表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/35

白い空【第五話】

 私は肩を震わせながら、ベットの隅で蹲っていた。

 窓の外では、未だに得体の知れない集団が暴れ回っている。


 鳴り響く悲鳴。

 何かが壊れる音。

 誰かが泣き叫ぶ声。


 日常が、崩れていく音だった。


 ――大丈夫。

 きっと大丈夫。

 下にはルークが向かっている。

 孤児院はきっと無事だ。

 騒ぎが収まれば、また元の日常へ戻れる。


 私は必死にそう言い聞かせた。


 けれど、いつまで経っても悲鳴は止まらなかった。


 その時。


 ギシッ――


 扉の外から、軋むような足音が聞こえた。

 私は肩をびくりと震わせた。


 ――ルークだ。


 きっと、そうだ。

 問題を片付けて、私を迎えに来てくれたんだ。

 足音が、ゆっくり近づいてくる。


 ギシッ……ギシッ……


 床板が鳴るたび、心臓まで揺れる気がした。


 どうしてだろう……

 安心するはずなのに、胸騒ぎが止まらない。


 足音は、部屋の前で止まった。


 静寂。


 何も聞こえない。


 私は息を止めた。


 * * *


 扉が轟音とともに蹴破られた。


 入ってきたのは、黒装束の男。

 黒い筒状の武器を構えて、部屋へ踏み込んでくる。

 男の視線が部屋を這う。


 机。

 窓際。

 クローゼット。


 仮面の奥の視線が、部屋の隅々を舐めるように動く。


 やがて男は、ベットへ目を向けた。


 ドス、ドス、と重い足音を鳴らしながら近づいてくる。

 そして、勢いよく身を屈め、ベットの下を覗き込んだ。


「…………」


 数秒の沈黙。


 男は再び立ち上がると、再び武器を構え直した。

 遠ざかる足音だけが、静かに響いた。


 * * *


 ベットがうねる。

 木材が軋み、形を失っていく。


 そして――ベットは”ほどける”ように崩れ、その中から私は姿を現した。


 私はベッドを一度”素材”として分解していた。

 そして、再び”ベッド”として再構築することで、その内部へ身を隠した。


「……ルーク」


 ……下にはルークがいるはずだった。

 なのに、どうして上へ来た?

 どうして誰も来ない?


 ……嫌な予感が、胸を強く締め付ける。


 気づけば、私は駆け出していた。

 勢いよく扉を開ける。


 廊下の先には、黒装束の男。

 黒い仮面が、ゆっくりこちらを向く。


 ――関係ない!


 私は足音も隠さず、階段へ向かって走る。


 背後で、何か音がした。


 破裂音。

 怒号。

 足音。


 それらは、私にとって些細なことだった。


 今はただ、みんなの無事を確かめたかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ