↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生腹黒ヒロイン  作者: 純銀
王都ヴァルモンド
PR
10/42

十字軍のあと

私が生まれた大体その頃に、近隣諸国の200年間の戦争が終わったらしい。後世の人類史では「戦争」のような名前ではなく「十字軍」という名前で刻まれている。


7世紀のアラビア半島に生まれたのがイスラム教。8世紀には地中海を挟んでキリスト教とイスラム教が勢力を二分していたわけね。

でも考えてみて、宗教って神様の種類の問題だからお互い平和でそれでいいはずよね。正解正解。

それなのに、一部の宗派が勢力範囲を競い合うために軍隊を使いたがっちゃう、おかしくない? おかしいわよね。


もう少し古くからあったユダヤ教がエルサレムっていう土地を、ご先祖様かな~神話の上でかな~「聖地」と定めてた。このエルサレムを、キリスト教もイスラム教も同じ「聖地」にしてる。それぞれ3つの宗教名で呼ばれてるけど、3人兄弟みたいな宗教なの。兄弟だから生まれ故郷が同じなのくらいは当然。仲良くするのも当然のはず。私なんかの説明じゃなくて専門筋でも実際アブラハム三宗教って言えば兄弟宗教って言われてるくらい兄弟。

そのうちの誰とは言わないけど、特に二男坊と三男坊がどうも兄弟喧嘩好きみたいなのね。

セルジューク朝がビザンツ帝国と喧嘩したのを元に、東ローマ帝国のウルバヌス2世という教皇が指揮を執ってフランスに権力者を集めて「聖地エルサレムを奪還するのです」という名目で、軍隊の編成を呼び掛けた。これが大体200年前の「十字軍」の始まりになるの。

軍とは言っても、この十字軍は「正規十字軍」と「民衆十字軍」の2種類に分類されてるみたい。人口が増え過ぎていたフランスからの移民希望者や、罷免が目的の犯罪者までが寄り集まった民衆十字軍の人数が多くを占めて、暴徒集団予備軍というのが実情だったんじゃないかしら。被害国が多数。陸路になった隣国のハンガリーの被害も相当大きかったみたい。


私たちのオルダニア王国はフランスにもローマにも隣接してるから他国事《たにんごと》じゃないけど、「人と人が争う事を良しとする国教ではないため関わらなかった」と歴史書には綴られているらしい。十字軍の通過を事前にお断りしてそこに人道的兵力を布いたりした。

でもその一方で近隣の国々ではそうはできなかったのね。


民衆十字軍が味方宗教はずの各地で暴徒集団と化した後に、今度は正規十字軍がセルジューク朝の領土を進軍する。正規《こいつら》は正規《こいつら》で異宗教相手にやってる事は暴徒集団。名目だった通りにエルサレムを奪還してからも、色々と残虐な行動をしたみたい。

そうして世界は12世紀を迎えました。彼らの宗教って何でしょう?


それから大体200年の間、二男と三男の間では「聖地・エルサレム」の奪い返しを名目に、通算9回も同じような「十字軍」が繰り返されて、残虐な兄弟喧嘩が続いたわけね。

イスラム側も勢力拡大はしようとしたけど自分たちの領土を守る側。

それに対して十字軍側はというと、遠征による侵略でとにかく近隣国や関連国各地で住民虐殺が多い、宗派関係なしの行動も多い。

喧嘩両成敗という部分はゼロではないけど、後世で問題視、危険視されるのは十字軍のほうになるわけ。


そんなふうにして軍隊が地中海を何度も行き来する200年間、物資で頼られた国の一つがオルダニア王国でもある。この国の国家も商家も儲かったんでしょうから清廉潔白だとも言い切れない。食糧支援なのか武器支援なのかで国内世論が分かれるとはそういう話ね。


13世紀になったらもう政治と軍隊のパワーバランスだけの様相。

エジプトまで巻き込まれたり、報酬問題で同宗派のハンガリーを攻撃したり、キリスト教同士で虐殺し合ったり。……あの、エルサレム奪還がお仕事じゃないんですか? 十字軍の活躍によって東西統一どころかキリスト教圏の分断ばかりが進んでますよ?

そうしてなんと13世紀半ばころには、十字軍同士まで闘っちゃいます。テンプル騎士団さん、聖ヨハネ騎士団さん、あのう、あなたたちの聖地エルサレムにモンゴル帝国が迫ってますけど? と思ったらマムルーク朝に支配されてますよ?

そんな流れで十字軍は諸国の熱が次第に冷めて衰え、続く遠征でも成果を挙げられず、最後の拠点アッコンが陥落したのは1291年。



オルダニア王国に夢の中の私が生まれたのは大体その頃、1290年にお空で金環日蝕が起こっていた最中だったそうです。

それでお祖母ちゃんが付けてくれた名前が「闇の中の光の人」=エレナ《Elena》。なんて重い名前を背負ってるの私。



そうして十字軍の活動が終わったからといって、ヨーロッパが平和になったわけでもなかった。

なんだか近隣国さんたち、ずっと戦ってない?


まずイタリア。ここはもう、十字軍後も教皇派《グエルフ》と皇帝派《ギベリン》が都市同士でケンカしまくり。フィレンツェ、ミラノ、ジェノヴァ……名前が素敵で乙女ゲーの舞台にだってなりそうなのに、実態はずっとほぼ毎年どこかで内乱が続いてる。


そしてフランス。王家の継承問題でゴタゴタして、諸侯同士の争いが絶えない。さらに北のフランドルでは反乱が起きて、フランス軍と衝突したりする。布の産地だし、戦争が起きると軍旗や隊旗の注文が増えて、近隣国の商家なんかはむしろ忙しくなるわよね。


東側では神聖ローマ帝国が皇帝選挙で揉めて、諸侯が勝手に戦争を始める。

南側ではスイス周辺でハプスブルク家と地元勢力が衝突したりもする。



……平和ってどこ?


そう、『悪役令嬢は庶民ヒロインに嫉妬しない』に平和はある。

近隣国さんたちには悪いけど、私はオルダニア王国から、できれば城郭から一歩も出ません。はい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。