イングランド王国
王宮書記官室に人の出入りが増えた。
外交書類チームと軍事系書類チームが超多忙になって、日が暮れても帰宅できないでいるらしい。
イングランド語の文書作業が増えた。
宮廷を挙げての行事の準備が始まる。
イングランド王国は、ヨーロッパの西に浮かぶブリテン諸島のうち大陸側に3分の1くらいを占める島国国家だ。
大陸側と隣接する距離の海洋国家でありつつも、ブリテン諸島は伝統も深くアングロ=サクソンの諸王国が割拠していた。だけど少し前の11~12世紀に2つの領土的案件が発生。それによって今現在はフランス王国との対立が長く続いている。ノルマンディー公ウィリアムから征服されたり、アキテーヌ領アリエノール・ダキテーヌから領土を得たり。
大陸文化と島国文化が混ざり合うだけならいいかもしれないけど、だいぶ侵略体質のほうが際立ってる感じ。海洋国家ならではの戦艦技術を以ってしてイングランド王家は海を越えて大陸に領地を持ち、宗教や婚姻、商業を巻き込みながら歴史を刻んでいる。
ウィリアム一世の曾孫に当たるエドワード一世は、法整備の鬼のように言われる事もある。自国や近隣国で王族の法律的優位性を常に推し進め、曾祖父譲りの軍事行動や領土拡大っぷりは、きっとブリテン諸島の完全支配くらいを目指していそう。
実際にブリテン諸島の中のウェールズ地方の征服にも旺盛で、つい一昨年1301年にエドワード一世は自分の王太子にウェールズ大公の称号を与えている。それは領地名がウェールズになる事でウェールズ人の反感を和らげたわけだけど、つまりはイングランド王国の一部としたばかりだ。
一方スコットランド王国では、前国王に続いて王女マーガレットが7歳の幼さで亡くなる事態が起こった。そのため空いてしまった王位の後継者争いで混乱していた国内状況に乗じたイングランド王エドワード一世は、仲裁を名目に介入したかと思うと実質的には支配を進めた。反乱が続くスコットランド王国国内に、ついには侵攻したここ数年のイングランド王国がほぼ服従支配している。
今このヨーロッパは、例外を除いてほぼキリスト教が政治権力を振るう時代。
イングランド王国の場合の宗教面は、何しろ戦ってばかりなのにそれを正義として掲げるし、島国国家になると教皇からの目も遠くなって、それはそれで政治の道具にしていくビジネスマン度合いが強い感じがする。
曾祖父の時代に招き入れたユダヤ人の人々を、ここ十数年前から海外追放しているのも現王だ。
そんな現王エドワード一世は、大陸側のフランス王国の現王フィリップ四世とずっと戦争してるわね。
海洋国家が戦争してるのだからその戦艦の建造や海戦の経験力が勝っているという事になる。
とは言え、イングランド王国の本来の造船技術の高さは海路交易に長け、北海から地中海までの広い海域の国々と交易を可能にしている。羊毛や布の輸出で潤い、他国を迎える港湾外交も盛んだ。海を渡る商人たちは「イングランドの港は風向きさえ読めば安全だ」と口にするという。
法による侵攻と戦と交易、それらを武器にしている西の島国、それがイングランド王国だ。
どの近隣国も王家の継承に国交関係を重ね合わせて、イングランド王国の王家と結びつくことを大いなる栄誉と考えている事は間違いない。
とはいえ継承問題は必ずしも上手くはいかない。現王には2人の王妃がいて生まれた子供は総勢20人。王子や王女をブリテン諸島諸国の王位に付けたり親交諸国に嫁がせたりするにはその頭数も政治力ではあるんだろうけど、内乱や婚姻先不足という形で王家の血統が騒がしいもという。王家の未来を守るためそれは「婚姻外交」とまで呼ばれ、王女たちは大国へ嫁ぎ、王子たちは他国の王女を迎え入れる、それがこのヨーロッパ各国が領土と同盟を結ぶ最強の習わしだ。
そんな今のイングランド王国は、もし海洋貿易の相手国の中に中立国があれば、その国を味方に引き寄せるために姫を政略結婚に差し出すことを躊躇わない。宗教、戦争、外交、貿易――そのすべてを絡め取り、大国としての影響力を広げようとする。
イングランド王国の現王エドワード一世の第九王女、メアリー=オブ=カスティーユ姫の警護隊を伴う訓練軍が、私たちのオルダニア王国にやってくる。アルプス山麓での魔物討伐合同訓練、そして、第二王子アリオス・セルヴィオ=エヲ=ヴァルモンドへの求婚のために。
ちょっとちょっと、その人も、私の攻略対象なんですけど。




