第19話『忘れたくない未来』
夜――新居のベッドルーム。
陽菜はいつものように笑顔を作るが、顔色が少し青ざめている。
「……さくやさん、なんだか、頭がぼんやりします……」
「……陽菜……大丈夫か?」
陽菜は小さく首を振る。
「……実は……この前の検査で……病気が少し再発してしまったみたいです……」
さくやは息を飲む。
「……そんな……陽菜……どうして……」
「……ごめんなさい……さくやさん……私、何も覚えていられなくなるかもしれません……」
さくやは陽菜の手を強く握る。
「……いやだ……絶対いやだ……陽菜、君が忘れても、俺がそばにいる……」
「……でも……さくやさん、もし私が……私が全部忘れてしまったら……」
「……その時も……俺が全部教えてあげる……君のこと、何もかも、俺が思い出させる……」
陽菜の目から大粒の涙がこぼれる。
「……さくやさん……私、怖い……何もかも忘れてしまうかもしれない……」
「……大丈夫だ、陽菜……俺がずっとそばにいる……だから安心して……」
陽菜は震える手でさくやの胸にしがみつく。
「……さくやさん……お願い……覚えていて……私のこと……」
「……もちろんだ、陽菜……絶対忘れない……君の全部を守る……」
二人は涙を流しながら抱き合う。
夜の静寂が、二人の切なさと愛を包み込む。
翌日――病院の白い廊下。
さくやは陽菜の手を握り、医師の説明を聞く。
「……再発は軽度ですが、記憶障害が起こる可能性があります」
「……わかりました……陽菜を絶対守ります……どんなことがあっても」
陽菜はさくやの胸に顔を埋め、静かに涙を流す。
「……さくやさん……私……怖いけど……あなたと一緒なら……」
「……ああ、陽菜……どんな未来でも、俺は君と共に歩む……絶対だ」
夜――新居に戻る二人。
陽菜は疲れた体をさくやに預ける。
「……さくやさん……私……忘れちゃったら……ごめんなさい……」
「……陽菜……いいんだ……忘れても、俺が教えてあげる……何度でも、君のことを思い出させる」
二人の涙が夜の静けさに溶け、胸にぎゅっと締め付けられる。
陽菜の病気によって未来への不安が広がる一方で、二人の絆はより強く、深くなった。




