気立て
私の大好きなゲーム『悪役令嬢は庶民ヒロインに嫉妬しない』の中のエレナは15歳で登場してしまえば「気立て」が良い。
なのにそもそもそんなゲームが好きなくらいの、そこそこ重度な腐女子だった転生前の性格がこの顔に表れてる、それが今現在10歳の私だ。
なんなの? どうすれば「気立て」っていう試験に合格できるんだっけ?
そうとばかりも言ってられないので、私は課題を立てる。
パパは庶民、あっごめん、職人さんだけど。娘の私の生まれながらの算術能力は自慢話だったらしい。
自慢の証拠にと、私がパパの工房に連れられる日のたびに、ちょっと寸法計算や積算をして見せるだけで私は歓迎された。
「おいおい儂より早いぞ。ここは工具や材料が危ないから来てくれとは言えないが。」
「こんな安い工房にはもったいない才能だろう。」
「推薦状を書いたらあのベルトラムに1回で気に入られるわけだ。」
「書記官組合には納税書類でお世話になってるからな、足りないなら何枚でも書くぜ。」
そんな笑顔に包まれて、きっと不慣れに私も笑顔で応えていたんだと思う。
時間つぶしの間みんなに一服を出したりできたのは意外だった。
子供の役目の一つには、ゲーム内でも実社会でも「お遣い」という修行がある。
その初級編は、ちょうどその金額を持たされてお店に行って商品名を言って、交換してくる。この時代ならそれができるだけでもお利口さんだ。
だけどその子の計算能力がママに知られてしまうと、次に進んだはずの中級編を飛び級して、上級編に進むことになる。蝋版に書いたお買い物チェックリストを手に、商品と個数と、大まかな金額を手に、おつりの受け取りまでを正確に遂行しないといけない。つまり大人と同じお財布の使い方だ。
そして何より大きな違いは、そのお遣い先の場所。
売ってくれるご近所さんではなくて、そう、中央市場デビューだ。
王都の中央広場には商店が面して建ち並ぶ上に、露天商も数多くお店を開いて、毎日行われているのが中央市場。そのお客の群衆の中に10歳の子供が1人混ざって歩く。
多くの商店主が、不安げに、そして何か優しい目で私のお買い物の様子を見て、きちんと計算できている事に驚く。
怪しげなお店でおつりを誤魔化そうとされても、私は金額を間違ってますよと言い、それを見た周囲が店主を冷やかす。お店って信用第一だからね。
そして回数を重ねるにつれて、意外と増えたのは、個数やおつりが今度は多い。
「これ……多いですよ?」
「ああ、お嬢ちゃんにお駄賃だよ。ママにもう1個いるか?」
笑顔で返されて追加されて、今度も周りが笑顔になる。
私はずっとこんなあくどい顔つきなのに、時々はつられて一緒に笑顔になっていたかもしれない。
デイリークエストも攻略のうちだと思えば全然、何にも苦ではないよね。




