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転生腹黒ヒロイン  作者: 純銀
オルダニア王国
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雨の大庭園

お部屋の細い窓は、夜の間は二択になる。風を通すかそれとも外の光を遮るか。

この時代にはガラスが普及していないので、寒ければ不透明な窓蓋を嵌めるのが当たり前だからだ。そのため、お外や空の明るさが分からなくなる。


私に朝を知らせてくれたのは掛け布団の上の重みだった。

「エレナちゃん、朝だよ。」

「きゃっ。……あ、アデット。」

寝起きの悪いお父さんに布団アタックするワンパク期かな。そしてシャンデラが窓板を外してくれて私の部屋にやっと光が差し込む。どこか薄暗くて静かな雨音がしてるけど。悪い気はしない目覚めだと思う。


「エレナさま、おはようございます。」

「そうでした。おはようございます。」

「おはようございま~す。」

こんな仲だけどまだ昨日知り合ったばかりだ。

「よくお休みできましたか? こちらが明日から着ていただくお洋服ですよ。今からこちらを着てみちゃう?」

「わあ、綺麗なローブ。着てみちゃおうかな。」

「朝ごはんを食べてからのほうが汚しませんよ、エレナちゃん。」

寝起きの匂いの元は、またトレイで持ってきてもらった朝食だ。

私はアデットと一緒に食べたいのに、やっぱり食事の扱いが分けられてしまう平民間の身分差がちょっと寂しいな。

なので私はその食事に手を付けるのを後回しにして、お布団の中にもう一度潜り込んでアデットとかくれんぼを始める。


きちんと平らげた朝食のトレイを持って行くシャンデラに、私は聞いた。

「ちょっと一人で行きたい場所があるんです。今からこれを着て散歩してきてもいい?」

「ええどうぞ。でもお外に出るのでしたら、今は小雨が降ってますよ。」


時々の通行人しかいない庭園の、雨宿りできる場所に私は佇む。懐かしいな。

季節ごとに様子は変わるけど、今のお花ゾーンは綺麗に3色が分けて植えられている。


赤いのはプリムローズ。

青いのはワスレナグサ。

白いのがスズラン。


そして薬草とハーブのゾーンもある。


葉もお花も小さいジャコウソウ。

葉の厚みがあるのがオレガノ。

フワフワしてるのがセージ。

デージーっぽいカモミール。

ギザギザの薬草アキレア。

紫色な薬草ウスベニアオイ。


特に大きな出来事も無さそうで、文官さんも近衛兵さんも小雨だからちょっと急ぐ程度で通り過ぎていく。

王族のどなたかが通らないかとしばらく眺めていたけど。今日は思い出すだけでいいかな、きっとそのうち会う事になるはずだから。

『悪役令嬢は庶民ヒロインに嫉妬しない』のプレイが始まる頃には、エレナは攻略対象たちと一緒にこの庭園を見ていた。あと2年すればそこまで進展するのがこの世界。


でも本当にそう進んでくれるのかは自信が無い。

だってこの世界はマルチストーリー。バッドエンドが何通りも待ち構えているのだから。

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