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転生腹黒ヒロイン  作者: 純銀
オルダニア王国
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オーストリア公国

王宮書記官室に人の出入りが増えた。

外交書類チームと財務書類チームが超多忙になって、日が暮れても帰宅できないでいるらしい。

ゲルマン語が混ざるラテン語の文書作業が増えた。


宮廷を挙げての行事の準備が始まる。



古くから独立していたオルダニア王国とは色々と異なり、一行では説明しきれない……どころか十行でも足りない変遷を経て成立した国家がオーストリア公国だ。


8世紀のフランク王国にはカール大帝という統治者がいたんだけど、その勢力拡大により東端に「オストマルク」という辺境領が置かれる。これがオーストリアという地域名の語源かな。

その大きかったフランク王国が9世紀に3つに分裂した際、オストマルク領は東フランク王国のほうに区分されたわね。

その地域って北方からのマジャール人の侵攻に対してずっと戦っていたんだけど、10世紀にオットー一世がそれに勝利したの。帝国を軍事的に守った功績が大きかったので、その権力を知らしめるためにローマ皇帝からの戴冠という儀式を行ったり。

そういう宗教の仕来たりがあったらしくて、それまでの一元的な王権国家ではなくて、領邦の諸侯が皇帝を選ぶ選挙王政の連邦となった。そしてとても神々しい「神聖ローマ帝国」と名前が変わりました。

オストマルク領もそのまま神聖ローマ帝国の一領邦になった。この時の領家はバーベンベルク家。


こういう宗教帝国って、皇帝が変わると言葉まで変わることもあるのね。12世紀、皇帝がコンラート三世に代わった頃にラテン語呼びが広まったり、ちょうど領土勢力が増したりした。

そうして、帝国の一部でありながら、今の「オーストリア公国」という呼ばれ方に変わったという事らしい。


そんなオーストリア公国は、勢力は増していたのに、13世紀にバーベンベルク家には男子継承者がいなくなっちゃう。

そこで貴族たちは北の隣国ボヘミア王国の息子オタカル二世を国王に迎え入れたのね。王家が変わるという事は王権が1つになる事をも意味している。それによって、オーストリア公国はボヘミア王国と、そのついでにハンガリー王国の西部までを含んで広大になった。

さてその頃の神聖ローマ帝国はというと。諸侯たちが皇帝の跡継ぎを決めもしない20年間があったりしたみたい。

そこで、誰もいないならとオタカル二世が皇帝になろうとしたわけ。なんだかボヘミア王家に支配されちゃいそうなのが諸侯から気に入られない。誰か適任者はいないか、おお南西の辺境領に人畜無害そうな領主がいるじゃないかと勘違いした諸侯たちが皇帝に選出したのがハプスブルク家のルドルフ一世。それが今からわずか四半世紀前だ。

その際にオタカル二世がマルヒフェルトの戦いで1278年に死亡するんだけど、そうなるとオーストリア公国はボヘミア王家との縁が無くなってちょっと元の領土の広さに戻ったり。そしてルドルフ一世の息子さんであるアルブレヒト一世が公爵に着任するけれど、そのハプスブルク家の勢力は結局大きくて皇帝選挙でも勝ち、そして現在に至る。


落ち着きましたか、キリスト教圏の仕組みの上に成り立つ帝国の中の皇帝さんや諸侯さんや領主さんたち? ……まだまだでしょうね。


そんな感じで広大な国土を何度も塗り替えて、統治者も入れ替わり、統治方法まで様々になる神聖ローマ帝国とオーストリア公国。一部分だったり半分独立していたり、味方だったり敵だったり競争相手だったり、利用したり利用されたりしながら。

それは自国からも他国からも、恐れられ、期待され、嫉妬され、依存される、振興の強大な領邦。



オーストリア公国の現公爵にして神聖ローマ帝国の現皇帝アルブレヒト1世の第四令嬢、マルガレーテ=フォン=ハプスブルク嬢。彼女を伴う勉強会関係者一行が、今は積雪のためアルプス山脈ブレンナー峠の行き来ができずに、私たちのオルダニア王国にある辺境領ブレシアの貴族別邸にご滞在中だ。

法学と帝王学の学問交流、そして、第四王子オウレロ・セルヴィオ=エヲ=ヴァルモンドへの求婚のために。


ちょっとちょっと、その人も(・)ね、私《エレナ》の攻略対象なんですけど。

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