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転生腹黒ヒロイン  作者: 純銀
オルダニア王国
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21/42

王宮の小部屋

宮門を通り、長く広い中庭に入る。『悪役令嬢は庶民ヒロインに嫉妬しない』の中で見慣れていた庭園。そして向こう側に宮殿が見えてくる。

ああ……懐かしい……。

やがて私《エレナ》は15歳になった頃に、あの建物の中で暮らす庶民育ちの清純な乙女として登場するんだ。


「エレナ君っ、宮殿に歩いて行ってどうするのだ。私たちはこっち、政務庁の取次所だよ。」

「……わあっ。あまりにお花が綺麗でございましたので。」

あの庭園は今はまだ私の庭園ではない。

エレナは今まだ13歳だという意味を自覚する。


中庭に面する構造物はすべてが石造りになる。さきほどの忙しそうな門兵たちに変って、近衛兵たちは所定位置に立って見張るだけ。そんな雰囲気の建物の1つに向かうロイエルさまとお荷物持ちさんの後を、私は付いて行く。


ロイエルさまは何度も取引に訪れている方なので、城内事務官から疑われる様子が全くないのはさすがだ。だけど、ここまで腰を低くして笑顔を絶やさないロイエルさまを私が見るのは初めてかな。

「こんにちは。ロイエル・コルスルさん、今月の受領手続きと……そちらのお嬢様が、エレナ・ペティットさんですね。」

「はい、エレナと申します。」

「左様でございまして。ホローブンさまへのお取次ぎのほうを、ええ、ええ、よろしくお願いいたします。」


連絡係の事務官さんが往復の後、ロイエルさまたちと私は財務局の建物に向かう。

上階には王宮書記官室という部署があるんだけど、私たちはその静かな階段と廊下を歩く。

「どうかな、エレナ君。見た事がないだろう。ここの皆様のお力となるように勤しむのですぞ。」

「はい、一日でも早くそのように。」

……とは答えたけど。ここらへんの建物の中って、私がゲーム生活で暮らし慣れた空間なのね。さっきから馴染む~う。


王宮書記官室の前には書記官さんらしき男性と使用人さんらしき女性が待機していて、ロイエルさまはその男性と商談室のほうに入っていった。

女性のほうは私の案内係ようだ。私がこの目の前の書記官室の中に入ったりホローブン書記官に会うのは3日後になるという。お荷物持ちさんから私の引っ越し荷物(中型キャリーバッグ1個相当かな)を受け取って、持ってもらってしまう。

「エレナさまのお部屋にご案内しますね。ここでの暮らし方を知ってから、お仕事に携わっていただきますから。」


案内係さんは、私のちょっと知らなかった通路の方向に歩いて行く。

「私のお部屋は、どんな人と相部屋なのですか?」

「エレナさまは算術士さまの見習いでらっしゃるのですから、お一人のお部屋ですよ。」

あ、そうなんですね。

「このお部屋です。どうぞお入りになって。」


木製の扉は、頑丈で重い。

窓は細くて採光だけ。壁全面が石の壁。机と椅子と、ベッドと棚。

よかった、薪が少し積んである。この暖炉は使われてるということだ。

「お若いですから1人では心配よね。今までお洗濯係だった使用人があなたのお世話に来ますので、そうしたら色々教えてもらってください。」

お昼ご飯は誰に頼もう、と思っていた。質問できる相手がいてくれそうで安心する。


採光窓は縦に細長くて顔を出すこともできない。その細い景色には、宮殿の独特な屋根の一部が見える。

「15歳で初登場したエレナは、もうちょっと良いお部屋だった。そうなるのは攻略対象たちに気に入られてからか……。」

あと2年、がんばろう私。

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