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マッチとポンプで異世界神様業  作者: ゆうと
第Ⅲ部:武術大会編
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第46話:神々の会議風景


魔法トラブルの問題解決編、久々にあの仕組みが登場です。

 



「結果の可能性2、ヒュムの神樹が特に成長していた……か」


 ポセイドンさんが頷き、会議室に静寂が訪れる。




「なるほどね。ここまでの話は理解したよ」

「確認よ?」

「ディーテさん、どうぞ」

「現在、主に魔法を使っているのはヒュムと獣人、竜人なのよね?」

「そうなの…… 」


 ディーテさんの問いをイブさんが拾い、説明を先に進める。



「神器によれば、各種族の神樹に著しい変化はない……平均の誤差内よ」

「魔法で得られた質的信仰心が全て、ヒュムの神樹の成長に回った?」

「えぇ。その可能性が高い」

「つまり、こういうことじゃん?」


 トールが、真顔で確認する。



「魔法を使った種族の神樹じゃなく、その魔法を生み出した神が管理する神樹が育つ」


 …… その通りだ。




「念のため、試してみたの」

「はい。イブさんにもダンジョンギアへのアクセスを認め、実験しました」


「私の創った魔法コアを100人のヒュムに配布したわ」

「サンプルが少なく、結果はまだ確定的ではないのですが……」

「ヒュムは全員、私の創った魔法もダンジョン外で使えたわ」


「神樹は?」

「エルフの神樹に微量の増加傾向ありよ」

「なるほど。そうなると……」

「えぇ。エルフの私が、魔法でヒュム族の願いを叶え、エルフの神樹を育んだ」


 ポセイドンが天井を見上げて、大きく息を吐いた。

 これまでの常識が壊れたのだから、気持ちはわかる。


 無自覚とは言え、オレのせいだ……



「ご迷惑をおかけして申し…「カイトは悪くないじゃん!」」


 トールが謝罪を遮り、大きな笑顔を向けてくれる。

 ニシシっといつもどおりに笑う姿に、裏表のなさを感じる。


 安心のあまり、少し涙がこぼれた。



 そしてポセイドンが、短い間だけど…… でも確かに、歌ってくれた。

 それでスッと、気持ちが和らいでいくのを感じる。



「どう? 落ち着いたかい?」

「はい。ありがとうございます」

「休憩しようか?」

「大丈夫です。続けてください」


「じゃあ再開するね」

「はい!」


「まず、魔法によって、全守護神が他種族の願い事に干渉可能だということ」

「うむ。それが自分たちの神樹に利益をもたらす」


「もし私たちが魔法を多様な種族に配布すれば…」

「使用されるだけ自分の神樹が成長していくじゃん?」




 そうとも言える。


 しかし……




「フフフ...誰が一番使用頻度の高い魔法をつくるかしら?」


 ディーテさんの呟きに、神々が目を見開く。



「あら…… そういうことでしょ?」


 そうだ。

 神々が魔法づくりを競い合う可能性が生じたわけである。

 各々がダンジョンを設置し、自作したギアやコアを配布すればいい。



「ディーテ?」


 反射的に、両手で耳を塞ぐ…… 耳鳴りがひどい。

 急に室内の物が揺れ、室温が上がり始める…




「わかってるわよ。確認しただけ。そんな怖い顔しないで?」


 ポセイドンが初めて見せた...怒りの表情。


 愛することを愛す…… 彼のドクトリンに反する未来を予見したのだろうか。




「まったく。冗談はやめるじゃん? 要は、力の使いようだろ?」

「うむ。力に溺れる者は、この場にはいない」


 トールと師匠の言葉で、ポセイドンの表情がやわらいだ。

 ポカリとポセイドンを小突くトールに、ポセイドンが照れ笑いを浮かべ……ディーテがごめんねと再度謝意を示した。


 やっぱりこのメンバーは、とても仲良しなんだな...



「カイト、続きをお願いね」

「はい。こちらをご覧ください」


 そっと現れたロココさん。

 静かに<いい感じボード>を操作してくれる。



「避けるべき最悪の未来はこういう状況だと考えました」



 ===========================


 神々が魔法づくりを競い合い、信仰心を奪いあう。

 ↓

 それに星の住民が巻き込まれて、犠牲になっていく。

 ↓

 徐々に、より強力な魔法を住民が願うようになる。

 ↓

 神々の魔法づくりが更に熾烈になる。

 ↓

 更に強力な魔法が、より多くの質的信仰心を集めることになる。

 ↓

 最初に戻り、以下ループ……


 ===========================




「オレたちはこのサイクルを、合理的に、根本から破壊する必要があります」

「同意するわ」


 ディーテの言葉に、神々が続けて賛成の言葉をくれた。




「つまり、目を付けるべきポイントは……」

「スタート地点だね」

「そうです。神々の競争を生み出さない仕組みを作る必要があります」


「カイトが、その案を考えてくれたの」

「興味深いね。さっそく教えてもらえるかい?」


「はい……」


 これが受け入れられなかったら、どうしようか。

 新米の神である自分のミスで生じた問題である。


 そんなやらかしたヤツのアイデアなんて、受け入れてもらえるだろうか?



「大丈夫よ」

 

 イブ姉さんが、そっと背中を撫でてくれる。

 そのぬくもりの力を借りて、大きく一つ、深呼吸をして… 結果がどうなっても受けいれる覚悟を決める。



「まず各種族の地にも、ダンジョンを設置します」


「それで?」

「そこでしか手に入らない魔法を、皆さんに創ってもらいます」

「…… なるほど」


 ポセイドンは、早くも何かを察したようだ。

 興味深そうに、何度も頷いている。



「そのダンジョンには、異種族混成パーティでしか入れないようにするわけね?」

「はい。そう考えます」


 ディーテさんも、察したようだ。

 神々、さすがである。



「クリアされたら、その魔法は、パーティの全員の手に渡るわけだな?」

「はい、師匠の推察通りです。配分機会の均等化です」


 まず、神々が創る魔法の配布機会を平等にする。



「じゃあ、使用機会の均等化は?ここが大事じゃん?」


 クリアされたダンジョンの魔法だけが使われると困る。

 使用に偏りが出るからだ。




「合体魔法にします」

「へ?」


 トールが、ポカンと口を開けた。



「全種族が集まって、各ダンジョンで手に入れた魔法を同時に使わないと発動しない。でもその分、とてつもない高威力の究極魔法にします」


 一つ配布しても意味がない。

 全種族の分が入手できないと、魔法が発動しないからだ。



「のった!」


 まっさきに、師匠が同意してくれた。

 その大きな声で、オレの不安が吹き飛んでいく… 


 実は、師匠が一番、反対する可能性が高いと思ってた。

 龍人族の英雄ラグナのドクトリンに、魔法という存在そのものがそぐわないからだ...




「君は面白いね!」


 ポセイドンは、綺麗な声で歌うように、高らかに笑った。



「自分で切り開いたルールに、自分で縛りをかけるなんてね」

「はい。そうなりますね」

「どの種族でも魔法を使えるのに、全種族がそろわないと使えない強力な魔法か」



「それに、これで競争するより、協力する方がメリットが大きくなるわ」

「神々も星の住人達も…… ね」


「はい。5人の神による究極魔法に、一人の神の魔法が勝てる可能性は低い」

「なら、利益の独占をあきらめて、協力する方が信仰心獲得というメリットが見込める」

「星の住民も同じね」

「そうなります」


 ここは、ゲーム理論を応用して考えたアイデアだ。




「それに、究極魔法は、種族同士の争いには使えないわ」

「えぇ。自種族同士の攻撃に該当するため、発動しません」


 ここは、イブ姉さんと丁寧に議論した点だ。

 究極魔法が種族間の争いに使われては、本末転倒だから。




「じゃあ、その究極魔法を受けて立つ敵は誰か?」


 ニンマリと、ポセイドンが神々を見渡す。




「オレらじゃん!」


 そうだ。

 ここで、マッチとポンプである。

 自分たちで火をつけて、自分たちで消火を助け、メリットを得る。



 火をつける。

 この場合は、究極魔法を手に入れて戦う必要のある強大な敵になること。


 消化を助ける。

 この場合は、究極魔法の入手や発動で種族間の協力や成長を促すこと。


 メリット。

 この場合は、信仰心と平和の到来というメリットを得ること。

 平和の到来は、星の住民にとってもメリットだ。




「でも、一つ問題が残されています」

「……まったく。君は謙虚だね」

「魔法のシステムは、カイトの功績じゃん!」

「そうよ」

「うむ。今使われてる魔法で恩恵を受けるのは、当然、ヒュムの神樹でいい」

「フフ。虐げてきた種族の神々からのお詫びだと思えばいいのよ?」


「……ありがとうございます」


 頭を下げてお礼を伝える。


 ロココさんがタオルをくれて、ディーテさんが優しく抱きしめてくれる。



 涙が止められない…

 無自覚だったとはいえ、これは大失態だ。


 世界を巻き込む大きな戦争、神々の闘争を招きかねないミスを犯した。



 でも、皆、前向きに捉えてくれている。


 協力してこの問題を乗り越えようとしてくれている。

 かっこいい兄ちゃんに勇気づけられ、優しい姉ちゃんに励まされている……


 オレは、幸せ者だ。



 でも……

 本当に甘えっぱなしでいいのかな...





ありがとうございました!! 

拙いSSを読んでもらえて、ありがたいです。 

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