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マッチとポンプで異世界神様業  作者: ゆうと
第Ⅲ部:武術大会編
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第39話:神々との契約風景

 


「今日はお集まりいただきありがとうございます」


 神々を会議室に案内して、着席してもらった。

 ロココさんに手伝ってもらいながら、神殿増設の神権でつくった会議室である。



「本日お越しいただいたのは、お願いしたいことがありまして… 」


 アマテラさんの友だちはこの4神しかいない… つまり、断られてはこちらが困る状況にいつの間にか立たされているわけである。



「そこは大丈夫さ。すでに全員、君の軍門に降ることは受け入れている」

「え!?そうなの??」

「僕の姿を見たら、それはそうなるよ」


 アマテラさんが神威を解放して、美しい炎と闇のオーラを周囲に広げて見せた。また一段と神威が強くなったようで、本人やオーラの煌めきが、見るものを魅了する。



「これだけの神威を楽して得られるぞと言ったら、皆、即決だったよ」


 ドヤ顔美少女の説明に、全員、頷いている。



「なるほど。じゃあ、取引について説明します」

「その前に、いいかな?」

「はい、アポロンさん」

「君が僕らのボスだよね? それとも創造神? 」

「直接的にはオレです。社長(そうぞうしん)とはオレも会ったことはありません」

「なるほど。取引内容はカイトからの提案って理解でいいね?」

「その通りです」

「OKボス、続けてくれ」


 アポロンさんて、恋愛トーク以外は、すこぶる常識神なんじゃないだろうか。評価を上方修正しておこう。



「皆さんの信仰心獲得に関する仕組み(システム)は、この通りです」


 やはり使える<いい感じボード>。

 そして、近未来っぽくてカッコいい。何回操作しても、SFっぽさにテンションが上がる。



=======================


【ダンジョンの壁に皆さんの壁画を彫る →ダンジョンにヒュム族集まる →敵役の眷属さんとバトルでヒュム成長 & ダンジョン報酬! → 恩恵は挑戦者の集落全体に →ヒュム族皆さんに感謝! →量的信仰心獲得! →皆さん神威回復 or Up? →眷属さんも大喜び?でやる気Up →敵役の眷属さんとバトルで…(以下ループ)】


=======================



「……………(確かに楽)」


 ツクヨミさんからボソボソ声で賛成頂きました。

 実質的には、何もしなくていいわけだ。頑張るのは皆さんの眷属さんたちだしね。

 

 ただ、この仕組みには、各神の価値観なんかを教義にして伝えたり、ヒュムに守らせたりすることを組み込んでいない。自分と価値観を共有するお仲間集団を生み出したい!統治したい! って願望が、もしこの4神にある場合は、納得できないだろうな。



「ボスのドクトリンがわかってきたよ」

「ドクトリン?」

「そうさ。信者に対する神の基本スタンスだよ」

「アポロン、カイトは寛大なんだよ。そこがいいのさ」

「確かに器がでかい。恐れ入るね」


 アポロンとアマテラのやり取りに、他の神々も頷いている。


 どうしよう…… これ、聞くにきけないパターンだ。

 この会の主催者で、本件の提案者でもあるオレだけわかっていないパターンだ。


 あとでこっそり、アマテラに教えてもらおう。オレのドクトリンってやつを……



「信仰心は半々だっけ?」

「シヴァっち? って呼んでもいいのかな? その理解でOKです」

「いいよシヴァっちで! オレもカイトっちって呼ぶし!」

「助かるよそのノリ!」


 テーブル越しにハイタッチする。


 シヴァ神って、オレのいた世界だと、インドの最強神に数えられるお一人だったような気がする。まぁ、ちいさなことは気にしない。気にしないったら気にしない…



「で、この取引内容をオレらが破ったら、どうする気なの?」

「え!? ……っと」


 軽いノリで、非常に重要なところをご指摘になる。神々、やはりあなどれない…

 しかも、意表を突かれたせいで、何も考えていなかったことがバレバレのリアクションである。


 こういう時は、正直が一番か。 


 シヴァ、アポロン、ツクヨミ、オロチの順で、しっかりと視線を合わせる。



「罰は考えてない。皆を信じるよ」


 シヴァっちがポカンと口を開けながら、周囲の神々とアイコンタクトをとった。多分、こいつまじか? って心の声で語りあってるんだろうな…



「でも、それでもがオレっちが……」

「シヴァ? それは僕と1000年に渡るゴッドウォーズ(神々の闘争)がしたいという申し出かい?」


 アマテラさんがユラユラと神威を解放する。



「それはそれで楽しそうだな?」


 シヴァっちも、どうやら戦闘民族のようである…



「二人とも戯れはそのへんにしときなよ?」

「……………(バカ神×2)」


 アポロンとツクヨミさんのボソボソツッコミで、アマテラとシヴァっちが爆笑する。

 またも、主催者が付いていけてないパターンである。



「我ら神は、信じられるという行為に本質的に弱いのです」


 何かを察したオロチくんが説明してくれるようだ。助かります…!

 まじめすぎて逆に不安とか思ってすいませんでした。



「カイトさんは、神々の弱みを突き、この場を平定されたとも言えます」

「なるほど」

「同時に、無計画にこれだけの神々を集めた愚かさも明らかにされました」

「すいません」

「シヴァっちはその点に驚き、‘マジかよコイツバカじゃね?’と念話を送ってきました」

「オロチっち!なにバラして…」

「それに対してアマテラさんは………っが……でバ…き…」


 オロチくんの暴露を、アマテラが両手で口をふさぎ留めようとしている。


 しかしオロチくん、手で塞がれながらも最後まで言い切る。さすがの真面目さだ。

 時おり漏れてくる言葉で、なんとなくアマテラが、オレのことをバカ正直とか何とか念話で返したことが察せられる…


 それにしてもオロチくん。

 平等に全てを切り裂いていく真面目スタイルは、信頼に値する。評価を上方修正だ。


 けれども、そのお言葉&暴露に、オレはもうダウン寸前だ… 神体なのに。本音だと分かるから、ダメージが大きい。

 そもそも、オレじゃなくてアマテラが集めたんだけど。悪いのはコイツなんだ! と反論したいけど、それはあまりにもカッコ悪いので止めておこう… 後で桜餅禁止令を出してやるけど。

 バカ何とかって念話で返したという容疑の件もあわせて、絶対に禁止してやる。 



 まぁ、ここでふてくされるのも、神としてカッコ悪い。

 空気を変えていこう…



「気を取り直していこうじゃないか!」

「さっすがカイトっち。わかってるー!」


 テンション高めで、ハイタッチ。

 こういう時に、ノリの軽いキャラがいてくれるのはありがたい。

 シヴァっちの評価も、上方修正である。



「確かに土地神は、信じられることで生まれたゆえ、信じられることに弱い」

「その分、裏切り者には苛烈な対応をとる。これも僕ら土地神の本質だね」

「なるほどなぁ」


 アポロンとアマテラの説明に、納得がいった。

 たしかに、転生前の世界に残されていたエピソードには、そういった神の二面性を示すものが多かった。



「それに、我らはすでにカイトさんの軍門に降ると創造神に祝詞を述べて、この社への参拝を許可されております」

「そっか。アマテラも、最初にそう言ってたっけ」

「軍門に降った以上、カイトさんは我らの上位神。我らは基本的にあなたを害することはできません」


 オロチさんが告げると、残りの神々も同意を示した。



「そうなの?」

「そうだよ?」 


 アマテラを見つめると、何をいまさらという感じで答えが帰ってくる。

 絶対、内緒にしてたくせに…



「じゃあ、アマテラ。桜餅3日間禁止で」

「なっ!?」


 アマテラは超大物女神だけどオレを害せない……っと。

 心にメモして、忘れないようにしよう。



「ところでオロチくん。基本的にって?」

「上位神でも、我らを無抵抗のまま滅ぼしたり、滅べと命じたりすることはできません」

「なるほど。上位神に存在を害される場合は、反抗OKってことだね」

「……………(正式な決闘を受託した場合も別)」

「補足ありがと、ツクヨミさん」


 だんだん、聞き取れるようになってきたよ。そのコソコソボイス。



「ってことだから、カイトっちからの命令があれば、従うよ?」


 シヴァっちが、急に真面目な表情になった。


 ダンジョンの管理に協力してくれること、そしてヒュムに危害を加えないこと、彼らのやろうとしていること邪魔しないこと…… 考えれば、たくさんある。


 そうだよ。忘れてた。

 ダンジョンを通して、自分が何をしようとしているのか。

 ビジョンを神々と共有しておかないといけない。


 <いい感じボード>に、オレが立てている問いを映し出す。



=======================


 皆と出会うまでのオレの問い


【オレやロココさん、ヒュム族の人々の健康や幸福を守りつつ、

 任務(神様業)を果たすには、何を、どうすればよいのだろうか?】


 +++ +++


 今日からのオレの問い


【オレやロココさん、協力してくれる神々、

 そしてヒュム族の人々の健康や幸福を守りつつ、

 任務(神様業)を果たすには、何を、どうすればよいのだろうか?】


=======================


 変更後の問いを表示し、神々に語りかける。



「ヒュムは虐げられてきた。彼らに自由を掴む力をはぐくみたいんだ…」


 自分が何を目指したいのか...

 これを語ることは、なかなか気恥ずかしい。 



「ダンジョンは、ヒュム族全体が心身ともに健康であるための、自己の手で幸福をつかむ意思を持つための、知・徳・体といった力を高めて自分たちを守る力を手に入れるための、舞台なんだよ」


 ダンジョンづくりをオレが楽しみたいっていう気持ちも働いてはいるけど、それはオレやロココさんの幸福に該当する部分なので、許してもらうことにする。



「そして、君たち協力してくれる神々にも、心身の健康と幸福とを手にする舞台であってほしいと思ってる」


 神々は、少しだけ驚いた顔をした。



「この舞台が、真逆の結果をもたらすことは認められない。ヒュムたちにも、君たち神々にもだ。だから、君たちが望まないことをオレは命じたりしないし、ダンジョン管理が君たちの健康や幸福と相いれないなら、つまり、ヒュムと君たちの健康と幸福が両方成立できないのであれば、この取引はなかったことにしたい」



 ここだけは絶対に譲れないと付け加える。

 この点は、今回からダンジョンの管理を任せるアマテラも同様だ。



 ここで少し、間をとる。

 神々にも、考える時間は必要だろうから。



「このビジョンの実現に沿うのであれば、君たちを束縛したり、命令を出したり、迫害したりはしない。自由にしてもらいたい。ただ、君たちも同じように、ヒュムを束縛したり、何かを命令したり、迫害したりしないでやってほしいんだ」


 さて、どうなるか……


 自分の信者を好きに扱うことに幸福を求める神がここにいたら、【オレやロココさん、協力してくれる土地神、そしてヒュム族の人々の健康や幸福を守りつつ】が満たせないことになる。


 残念だが、お引き取り願うしかない……




「…… やはりボスは寛大だね」

「だろ?そこがいいのさ」


 アポロンとアマテラさんの呟きが、他の神々の微笑みをもたらした。



「ボスに同意するよ」

「オレっちもそれでいい」

「………(了)」

「カイトさんに同意します」

「みんな、ありがと」


 緊張がほぐれて、椅子にペタンと座り込んでしまった。

 情けない姿かもしれないけど、これだけの超大物神々と交渉しているのだから、許してほしい。


 


「同意を得られたようなので、このままダンジョンについて説明するね」

「…………(理解、眷属)」


 ツクヨミさんが、ボソボソとキーワードを2つ挙げた。

 これは、どういうメッセージだろうか?



「仕組みは理解できたし、ボスのドクトリンもつかめた。詳しいことは、眷属に話してやってほしいってことだよ」


 アアポロンが補足してくれて、ツクヨミさんの言おうとしていることがわかった。



「じゃあ、そうさせてもらうよ」


 実務レベルのことは、当事者に話した方がはやいか。 



「あと、眷属から要望があるかもしれないが、無理のない範囲で叶えてやってもらえるとありがたい」

「そうだね。わかった」

「部下の要望を叶えるのは、本来なら上司の役目なんだけどね…」


 アポロンが察してくれと言わんばかりの仕草で、困った表用を浮かべている。


 そっか。

 信仰が薄れてしまったせいで、今の彼らは、神威が下がり、神体が弱まっているのか。強大なエネルギーを伴う神権の発動に、神体が絶えられない状態なんだろう。


 あれ?

 そうなら、アマテラさんはもう、自分の眷属の要望を、自分の神権の範囲で叶えられるはずじゃ… でもそうか。ダンジョンのマネジメントはオレがしてたから、アマテラの眷属たちはオレに報告書をあげて、彼らの要望を伝えてきていたんだろうな。


 決して、アマテラがサボっていたわけではないと信じたい…




「管理のお礼に、君たちのダンジョンに、オレの神権で眷属や君たちが住める社を増設するよ」


 神々の表情が、かなり明るくなった。

 現在、彼らがどこに住んでいるのかわからないけど。色々と不便な思いをしているのかもしれない。



「あと、ダンジョン管理に必要な物資なんかで、困ったことがあれば教えてほしい」

「さっすがカイトっち!わかってる!」

「あと、連絡役を務める眷属を1名、オレのところに派遣してもらえない?」

「なるほど。僕は構いません」

「オレっちもOK」

「…………(可)」

「アポロンは?」

「OKだよボス。ただ、僕の眷属は変わってるからね。気を付けて」

「変わってるとは?」

「まぁ、会えばわかるよ。ボスに迷惑をかけるなと言ってはおくさ」

「わかった。よろしくね」

「じゃあ、各自のダンジョンを用意するまで、しばらく客人ということで、家でのんびり過ごしてほしい。各自の部屋と、眷属たちが集まれる空間を増設しておくから、何か配慮不足があったら教えて」



 以上で、会議は終了である。

 

 ロココさんが後ろから、ねぎらいの拍手を送ってくれた。

 さすが相棒だ。こういう配慮に癒されるんだよ。



「ボスの寛大さと心遣いに、心からの感謝を」


 アポロンに続き、皆、口々に礼を述べてくれた。個性豊かではあるけど、いい神ばかりでよかった。


 この出会いをくれたのはアマテラなので、仕方ないが禁止令は解除しようか...



「アマテラ」

「……何だい?」

「ロココさんとダンジョンの準備に入るし、結構時間かかるだろうから、その間、皆をもてなしてほしいんだけど…」

「…… 」


 リアクションがない。ご機嫌斜めである…



「そっか~、やってくれないか~」

「………… 」

「桜餅やお菓子なんかを用意するから、食べ方とか、皆に色々と実演して教えてやってほしかったんだけどなぁ」

「やるよ!任せてくれ!僕が適任だよ!」


 わかりやすく、たいそうなやる気をだした女神に苦笑しながら、皆で会議室を後にした。



 その後、アポロンの気をつけろといった眷属が、要するに性や恋に興味津々のいかついおじさんのことだと分かり、かつてないほど心にダメージ(ストレス)を受けることになったのだが、この話は誰も得をしないので、封印することに決めている…





最後まで読んでくださりありがとうございました!


登場神物が増え、キャラを文字だけで書き分けるってたいへんなんだなぁと、実感中です。画が描けるといいんですが...へのへのもへじも歪んでしまうほどの低画力のため絶望中です…



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