいそうではあるが、これで諦め……


「身分と魔導士ランクが高いというだけで、気の利いたセリフ1つ言えない、口も悪い、言葉も足りない王子様とご婚約なんて、クラリス様が可哀想ですぅぅぅぅぅ」


 えええ……


 誰の味方? 誰目線?

 わけわからん……どうすりゃいいんだ?


 でも、ある意味、すごいな。

 ナクサスの言葉、めちゃくちゃ正確に再現したじゃん。


 俺は思わず、マリー嬢の記憶力の良さに感心してしまう……って俺の悪口だけどな!


 いやいや、いかん。すっかり、マリー嬢のペースじゃないか……


「えっと……ですね。これだけは勘違いして欲しくないのですが、けっして、クラリス嬢との婚約は身分と魔導士ランクが高いから、というわけではなくて……」


 俺は自分の恋心を話すのに照れてしまい、口ごもった。顔も少し赤くなっていたと思う……それを見たマリー嬢は、ハッと気がついたように「まさか……」とつぶやいた。


 そうそう、そうなんだよっ!

 俺はクラリスにずっと恋してて、やっと婚約ができたんだ。

 だから、身分や魔道士ランクは関係なくて……


「公爵家の財産目当てですかっっ!!」


 なんで、そうなるんだーーーーー!!!


「そんなに王家は財政難なのですか!?」


 ん、なわけあるかぁぁぁぁぁ!


 マリー嬢の斜め上いく返答に、俺は開いた口が塞がらず、あのナクサスさえも閉口し、言葉を見失ってしまったようだった……


 マリー嬢……恐るべし。


 

 あれから数時間、泣きじゃくるマリー嬢相手に、俺とナクサス、2人がかりで(なだ)め、説得し、マリー嬢はようやく帰っていった。


 来客の間に入室した時は明るかった空が、今はもう真っ暗だ。

 俺もナクサスもヘトヘトである。


 自室に戻り、俺はベッドに倒れ込む。


 さすがのナクサスも疲労困憊(ひろうこんぱい)なのか、ベッドに倒れ込んだ俺に嫌味を言う気力も残ってないみたいだ。


 そして、俺は枕に顔を埋め、ゆっくりと目をつむり、さっきのマリー嬢とのやり取りを思い出す。

 


「私の婚約はまだ発表されていないのに、なぜ、ご存知だったのですか?」


 俺はこのタイミングで乗り込んで来たマリー嬢に最初から違和感があり、帰り際に質問した。


「ええっと……なんでだったかしら? ああ……そうですわ。アルフォント家のミカエル様から早馬が来まして、今なら、クラリス様との婚約が公になっていないから、間に合うと……クラリス様は王子妃に興味がないので、ぜひ、私にアルベルト王子様の婚約者に……と」


 裏で糸を引いたのは、クラリスの義弟(おとうと)、ミカエルだったか……あいつめ……

 昨日の今日だぞ? 婚約を邪魔する一手(いって)がはえーよ!!

 しかも、俺の婚約者の立場を勝手に譲るなっ。



 次の日から王宮には『アルベルト王子は恋人を見捨てて、身分と魔力と財産に目がくらみ、クラリス嬢と婚約した』と尾ひれがつきまくりの不名誉すぎる噂が立った。

 父上、兄上にも呼び出され、使用人達も含みのある目で俺を見る。


 俺のイメージはガタ落ちだ……


 

 1週間後……



「マリー様がミドナイト伯爵のご令息とご婚約したそうです」


 ナクサスは、1週間前のあの騒動を思い出したのか疲れた顔をして、俺に報告した。


 はぁぁぁぁ!?


 いや、めでたい事だし、諦めてくれて良かったけど、切り替え早すぎじゃね?

 あの騒動は、一体全体なんだったんだ?

 俺の信用が地に落ちた。という結果しか残らなかったじゃないか!


「まぁ……人の噂も七十五日、と言いますしねぇ」


 ナクサスが珍しく俺に慰めの言葉をかけた。

 

 人の噂も七十五日。


 耐えろ、俺。

 これもクラリスと婚約を貫くためだ。

 

 あと68日…………はぁぁ。




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