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マッチとポンプで異世界神様業  作者: ゆうと
第Ⅲ部:武術大会編
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第48話:土地神との日常風景

土地神たちの、ダンジョン改装風景です。




 


 さて。 


 オレの通常営業がターニャを背負った状態になるなか、各土地神はというと、徐々に神威を回復しているようだ。

 管理するダンジョンが軌道に乗りつつあると、報告を受けている。

 攻略者が出たため、現在はダンジョン再開に向け停止中。

 

 

 メンテナンスと、改修作業を進めている。



 

 そうそう。

 彼らが管理しているのは、育成ダンジョンである。


 =================

【育成ダンジョン:魔法ジョブと精霊召喚】

 1.挑戦条件:意欲のある人4人以上のパーティ

(希望の里のような地域密着&挑戦者の出身地還元型ダンジョン)

 2.設置状況:各種族の領土に、人口を考慮しつつ複数設置

 3.予定時期:稼働中(ヒュムは土地神の力を借りて)

 4.備  考:各守護神が、各自の従属神を手配して稼働

 =================




 ジョブをチェンジし、魔法と精霊召喚の習熟度を高めることが目的だ。



 序盤が、ダンジョン挑戦のチュートリアルのようなトラップフロア。


 中盤は、ダンジョンギアとコアを用いたバトルの練習フロア。


 終盤が、精霊召喚や、魔法を用いたパーティプレイの練習フロア。


 だいたい30階層で、3~5層ごとに、スフィンクスさん登場である。


 

 この基本コンセプトのもと、各神の意向を踏まえて、カスタマイズを進めているところだ。

 このあたりの調整を進めてくれる、ロココさんと各眷属代表者の有能さ。実にありがたい。主の神々にも、ぜひ、見習ってもらいたい...




「アポロンさんのダンジョンは、花畑と神殿がコンセプトのようです」

「ヒヤシンスかぁ……」


 やっぱりね。そんな気はしてた。

 

 ヒュアキントスという美少年を失い、アポロンが嘆き苦しんだという逸話は、転生前の世界では、とても有名だった。イケメンの神アポロンは、恋多き神でもあり、男女を問わず美しいものを愛したという。



「…… あれ?」


 そう言えば、初対面で、オレを気にいったと言ってたような…

 まぁ、気のせいだろう。オレはイケメンでも美少年でもない。気のせいだ…



「神殿型のダンジョンっていうのも、面白い」


 オレが好きな転生前の神話(漫画)の一つに、戦うための衣を身にまとった少年たちが、12個あるギリシア風の神殿を巡り、バトルを展開する物語があったっけ。


 ダンジョン内に設置した38本の柱に囲まれた広場が、特にユニークだ。ここは、挑戦者たちに神託を与える場になっている。神託、つまり予言だ。



 うん。

 要するにここで……


「アポロンが気にいるかどうかを判断してる件…」


 祈りを捧げた冒険者が気にいれば、よい予言を授けているようだ。

 【頑張るが吉と出た】【右側の通路にて探し物見つかる気配濃厚】とかである。




「意外と闇が深い神ですね……」


 まったくである。

 

 アポロン、気に行った冒険者を優遇する気なのだ。アイテムをたくさん与えたり、ヒントをたくさん出したりする計画だったのだ。

 そこで、「お気にの冒険者がより成長できる方向で甘やかしてあげてね」とお願いしたところ、「OK、さすがボス」と納得して頂けたのである。


 敵(眷属さんたち)は、美しい天使っぽい人や、古代のグラディエーターっぽい感じの方々である。

 ちなみに、眷属の皆さんについては、現在、ダンジョン内でのおしゃべり禁止にしてある…

 皆さん、性とか恋愛とかに興味津々なので、うっかり恋バナで挑戦者と盛り上がってしまう可能性があるからだ...





「次は、シヴァっちのダンジョン…」

「はい。ドクロドクロしくて、何かとトゲトゲしてますね」


 こちら、売れないヘビメタバンドの衣装のようなダンジョンである。


 しかもなぜか、ダンジョン内に、ウォータースライダーが設置されているのだ。

 どうやら、とてつもなく気に入ったようである。


 まぁそれはいいのだが……「ウォータースライダー滑ってるだけでダンジョン攻略とかはやめてね?」ってお願いしたら、ビクっと肩を震わせて「大丈夫だってカイトっち!」と、なぞのハイタッチを仕掛けてきた。うん…… 釘を刺しておいてよかった。


 登場する敵(眷属さんたち)は、転生前の世界でいうと、ミノタウルスやガネーシャ、メデューサのような半獣半人っぽい方々だ。皆さん、毒を吐いたり体を部分石化させたり、混乱やマヒをもたらしたりと、曲者ぞろいである。

 そしてもれなく、ドクロドクロしくて、トゲトゲしい姿でいらっしゃる…




「オロチくんのダンジョン、デザイン改良されたね」

「カイト様のおっしゃりたいこと、お察しします」

「……ありがとう」

「本当に、控えめになりましたね」

「そうだね……」


 本当によかった......


 オロチさんのダンジョン、やかましかったのである。

 立て看板や案内が乱立し、部屋の中が文字や記号でガヤガヤしていた。「あと3層でスフィンクスさん登場」「残り16階」「右手と左手の通路で報酬が違います」「足元にご注意ください」「次の部屋の敵は強いです」などなど、挑戦者がクリアしてくれるように、真面目に、懇切丁寧に、注意書きや案内表示があちこちに…


 これではまずいと思い、オロチさんと個別面談を実施した。「迷ったり、悩んだりしてもらってもいいんだよ。引き返したりする勇気や決断力を育むことも大事だし」と伝えたところ、「わかりました。必ず迷ったり、悩んだり、引き返したりするダンジョンにします」「いや、そういうことじゃなくてね?」「ではどういうことでしょう??」……となった。



「案内や看板は、各フロア1つまで。20字以内のものとする」

「うん。あとネタバレ系の注意書きは禁止」


 この指針で、かなり落ち着いたのである。


 しかし、オーソドックスな塔型のダンジョンとなった。意表を突くような罠もあるものの、階層を進むごとに、パターンがわかるのだ。複雑性に乏しいとも言えるが、初心者ばかりのパーティには、好評なダンジョンになるだろう。


 ただし、注意が必要である。


 出てくる敵(眷属さん)は、ほぼほぼ龍なので、たいへんお強いのだ。





「ツクヨミさんかぁ」

「……まっくらなダンジョンですね」

「うぉ!?」

「ひぃっ!?」


「……見てるだけでびっくりする」

「おっしゃる通りですね」



 そう… もはやこれは、お化け屋敷である。


 光の侵入を許さず、登場する敵(眷属さん)も、死神っぽいのやゴーストっぽいの、骸骨の剣士さんや狼男さんなど、暗いところを愛していそうな方々がいっぱいなのである。


 フロアも、大部屋が多い。次々に湧き出てくる眷属さんたちを片っ端から倒しまくるという、考え方によっては痛快な仕様だ。部屋の敵を全部倒すと、照明が付き、次の部屋への扉が開く。たまに、強敵の中ボスっぽい敵(眷属さん)と、激熱バトルも楽しめるのだ。


「でも、考えようによっては一番ワクワクするかも」

「おっしゃる通りですね」






 そして…… 希望の里の洞窟の(超大物残念)女神のダンジョンだ。

 アマテラを部屋に招いて、現在検討中のデザインを<いい感じボード>で確認してみる。



「僕のセンスをみるといいよ!」


 自慢たっぷりの女神が出してきた設計図を見て、がく然とする……



「却下で。いったん全部リセットで」

「承知しました」

「なっ!?!!?」


「アマテラ、真面目にやってくれる?」

「何がダメだと言うんだい!僕が納得できるように…」

「むしろ聞きたい。なぜこれでOKだと思ったのか……」

「僕に相応しいじゃないか!」

「そういうことじゃないんだよ!!」



 アマテラのダンジョン。

 ほぼほぼ、桜餅工場である。


 攻略者に桜餅を量産させようとしているようだ。調理室やベルトコンベアーみたいなものが、並んでいる。桜餅を10個作って供えたらフロアをクリアとする! といったミッションばかりだ。

 


 …… 残念さここに極まれり。


 ちなみに眷属さんたちは、作業監視員のようなスーツとのこと。




「サクヤさん、全部任せるから作り直してくれる?」

「すでに用意しております。こちらをご覧ください」

「おぉ…」


 サクヤさん。

 ロココさんのところに出向中の、アマテラの眷属さんである。たいへん有能で、ダンジョンに関するレポートや要望書を取りまとめてくれていたのも、このサクヤさんなのだ。

 

 美人家庭教師っぽいルックスと言えば、伝わるだろうか...

 サクヤさんが、クイっと右手で眼鏡を調整し、アマテラを見つめてため息をついた。



「サクヤ!?僕を裏切るのかい?」

「アマテラ様、ダメなものはダメなんです。考えてください」

「なっ!?」

「これは工場です。ダンジョンではありません」

「でも……」

「でも…… 何か?」


 冷たい眼差しがアマテラを突き刺す。

 超大物女神、一瞬でフリーズである。なんとも恐ろしい、美女のひと睨み……



「いや、そう言えばサクヤが正しい気がする」

「アマテラ様ならご理解頂けると思っておりました」

「そうだろ?僕は寛容なのさ」

「それは寛容とは言いませんが。まぁ、いいでしょう」


 サクヤさんが、盛大にため息をついて......


 室内が沈黙に包まれる。






「あ、泣くでしゅ」


「ベルちゃん、しぃー!」


 

 泣くのはもちろん、ターニャではない...






ブクマ、ありがとうございます! とても励みになりました。

読んで下さっているみなさんに、大感謝です。

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