第46話:神々の会議風景
魔法トラブルの問題解決編、久々にあの仕組みが登場です。
「結果の可能性2、ヒュムの神樹が特に成長していた……か」
ポセイドンさんが頷き、会議室に静寂が訪れる。
「なるほどね。ここまでの話は理解したよ」
「確認よ?」
「ディーテさん、どうぞ」
「現在、主に魔法を使っているのはヒュムと獣人、竜人なのよね?」
「そうなの…… 」
ディーテさんの問いをイブさんが拾い、説明を先に進める。
「神器によれば、各種族の神樹に著しい変化はない……平均の誤差内よ」
「魔法で得られた質的信仰心が全て、ヒュムの神樹の成長に回った?」
「えぇ。その可能性が高い」
「つまり、こういうことじゃん?」
トールが、真顔で確認する。
「魔法を使った種族の神樹じゃなく、その魔法を生み出した神が管理する神樹が育つ」
…… その通りだ。
「念のため、試してみたの」
「はい。イブさんにもダンジョンギアへのアクセスを認め、実験しました」
「私の創った魔法コアを100人のヒュムに配布したわ」
「サンプルが少なく、結果はまだ確定的ではないのですが……」
「ヒュムは全員、私の創った魔法もダンジョン外で使えたわ」
「神樹は?」
「エルフの神樹に微量の増加傾向ありよ」
「なるほど。そうなると……」
「えぇ。エルフの私が、魔法でヒュム族の願いを叶え、エルフの神樹を育んだ」
ポセイドンが天井を見上げて、大きく息を吐いた。
これまでの常識が壊れたのだから、気持ちはわかる。
無自覚とは言え、オレのせいだ……
「ご迷惑をおかけして申し…「カイトは悪くないじゃん!」」
トールが謝罪を遮り、大きな笑顔を向けてくれる。
ニシシっといつもどおりに笑う姿に、裏表のなさを感じる。
安心のあまり、少し涙がこぼれた。
そしてポセイドンが、短い間だけど…… でも確かに、歌ってくれた。
それでスッと、気持ちが和らいでいくのを感じる。
「どう? 落ち着いたかい?」
「はい。ありがとうございます」
「休憩しようか?」
「大丈夫です。続けてください」
「じゃあ再開するね」
「はい!」
「まず、魔法によって、全守護神が他種族の願い事に干渉可能だということ」
「うむ。それが自分たちの神樹に利益をもたらす」
「もし私たちが魔法を多様な種族に配布すれば…」
「使用されるだけ自分の神樹が成長していくじゃん?」
そうとも言える。
しかし……
「フフフ...誰が一番使用頻度の高い魔法をつくるかしら?」
ディーテさんの呟きに、神々が目を見開く。
「あら…… そういうことでしょ?」
そうだ。
神々が魔法づくりを競い合う可能性が生じたわけである。
各々がダンジョンを設置し、自作したギアやコアを配布すればいい。
「ディーテ?」
反射的に、両手で耳を塞ぐ…… 耳鳴りがひどい。
急に室内の物が揺れ、室温が上がり始める…
「わかってるわよ。確認しただけ。そんな怖い顔しないで?」
ポセイドンが初めて見せた...怒りの表情。
愛することを愛す…… 彼のドクトリンに反する未来を予見したのだろうか。
「まったく。冗談はやめるじゃん? 要は、力の使いようだろ?」
「うむ。力に溺れる者は、この場にはいない」
トールと師匠の言葉で、ポセイドンの表情がやわらいだ。
ポカリとポセイドンを小突くトールに、ポセイドンが照れ笑いを浮かべ……ディーテがごめんねと再度謝意を示した。
やっぱりこのメンバーは、とても仲良しなんだな...
「カイト、続きをお願いね」
「はい。こちらをご覧ください」
そっと現れたロココさん。
静かに<いい感じボード>を操作してくれる。
「避けるべき最悪の未来はこういう状況だと考えました」
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神々が魔法づくりを競い合い、信仰心を奪いあう。
↓
それに星の住民が巻き込まれて、犠牲になっていく。
↓
徐々に、より強力な魔法を住民が願うようになる。
↓
神々の魔法づくりが更に熾烈になる。
↓
更に強力な魔法が、より多くの質的信仰心を集めることになる。
↓
最初に戻り、以下ループ……
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「オレたちはこのサイクルを、合理的に、根本から破壊する必要があります」
「同意するわ」
ディーテの言葉に、神々が続けて賛成の言葉をくれた。
「つまり、目を付けるべきポイントは……」
「スタート地点だね」
「そうです。神々の競争を生み出さない仕組みを作る必要があります」
「カイトが、その案を考えてくれたの」
「興味深いね。さっそく教えてもらえるかい?」
「はい……」
これが受け入れられなかったら、どうしようか。
新米の神である自分のミスで生じた問題である。
そんなやらかしたヤツのアイデアなんて、受け入れてもらえるだろうか?
「大丈夫よ」
イブ姉さんが、そっと背中を撫でてくれる。
そのぬくもりの力を借りて、大きく一つ、深呼吸をして… 結果がどうなっても受けいれる覚悟を決める。
「まず各種族の地にも、ダンジョンを設置します」
「それで?」
「そこでしか手に入らない魔法を、皆さんに創ってもらいます」
「…… なるほど」
ポセイドンは、早くも何かを察したようだ。
興味深そうに、何度も頷いている。
「そのダンジョンには、異種族混成パーティでしか入れないようにするわけね?」
「はい。そう考えます」
ディーテさんも、察したようだ。
神々、さすがである。
「クリアされたら、その魔法は、パーティの全員の手に渡るわけだな?」
「はい、師匠の推察通りです。配分機会の均等化です」
まず、神々が創る魔法の配布機会を平等にする。
「じゃあ、使用機会の均等化は?ここが大事じゃん?」
クリアされたダンジョンの魔法だけが使われると困る。
使用に偏りが出るからだ。
「合体魔法にします」
「へ?」
トールが、ポカンと口を開けた。
「全種族が集まって、各ダンジョンで手に入れた魔法を同時に使わないと発動しない。でもその分、とてつもない高威力の究極魔法にします」
一つ配布しても意味がない。
全種族の分が入手できないと、魔法が発動しないからだ。
「のった!」
まっさきに、師匠が同意してくれた。
その大きな声で、オレの不安が吹き飛んでいく…
実は、師匠が一番、反対する可能性が高いと思ってた。
龍人族の英雄ラグナのドクトリンに、魔法という存在そのものがそぐわないからだ...
「君は面白いね!」
ポセイドンは、綺麗な声で歌うように、高らかに笑った。
「自分で切り開いたルールに、自分で縛りをかけるなんてね」
「はい。そうなりますね」
「どの種族でも魔法を使えるのに、全種族がそろわないと使えない強力な魔法か」
「それに、これで競争するより、協力する方がメリットが大きくなるわ」
「神々も星の住人達も…… ね」
「はい。5人の神による究極魔法に、一人の神の魔法が勝てる可能性は低い」
「なら、利益の独占をあきらめて、協力する方が信仰心獲得というメリットが見込める」
「星の住民も同じね」
「そうなります」
ここは、ゲーム理論を応用して考えたアイデアだ。
「それに、究極魔法は、種族同士の争いには使えないわ」
「えぇ。自種族同士の攻撃に該当するため、発動しません」
ここは、イブ姉さんと丁寧に議論した点だ。
究極魔法が種族間の争いに使われては、本末転倒だから。
「じゃあ、その究極魔法を受けて立つ敵は誰か?」
ニンマリと、ポセイドンが神々を見渡す。
「オレらじゃん!」
そうだ。
ここで、マッチとポンプである。
自分たちで火をつけて、自分たちで消火を助け、メリットを得る。
火をつける。
この場合は、究極魔法を手に入れて戦う必要のある強大な敵になること。
消化を助ける。
この場合は、究極魔法の入手や発動で種族間の協力や成長を促すこと。
メリット。
この場合は、信仰心と平和の到来というメリットを得ること。
平和の到来は、星の住民にとってもメリットだ。
「でも、一つ問題が残されています」
「……まったく。君は謙虚だね」
「魔法のシステムは、カイトの功績じゃん!」
「そうよ」
「うむ。今使われてる魔法で恩恵を受けるのは、当然、ヒュムの神樹でいい」
「フフ。虐げてきた種族の神々からのお詫びだと思えばいいのよ?」
「……ありがとうございます」
頭を下げてお礼を伝える。
ロココさんがタオルをくれて、ディーテさんが優しく抱きしめてくれる。
涙が止められない…
無自覚だったとはいえ、これは大失態だ。
世界を巻き込む大きな戦争、神々の闘争を招きかねないミスを犯した。
でも、皆、前向きに捉えてくれている。
協力してこの問題を乗り越えようとしてくれている。
かっこいい兄ちゃんに勇気づけられ、優しい姉ちゃんに励まされている……
オレは、幸せ者だ。
でも……
本当に甘えっぱなしでいいのかな...
ありがとうございました!!
拙いSSを読んでもらえて、ありがたいです。




