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マッチとポンプで異世界神様業  作者: ゆうと
第Ⅰ部:ダンジョン創設編
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第21話:精霊召喚は世界のすべて

 

 火傷少年がレアコアを見事に解放した。

 そのまま呼び出すもの(召喚士)へとジョブを変えて……すぐさま召喚の儀式に入っていく。


「炎と闇を贄に開くは精霊の社。欲するは焔の…」

 モニターの中では、少年による詠唱が続いている。

 あの火傷少年が、炎の精霊召喚をめざすとは……ちょっとだけシュールな気もするけど。

 でもどんなカッコいいことが起きるのか、楽しみで仕方ない。集落の人も初めてお披露目されるジョブに、歓声を上げている。

 わかるぞ同士たちよ…!


「上手くいくといいね。精霊は気まぐれだから。召喚に応じないことも多いんだ!」

「えっ⁉」

 何か今さらっと、とんでもないこと言った?

 そういうのは先に教えておいてくれないと。

 いや、精霊の気まぐれって、神々あるあるなのかもしれない。オレが初心者神さまだから知らないだけなのかも。

「それって常識?」

「まぁね。でも僕の炎と闇が贄なんだから、食いつきはいいはずさ! 現にほら、大物が釣れた」

 ダンジョンの空中に光の鳥居が浮かび、扉が重々しく開いていく。

 すると中央から堂々と、カッコいい虎が出てきた。

「おぉ、赤い白虎だ! やるじゃないか!」

「ん? 白虎って白じゃないっけ?」

「あれはその変異種だね。冷気と炎の両属性。かなりの上位種だよ!」

 なるほど。ガチャでSSレートのレアカードを引いたようなもんか。

 火傷少年、やっぱり君って実はすごい奴なんじゃないか?

 集落の人々も、そして敵役のアマテラの眷属たちも空気を読んで、固唾をのんで赤い白虎の動きを見つめている。

 うん。実にいい仕事っぷりだ。

 こういう時に、空気を読んで待機できるなんて。

 眷属の皆さん最高の敵役です!!


 沈黙が支配する部屋の中…… 赤い白虎が、少年に悠々と歩み寄る。

 そのまま、そっと彼の左手に赤い優雅な毛並みの体をこすりつけた。

「なるほど。あの少年はどうやら、炎と(えん)があるんだね」

「縁? あ、そういえば左手にスゴい火傷を負ったことがある」

「それだよ! 炎の価値と怖さ、つまり少年が抱く炎に対する畏怖の念を感じ取ったってことかな」

 おぉ。なんかちょっといい話だよなそれ。

「白虎は特に気高く、勇を好む。少年にもその資質を見出したんだろうね」

「なるほど。そういうもんなのか」

 姉を庇って火傷した少年。確かに、勇気があると思う。

 なかなかできることじゃないもんな。やっぱりやるじゃん。


「我は紅蓮。汝の道を切り開こう」

 その声を聞き嬉しそうに笑う少年の笑顔に、彼の姉はきっと安堵してることだろう。

 モニターの中で、少年の左手が、ふわりと敵を指さした瞬間。

 紅蓮が駆け、世界が赤く輝く……

 多分これ、神だから見えてる。ヒュムには、光ったようにしか見えてないだろうな。

 紅蓮は、とても優雅にモンスターの中央を闊歩し、小さく吠えた。その瞬間、紅蓮を中心に、周囲が焔の氷で包まれたのだ。


「あぁ……すばらしい。これは珍しいものを見た!」

 アマテラも、感嘆の声を上げている。

 大部屋は、焔色に輝く氷の世界に変化している。

 焔をかたどった赤色のクリスタルが世界を覆ってるようにも見える。とても綺麗だ。

 かわいそうなのは、アマテラの眷属たち。

 焼かれたまま、焔と一緒に凍ってる。それから小さく、細かく崩れ、空中に煌めいて消えた。

「あれって、眷属さんたち大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。ちゃんと蘇るさ。むしろ珍しい体験できたって、皆はしゃいでるよ」

「うん。なら、いいんだけども」

 なるほどわかった。

 以後、眷属さんたちの心配をするのは止めよう。超体育会系のドMさんたちだって理解した。


 それにしても、強い。圧倒的だ。

 一瞬ですべてが終わってしまう。ゲームバランス的には、崩壊状態だ。どうしたものかな。

 こちらの心配など知るはずもなくて。モニターの中で、火傷少年が右手を掲げた。

 当然のように、集落からは大歓声が挙がる。

 パーティの仲間からの労いに、嬉しそうに鼻の下をこすった少年の体から、急に力が抜けた。仲間が慌てて少年を抱きかかえる。

 集落からは悲鳴が上がり、皆、癒すものの詠唱を見守っている。

「アマテラ!」

「心配ない。精霊の神気に酔ったんだよ」

「酔った?」

「そうそう。強いオーラに触れて、ぐったりしてるだけ。でも、しばらくは動けないだろうね」

「ロココさん! 彼の身体図を表示!」

「オーダー承りました」

 ロココさんも、焦ってる。光るのを忘れているくらい、焦ってる。

 確かに、どこにも赤い表示はない…… 疲れて眠りに落ちた状態に近いか。

 精霊召喚は確かに強力だけど、使うとメンバーが一人しばらく動けなくなる。

 このあたりの使いどころをどう判断するか。彼らの成長にかかってる。使用後のパーティの状態まで含めると、ゲームバランス的には大丈夫かも。

「あの少年、僕も気に入った。加護を与えようかな」

「加護?」

「そうそう。加護加護!」

「加護もらうと、どうなるの?」

「身体強化、第六感強化、焔と闇への耐性強化、焔と闇の力の使役支援とか」

 いいことばっかりじゃん。ということは、当然……

「デメリットは?」

「そうだね。ヒュムじゃなくなるかな。寿命的にも、身体的にも」

「却下で」

「なんでだよ!」

「とにかく却下で」

 あ、あぶないとこだった。『ある日起きたらヒュムじゃなくなってたのでチート能力無双状態で取り急ぎダンジョン攻略しました』ってタイトルの神話(小説)が爆誕するところだったじゃないか。

 話題を変えよう。

 相手も変えよう。

 触らぬ神にタタリなしだ。

「そういえばロココさん、集落の収穫高が結構伸びてるんだけど?」

 世界○見得で、集落の農産品、森の恵み(果物など)などの収穫量やその推移がグラフ化される。この1か月で、これらの収穫量が急激に高まっている。今が旬の果物や穀物、野菜類だろうか。

「おそらく、アマテラ様のお力かと」

 いつの間にか二人で、餅セレクションを開いてる。

 桜餅、草餅、きな粉餅、みたらし、豆大福、あんこ餅、三色団子が、テーブルの上に勢ぞろいしている。今年の最高金賞でも決めるつもりなんだろうか?

「そうなの?」

「僕は豊穣の女神でもあるからね。当然だよ」

「そうですか…」

 力を取り戻して数週間で、大地の力爆上げですか。

 やっぱりアマテラさん、超大物女神ですよね?

「そんなことより、気になることがあるんだけど」

「どうしたの?」

「あのヒュムの集落をねらっているヤツがいるよ」

「どういうこと?」

「ダンジョンの噂を聞きつけた誰か、あるいはその手先だろうね」

 まぁ、これは想定してた。

 だからダンジョンを、目安としては集落単位で設ける計画にしてる。

「集落のある地域一帯は、僕の加護のもとにあるんだけどね」

「おい、まさか...」

「人への加護じゃないさ。大地や空間が僕の神威で満たされてるってこと」

「なるほど」

「だから、農作物や自然にもいい影響が出てるだろ? そして、雑魚には手が出せない防御結界のような機能も果たしてるよ」

「ん?ちょっと待って」

 ということは……

「そこそこ大物だろうね。まぁ、頑張りなよ!」

 どこかトラブルを心待ちにしてるような素敵な笑顔だったので、とりあえず豆大福を口に放り込んで、それ以上しゃべれないようにしてやった。

 余計なことを言って、フラグが立たないようにするための措置だ。皆の平和のためには仕方ないことなんだ。もちろん、悪意はない。信じてほしい。

『近日中に、よくないことが起こると思うよ』 

 突然響いた声に、慌てて女神の方を見れば、餅をモグモグ頬張ってる。アマテラじゃないってことか?

『僕だよ。テレパシーみたいなもんさ』

 モグモグしながら喋るんじゃありません!って注意は、神には通じないってことがわかっただけでも良しとしよう。

 それよりもアマテラ、今、オレの心を読んでなかった? 

『当然だ。僕を誰だと思ってるんだ? アマテラさんだぞ?』

 ドヤ顔で、餅をモグモグしてやがる。

 よし、決めた。出禁にしよう。

 オレの平穏のために。

 視界の隅で、出禁宣言を読み取った女神が、餅を詰まらせてる。どうか安らかに、再び眠りについてほしい。

 君のことは忘れないよ。

 


お付き合い頂きありがとうございました!

20話を超えて、マッチとポンプというキーワードも登場。ようやくタイトルに、SSの内容が追い付いてきました。

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