第47話:会議後の日常風景
大和が提案した武術大会まで、彼らの時間で残り1年半ほど。
この間、土地神の協力関係や、各守護神との協議や合意が進んだ。
通称、【マッチポンプ合意】である。
この合意を踏まえて、各種族の守護神たちは、神様業に取り組んでいる。
「カイト様、モニターをご覧ください」
「おぉ! いい感じだね」
モニターの向こうでは、とあるパーティが休憩している。
ある者は温泉につかり、ある者は調剤室で解毒薬を調合している。またある者は修練空間で鍛錬に励み、ある者はカプセル内で仮眠をとっている。鍛冶場からは、鉄を打つ心地いい響きがしてくる。
今は使われていないようだが、調理スペースに娯楽ルームもある。娯楽ルームには、キャンプファイヤー道具や、歌と踊りの舞台が設置されている。
そして、簡易畑や動物の飼育スペースを設けた。精霊の休憩所となりそうな草原や湖なども用意してある。広めの個室も20備えてある。
「合体魔法キャンピングカー、好評のようですね」
「うん!」
そうなのだ。
これらの施設は、魔法によって提供されている。魔法を発動したメンバーの許可がなければ外部からの侵入は不可能であり、セキュリティも万全だ。
世界○見得の神権を使ってヒュムの移動距離や人数を確認したところ、ダンジョンの増設に伴い、かなり増えていることがわかった。そして今後は、種族領土間での移動が増えるだろう。
しかも、この星の主な長距離移動手段は、馬車なのである。ガタゴト揺れる馬車での長距離、そして集団での移動は大変だ。
そこで、快適空間を提供する魔法を考えた。
馬車の荷車に入ると、こうした施設が広がっているわけだ。もちろん、この空間は、各種族の個性や時間の過ごし方になるべく対応するようにデザインされている。
そしてこの魔法、守護神の合体魔法として発動しているのだ。
ダンジョンで、この魔法に関わるコアセットを入手し、魔法の詠唱呪文を確認すればいい。コアをセットにして落とすことで、配布機会の均等を保証した。表示される合体魔法の呪文を詠唱をすれば、各守護神の神樹に、質的信仰心が集まるのである。
ただし、ダンジョンに挑戦中の者が4人以上そろっていれば発動することにした。
協力することで得られるメリットがある、そしてダンジョンに挑戦するメリットがあると、星の住人に理解してもらえるといいな。
「守護神の皆様のこだわりが出てますね」
「みんな楽しそうに創ってくれてよかったよ」
訓練場はラグナ、娯楽施設はポセイドン、鍛冶場はトール、調合室はイブ、睡眠カプセルはディーテが、それぞれ担当している。適材適所だ。ちなみに、個室と調理等の共用スペースは、オレが担当した。
打合せを何回も重ねたこともあり、皆が満足のいく魔法ができたのである。
実は、先日の魔法会議後、追加でお願いした合体魔法がある。
その一つが、このキャンピングカー魔法なのだ。ちなみに、この魔法を使用することによって生じる質的信仰心は、ヒュムの神樹には還元されない。
この合体魔法に参加することを、断ったからである。
無自覚とはいえ、自分のミスでオレだけが得をしてしまうことが、どうしても納得いかなかったからだ。神々の幸福を守りつつ、自分のやるべきことを考えて、提案した。
「君の気が、それで済むならいいよ」と、神々は受け入れてくれた。
しかし、ちょっとだけ寂しそうにも見えた。どうやら、弟が兄や姉から自立していくような寂しさがあったそうである。
ちなみに、ダンジョン脱出や再入場に関する合体魔法も、配布した。
こちらも、安定的な使用頻度の見込める魔法だ。この魔法の恩恵は、オレも受け取ることにした。「こちらには加わるように!」と、神々が引き下がらなかったのである。
カッコいい兄ちゃんに、やさしいお姉ちゃんたちに恵まれている。
こんなに幸せでいいんだろうか?
「カイト様、こちらをご覧ください」
「うん?」
「神々との合意事項をまとめてございます」
「おぉ、さすがロココさん。ありがと!」
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【マッチポンプ合意】
魔法についての合意事項
1.各守護神は独自に魔法を配布しない
2.合体魔法の作成に協力する
3.合体魔法の作成には守護神たちの協議と承認を要する
4.違反した場合は下記の通りとする
‣ 残りの守護神で合体魔法の作成を行う
5.合意前に流通した魔法については上記の例外とする
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ダンジョンに関する合意事項
【超級ダンジョン:壊すものの住まう塔】
1.挑戦条件:全ての上級ダンジョン攻略パーティ
2.設置状況:準備中
3.予定時期:上級ダンジョンクリア者登場後
【上級ダンジョン:合体魔法のコア入手ダンジョン】
1.挑戦条件:①パーティメンバーが全て育成ダンジョン攻略者
②精霊憑依ができる者
2.設置状況:準備中
3.予定時期:武術大会後に設置
4.備 考:異種族混成パーティの編成を促すダンジョン
【育成ダンジョン:魔法と精霊召喚の習熟】
1.挑戦条件:意欲のある者 4人以上のパーティ
2.設置状況:各種族の領土に、人口を考慮しつつ複数設置
3.予定時期:稼働中(ヒュムは土地神の力を借りて)
4.備 考:①各守護神が、各自の従属神を手配して稼働
②希望の里のような地域密着&挑戦者の出身地還元目的
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「守護神たちによるこれだけの合意は、初めてでございます」
「そうなの? 」
「えぇ。さすがカイト様。ロココはとても誇りに思います」
「これができたのも、ロココさんのおかげだよ!」
そうそう、忘れてはいけない。
神々との魔法に関する会議の時も、ロココさんは有能だった。
会議の席上で、甘やかされるだけの存在でいいのかと悩んだオレに、そっと見せてくれたのである。
オレの問いを…
そして、オレの問いは、守護神たちを含みこんで、今はこうなっている。
「オレやロココさん、星の住人、協力してくれる土地神、守護神の健康や幸福を守りつつ、 任務(神様業)を果たすには、何を、どうすればよいのだろうか?」
ニマニマと、つい笑ってしまう。
「素敵な問いですね」
ロココさんも、嬉しそうだ。
オレ、少しは神様っぽくなってきたよね?
本当に、出会いに感謝だ。
でも、まだまだ新米神様の悪戦苦闘は続いていくんだろう。
神々や、まだ見ぬ敵との戦いに巻き込まれていくのだろう。
新米神様カイトの運命やいかに!?
それでは……
「オレたちの冒険はこれからも続く!ご愛読ありがとうございました…!」
「カイト先生の次回作にご期待ください!」
……ロココさんも、ノリノリである。
「カイトさま…… 」
「ん~? 」
「現実逃避は、このくらいに致しましょう」
「はい… ごめんなさい」
「いえ、私も同罪かと……」
「お互いさまってやつだよね」
そうなんだ。
二人とも、現実逃避したい状況なのである。
「おや。目を覚まされたようですよ? 」
「え!?もう?? 」
さっき眠ったと思ったのに……
「お腹がすいたんじゃないでしょうか?」
「神なのに?」
「そう言えば、そうですね......」
そうなのである。
オレは今、背中に、小さな獣人の赤ちゃんを背負っている。
「…… 獣王神ターニャ」
国を滅ぼされた獣人族の、新たな神である。
転生前は、武闘派の獣王として君臨した、正真正銘の王女様だそうだ。なぜかオレが、後見人として、獣人族の神様業を臨時兼業することになった。
ちなみに、キャンピングカーの魔法で得られる質的信仰心は、代理権限を用いて、獣人たちの神樹に還元されるようにしてある。
先輩女神が急に来て、ほぼ何も言わずにターニャを預けていったのが30日前。
迎えに来る気配はまるでない……
「神器、えっと、、、、」
「ベルでしゅ」
そして、獣人族のネコ型神器ベルは、ロココさんに背追われている。
こちらも、なぜか赤ちゃんなのだ。
どうやら、オレとロココさんの神様業に、子育てが加えられたようである。
「あ、泣くでしゅ」
「ちょっと待って!?」
「カイト様こちらを!」
「そうこれ!ありがとう!」
ゴロゴロと鳴るあの玩具、超有能…!
それにしても、創造神め。
何を考えているのか…… 出て来て説明しろ!
「あ…… 泣いたでしゅ」
「ちょっと待って!?」
ありがとうございました! 読んでいただけると、やっぱりうれしいですね。
それにしても獣王神ターニャ、可愛く育ってほしい…




