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転生腹黒ヒロイン  作者: 純銀
オルダニア王国
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外交使節団と婚約者

ヨーロッパの中にあってオルダニア王国は、地中海からアルプス山脈までの中規模の国土を持つ。私エレナが生まれた王都ヴァルモンドは、そんなオルダニア王国のだいたい真ん中なの。

そして、ヨーロッパで一番大きいフランス王国とは国境線で接している、隣国の関係ね。


そんな国境線の向こう側には何があるかというと、アヴィニョン教皇領。

これがどんな領土かというと、ローマ教皇の管轄領や避難候補地とするために幾つかある飛び地の1つ。キリスト教仲間のフランス王国から贈与された領土。

現時点そこに教皇はいないけど、29年前から代理行政官たちが都市づくりを続けていていて政治機能が動いている。教皇は宗教指導者である一方で領主でもある二重権力者なので、力関係はよくわからないけどそういう国土があるの。


さて私たちのいるオルダニア王国は宗教色が薄い国家なのだけれど、あの強権的な宗教の国土が2系統も隣接しているとなると、荒れそうよね。でもそうならない理由はある。

広くこの地に繁栄したローマ帝国から分かれて、オルダニア王国が生まれた時期はビザンツ帝国と前後するくらいに古いの。

似たような時期にフランク王国も生まれるけど、フランク王国が変遷に変遷してフランス王国になるのは数世紀あとだ。国家の伝統を年数だけで言うなら、フランス王国は半分くらいしかない。


そしてオルダニア王国は、[人と人が争わない信仰]を国教としている。

だから他国を侵攻しない。だけど、他国を侵攻しないこの国家を護るためには頑なに防衛する。まあ人《ひと》以外に魔物からの侵攻もあるので軍事力はきちんと鍛えられているわよ。


そうするとどうなるかというと、これは大人になると分かる事なんだけど。宗教組織って上の立場になって偉くなるほど、敬虔な信仰者ではなくてビジネスマンになるの。

お祈りだけでは神様とやらは空からパンを降らせてくれない。隣国にキリスト教の権威を広げたい、でもそれよりも交易が優先。地方のフランチャイズ領土みたいなものなので財政は極端には困らなそうだけど、人《ひと》相手の軍事力を日頃増強さえしなければもっと仲良くできるかもしれないわね。


なので、飛び地を領主として治める教皇や代理行政官というビジネスマンたちは、隣接する異教国家が交易に好意的ならとても話が分かる人物なの。神秘的な価値観はそれぞれのものとして交わさなくても、国交ビジネスでは折り合いが付くのね。


そんなフランス王国やアヴィニョン教皇領と国境線で接していて、オルダニア王国を防衛しているのは、ダンドグーリ領の領主ルドヴィク=エルヴァンという我が国の辺境伯だ。

私エレナはヴァルモンド城から外に出られない生活なのでリアルタイムでは把握できないけど、後にルドヴィク伯からの王宮に届いた報告書を参考にして説明するわね。

こんな感じだったみたい。


フランス王国もオルダニア王国も地中海に港を持っているので、海路という案も検討された。けれど、せっかくお隣同士なので外交使節団のお迎えは陸路に決まりました。

表向きは友好関係である交易のための使節団。その一行はこういう場面のために建てられてあるダンドグーリ領迎賓館に到着する。オルダニア王国側の代理行政官チームもそこへ出張してきていて、交易に関する即決案件をこの迎賓館で対応し合う。そういう交渉は王族がいなくても進められるから、使節団が王都まで訪れる必要は必ずしもないわけね。

表向きの目的は交易交渉の成立と、そのついでにダンドグーリ領の文化を見物して過ごしてもらう、それがフランス王国使節団の日程だ。


しかし今回は、使節団全体のうち半分ほどを従えた一行が、オルダニア王国側の一行に先導される。貴族のために点在する領主館や街道別館に王家離宮と、安全な数泊の旅路を経て、王都ヴァルモンドにいよいよ到着する。


フランスの外交使節団が、というよりもアデル=ド=ヴァロワ姫が、オルダニア王国にいらっしゃいました。


王宮書記官さんたちも算術士さんたちも忙しい手を止めて、そして私《エレナ》も、宮門側の屋上に集まる。さすが、本来なら弓矢攻撃から兵士を護るための城構造だ、目立たないように使節団ご一行を眺める事ができる。

半開放された宮廷庭園に催されるアデル=ド=ヴァロワ姫の歓迎式典。誰もが憧れるフランス宮廷のお姫様。

……でも14世紀の今は、ルネサンスより前なので、フランスで一番のお姫様ドレスと言えども膨らんではいないのが私には物足りないかな。


私は王族同士のやりとりの場に居合わせる事なんてない見習い文官ですので、リアルタイムでは把握できないけど、後に宮廷から王宮書記室に回ってきたの報告書の原稿を参考にして説明するわね。

こんな感じだったみたい。


フランス王国側との幾つか即決するタイプの交渉案件については、代理行政官チームからの第一報の確認で済む。それは国王や政務官たちのお仕事。そこは読み飛ばすわね。

アデル=ド=ヴァロワ姫を社交儀礼やお茶会でお迎えしたのは、第一王子レイネル・セルヴィオ=エヲ=ヴァルモンド。何度も言うけど私《エレナ》の攻略対象です。

そこに同席していたのはもう1人のお姫様?、いや令嬢様がいたようだ。

マルティナ・エルヴァンご令嬢。

ダンドグーリ領ルドヴィク=エルヴァン伯爵の、お嬢様だ。

「アデル=ド=ヴァロワ姫は第一王子に求婚を匂わせた。だが、王子はマルティナ・エルヴァン令嬢との婚約を匂わせた。」


ちょちょ、ちょっと。その第一王子は、私《エレナ》の攻略対象ですってば。

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