第20話:大物女神は自重知らず
「僕もこのスウィーツを食べてみたくてね」
ひょいひょいと、桜餅を口に運んでいく。
名前を好きにつけていいと言われたので、アマテラと呼ぶことにした。
オレが彼女を、大物女神だと思わないようにするための措置である。
「はぁ~ 甘美なることこの上無し」
うっとりと桜餅を眺めつつ、口をもぐもぐしてる。
女神さま、太りますよ…… とは口に出さないけど。千年闘争とか言われたら困るし。
でも、太るよ?
あ、神体だから大丈夫なのか。
「しかし、どうして集落の人々はアマテラのことを?」
忘れてたんだとしたら、何きっかけで思い出したんだろ。
「そのことか。あの洞窟の壁に、僕の絵が描いてあってね。古代の信仰の名残さ。その絵を見て、名も知らぬ僕をあの洞窟の神と思って崇めるようになったようだよ」
なるほどね。
壁画か。
「あの洞窟に住んでたの?」
だとしたら、勝手にダンジョン創って申し訳ない。
騒がしくしちゃったよな。
これはもう、ご近所問題だ。勝手に他人の庭に駐車場つくっちゃいました的な?
「や、引きこもってた」
ほう。
これは同士を見つけたかもしれない。ゲームのためだったりする?
「それってなんで?」
「う~ん、、、絡むのメンドいタイプの調子に乗ったウザい奴がいたから引きこもった?」
アイツ絶対僕のこと好きだったよとか、恋愛感情に無自覚な子どもか! とか、ブツブツ怒っていらっしゃる。
あぁ、アレか。
好きな女子ほどちょっかいかけちゃって、かえって嫌われるって話。
よくあるよ、うん。
でもそれって、まさか、あの有名な話じゃないよね?
「確認していい?」
「いいよ」
「あの洞窟って、天岩戸?」
「うん。そう呼ぶ者もいたね」
「あ、そうですか」
なんでも聞いてくれ友よと、笑顔全開のこの女神。
やっぱり超大物なんじゃないだろうか。
ほんと、とんでもないレベルの。
「どうしたんだい?」
「……何でもないです」
よし。
気が付かなかったことにしよう。オレの心の平穏のために。
それにオレの勘違いかもしれないし。
きっと偶然の一致ってやつだ。
たまたま転生前にも似たような神話があっただけ。神話ってほら、世界中に似たようなエピソードたくさんあるからね。そんな感じに違いない。
「それにしても勝手にダンジョンにしちゃって悪かったな」
話題をすり変えることは、生きる上で時に重要なスキルだ。
「いいよ。恩恵の方が大きいしね」
モグモグと、桜餅をエンドレスリピートされてる。
どうやらとてもお気に召したようだ。ご機嫌なうちに、色々と聞いてしまおう。これも生きる上で重要なスキルだ。
「協力してくれるって話なんだけど」
「何でもするよ?」
「何ができるの?」
色々とヤバい神権を持ってる気がする。
とんでもない神格だろうから。
「そうだね。ダンジョンギアやコアに、僕の力を付与しよう」
「炎と闇だっけ」
「ざっくり言うとね」
「で、付与って何を与えるつもりなの?」
「時間限定の、新たな職を授けるのはどうだろう?」
なるほど。
ダンジョン内で一定時間、より上位のジョブにチェンジか。
興味深い。
「で、、、どんなジョブかはイメージあるの?」
「呼び出すもの ―召喚士さ」
ほぅ、、、興味深い。
胸がソワソワするジョブだ。
「それで、、、何を呼び出せるのさ?」
我ながらドンドン質問が出る。
ちょっと食いつきすぎかもしれないけど、いいんです。興味深いエサにはグイグイ食いついて何が悪い。
ここぞとばかりに間をとってもったいぶる女神を、じっと見つめる。そのままひっぱって、CMまたぐつもりか? 創造神にテレフォンしてやってもいいんだぞ?
「はやく!」
もういいだろ!
「決まってるだろ? 僕さ!」
ドヤ顔で神威晒さないでほしい...... ダメだこの女神。
残念女神だ。
いや、欲望に忠実なだけか。
そういう意味では、神っぽいな。
「ダメに決まってるじゃん」
「え!? ダメなの?」
「眷属かわいそうだし、どう考えても無双だし。なんならダンジョン破壊されそうだし。てかそれ、自分が遊びたいだけだよね?」
「それもある」
「認めちゃったよ...てか嫌われるよ? 眷属たちにさぁ」
ギクっと体を揺らして、視線をそらした。
その可能性まったく考えてなかったのかよ??
あ、今、それはマズいって小声で言った。
「冗談だよ冗談!」
そう笑いつつ、神威がシュンっと小さくなった。
ごまかせてません。ちゃんと反省してください。
むしろオレが召喚されたいくらいなのに。
あ、どうだろ。ダメかなやっぱり。
チラっとロココさんを確認すると、小さく首を横に振った。残念である。
「ならば精霊たちに力を借りようか」
「精霊?」
まだお会いしたことない。
でも未取得の神権に、精霊召喚があった。
だから存在はしてるんだろうとは思っていたけど。
「僕の炎と闇を贄にすれば、それなりに高位の精霊を召喚できるよ」
「精霊もあの洞窟に住んでるの?」
「別の次元さ。だから贄を捧げてあちらの次元とこの星を繋ぐ扉を開いて呼び出す必要がある」
「なるほど」
「精霊とのバトルってことになれば、眷属も盛り上がるだろう」
アイツら手強いからなぁと、ニヤニヤ笑ってる。
この感じだと、眷属さん毎日色々とたいへんなんだろうな。
お疲れ様です......
「じゃあ、レアコアにアマテラの力を付与してもらっていい?」
「取引き成立か?」
「いや、まだだよ。眷属がモンスター役してくれるって件」
こっちも、とても重要だ。
こっちの方が本命といってもいい。
「あ、先に言っておくと、眷属を死なせる気はないよ。君がヒュムにそうするように、眷属たちは加護の対象だからね」
「それでもモンスターの代わりにするってことは…」
やっぱりそう言うことか。
「そうさ。気が付いてるようだね」
「だってさっき、マッチとポンプって言ってたろ?」
「そうだよ。お察しの通りだ。眷属は僕の加護を受けている限りあのダンジョンで死なない。時間が経てば復活するっていう方が、正確かな」
「つまり、ヒュムは本気で戦っていい?」
「むしろそうじゃないと、眷属も楽しめないだろ?」
あ、眷属の皆さん武闘派なんですね。
ヒュム族とバトルする時は、ほどほどにお願いします。
「眷属も、場合によっては本気で戦うだろう。精霊も出てくるしな」
「でも、負けが続いてイライラしないかな?」
「本当に負けたなら、いっそいい薬だ。もっと精進するさ。それに、こちらが勝ちそうなら、ヒュムは逃走するだろう。それを不要に追うなと命じれば済む」
「なるほど」
「それに、殺さずに勝利せよと命じたほうが、縛りプレイのようで眷属も楽しめよう」
それもそうか。
眷属さん的には、ヒュムに致命傷を与えずに勝利するっていう方が、ゲームとしては難易度高いか。
実はダンジョン内のバトルでは安全が保障されている。
このことは、ヒュムに悟られてはいけない。
だから、双方が真剣なバトルは必要だ。アマテラの提案だと、それが保たれることになる。
しかも、精霊召喚。
挑戦者はぜったいにハマるアイデアだ。視聴する集落の人も興奮するだろう。
彼らがハマればハマるほど、良い循環が起きるわけだし!
念のため、整理だな。
ここは、久しぶりに<いい感じボード>の出番である。
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< 眷属を敵役にする→ アマテラの力のおかげで眷属死なない= 眷属安心して働ける→ 眷属もヒュムを殺さないよう調整してくれる→ ヒュムも致死には至らないが真剣勝負→ 精霊激熱! →精霊は洞窟女神の力で召喚されると受けとめられアマテラへの信仰心高まる→ 半分は神樹に= アマテラも眷属もオレもヒュムも利益を得られる >
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うん。どうやら見通しは悪くない。
「しかし君も、腹黒いこと考えたもんだね」
ボードを見ながら、楽しそうに笑うアマテラ。
その笑顔、感心半分、驚き半分って感じかな。
ヒュムの敵役と味方役が、実は繋がっている。
自分で火をつけて、自分で消して、自己の手柄とする。
火をつけるとは、仲間の眷属(モンスター役)にいい感じで襲わせること。
火を消すとは、女神の加護でヒュムの戦う力を高めてやったり、成長できるように陰ながらサポートしてやったりすること。
手柄とは、信仰心をゲットすることだ。
いわゆるマッチポンプ方式だ。
「お褒めに預かり光栄です」
「確かに褒めてはいるね、、、一応」
厳しめの評価に、ニコヤカに笑顔を返しながら。
頭によぎった疑問をやり過ごす。
それにしてもオレは、なんでこんなことを思いつくんだろう? 転生前、何をしてたんだ?
最後まで目を通してくださりありがとうございました。読んで下さっていると思うと、元気が出ます。ぼちぼち頑張ります!




