白い空【第五話】
私は肩を震わせながら、ベットの隅で蹲っていた。
窓の外では、未だに得体の知れない集団が暴れ回っている。
鳴り響く悲鳴。
何かが壊れる音。
誰かが泣き叫ぶ声。
日常が、崩れていく音だった。
――大丈夫。
きっと大丈夫。
下にはルークが向かっている。
孤児院はきっと無事だ。
騒ぎが収まれば、また元の日常へ戻れる。
私は必死にそう言い聞かせた。
けれど、いつまで経っても悲鳴は止まらなかった。
その時。
ギシッ――
扉の外から、軋むような足音が聞こえた。
私は肩をびくりと震わせた。
――ルークだ。
きっと、そうだ。
問題を片付けて、私を迎えに来てくれたんだ。
足音が、ゆっくり近づいてくる。
ギシッ……ギシッ……
床板が鳴るたび、心臓まで揺れる気がした。
どうしてだろう……
安心するはずなのに、胸騒ぎが止まらない。
足音は、部屋の前で止まった。
静寂。
何も聞こえない。
私は息を止めた。
* * *
扉が轟音とともに蹴破られた。
入ってきたのは、黒装束の男。
黒い筒状の武器を構えて、部屋へ踏み込んでくる。
男の視線が部屋を這う。
机。
窓際。
クローゼット。
仮面の奥の視線が、部屋の隅々を舐めるように動く。
やがて男は、ベットへ目を向けた。
ドス、ドス、と重い足音を鳴らしながら近づいてくる。
そして、勢いよく身を屈め、ベットの下を覗き込んだ。
「…………」
数秒の沈黙。
男は再び立ち上がると、再び武器を構え直した。
遠ざかる足音だけが、静かに響いた。
* * *
ベットがうねる。
木材が軋み、形を失っていく。
そして――ベットは”ほどける”ように崩れ、その中から私は姿を現した。
私はベッドを一度”素材”として分解していた。
そして、再び”ベッド”として再構築することで、その内部へ身を隠した。
「……ルーク」
……下にはルークがいるはずだった。
なのに、どうして上へ来た?
どうして誰も来ない?
……嫌な予感が、胸を強く締め付ける。
気づけば、私は駆け出していた。
勢いよく扉を開ける。
廊下の先には、黒装束の男。
黒い仮面が、ゆっくりこちらを向く。
――関係ない!
私は足音も隠さず、階段へ向かって走る。
背後で、何か音がした。
破裂音。
怒号。
足音。
それらは、私にとって些細なことだった。
今はただ、みんなの無事を確かめたかった。




