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転生腹黒ヒロイン  作者: 純銀
王都ヴァルモンド
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6/42

プロフィール

私の夢を見ていた10年間分は眠っていただけ。

だけど、転生してしまってからは毎日が普通に24時間だ。

私はこれから、5年くらいこの生活をしないといけない。


『悪役令嬢は庶民ヒロインに嫉妬しない』の中に主人公カレンティヌ・セリオズ・ド・タルヴァニエール令嬢の嫉妬対象として、エレナ・ペティットが初登場するのは15歳。


それ以前のエレナの描写は、プロフィール説明の中のこれだけだ。

~ 庶民育ちにも関わらず(たったじゅうもじ)、気立ての良さとその爽やかで清純な美貌の評判で王宮に迎えられ、王子たちの目に留まった ~

ゲーム進行を回収するためには、この「庶民育ちにも関わらず(たったじゅうもじ)」の部分に、私は5年をかけないといけない事になる。1文字に半年だ。


私のような腐女子が好むゲーム世界のほとんどは18世紀や19世紀の異世界になる。学園の建物が現代的な19世紀のほうが多いかな。

18世紀なら宮廷教室に庶民の娘が入学する事はないし、ドレスや建物はロココ調だ。

19世紀になれば、産業革命つまり蒸気機関と鉄道の科学力で貴族と資本家の権力が入れ替わり始める。学校制度も整ってきて、王族と平民が同じ学園に通うという社交界が成立するわけね。ドレスも建物も機能的に落ち着いてヴィクトリア調になるわよ。

そんなふうに18世紀と19世紀のどっちも素敵だわよね。


ところが『悪役令嬢は庶民ヒロインに嫉妬しない』の世界はというと、誰が何を間違えたか。

そこから500年も遡《さかのぼ》って、13世紀末から14世紀始め頃っぽい。


食べ物は全平民が強制ダイエット。それこそ燕麦粥《オートミール》が主食で、私の感覚では安い食材じゃないし美味しい。時々はライ麦パン、買うのは野菜、採るのが野草。

お腹いっぱい食べても、貴族さまたちと違ってお肉も甘味も無いので何とスタイルの良い事でしょう。


衣服はなんというか、シャツというより長いチュニック。ズボンや靴下がない代りに脚布。見方によってはワンピース姿なのでまんざらでもない。

そして貴族さまたちは華やかなのはもちろんだけど……ルネサンスの少し前なので控えめなゴシック調ドレスに帽子、みたいになる。

冬には着重ねするとしても、夏の薄着の時には本気で身分差が表れる。


食器も窓も木製で、ガラスが見当たらない世界なのがいかにも昔。そういうコップや瓶が無いからお台所の細部が何となく完全に不透明ね。


治安がね、長閑だけど危険なの。

その地域では全員が顔見知りを通り越してお話仲間。王様や教会に忠誠を誓う王都民の規律を守る気持ちは高い。

こないだまで200年間くらい暴れた十字軍の宗教と違って、ゲーム界の宗教は多くが政治的ではないので良いのだけど。これもルネサンス前という事で科学や法律が未発達。だから色々と常識は違ってくる。普段の生活は忙しいけど長閑よ。


日本でも寺子屋すらない時代ではあるんだけど、さっきも言った通り小中学校がない。社会の中に教育制度が定められてから学校って建つものなのね。

だから多くの子供は児童労働をしている。一部の子供はギルドや教会や私たちのように組合での見習いも児童労働。だけどそれが小中学校みたいなものだから、ちょっとランドセルを背負いたくならないでもない。


パパからは、磨かれた金属の鏡の切れ端をもらった。それが私を女の子の自覚でいさせてくれる。

小さな鏡の中に映ったエレナを私はまじまじと眺める。前世が腐女子だった私を反映するあくどい顔つきの少女がそこにいる。


腐女子という生命体は現実ではコミュ障だけれど、ゲームの中では清純で美しい。

でも今は肝心のゲーム展開が始まってない時点。だから私は、あの大きな建造物の内部構造になぜか妙に詳しいまま、攻略対象たちが住むヴァルモンド城を今日も見上げる。

そろそろ私のライバルのご令嬢たちとご婚約させられたりしてる頃かな。


「山羊の世話係のエレナ、柵の中の掃除は誰がするのかしら?」

「はぁい。」

私の顔つきが険しいうちの、眉間のふくらみくらいはママのせいかもしれない。

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