第6話『初めての二人きり』
春――昼下がり。
大学のキャンパスのカフェテラス。
「……さくやさん、ここ、初めてですか?」
「……ああ、ちょっとだけ」
「……私も、初めてです」
互いに少し照れながら、メニューを手に取る。
「……何にします?」
「……俺はコーヒーでいいかな」
「……じゃあ、私もコーヒーにします」
沈黙が少しだけ訪れる。
「……緊張しますね」
「……え?」
「……さくやさんと二人だけって、ちょっとドキドキします」
「……そ、そうか?」
頬が少し赤くなるさくや。
「……はい。だって、初めてですもん、こういうの」
「……なるほど、俺も……少し緊張してるかも」
笑いながらも、心臓が少し早くなる。
「……でも、嬉しいです」
「……嬉しい?」
「……はい、こうして一緒にいられるのが」
「……俺もだ」
カフェの店員が注文を取りに来る。
「……さくやさん、何か甘いものも頼みませんか?」
「……ああ、じゃあケーキでも」
「……じゃあ、一緒にシェアしましょう」
「……いいね」
笑顔が自然にこぼれる。
ケーキが来ると、二人で少しずつ取り分ける。
「……さくやさん、上手ですね」
「……ああ?」
「……こうやって、シェアするの、丁寧で嬉しいです」
「……そうか、良かった」
手が触れそうになり、少し止まる二人。
「……陽菜、手、冷たいな」
「……え?」
「……少し、手を握ってもいい?」
「……え、はい……」
指先が触れ、温かさが伝わる。
「……こうしてると、落ち着きますね」
「……俺もだ」
しばし沈黙。
でも、それは心地よい静けさ。
「……ねぇ、さくやさん」
「……ん?」
「……また、こうして二人で過ごせますか?」
「……ああ、絶対に」
「……嬉しいです」
「……俺もだ、陽菜」
風がカフェテラスを抜け、二人の髪を揺らす。
「……さくやさん」
「……うん?」
「……今日は、ずっとこのままいられる気がします」
「……俺も、そう思う」
小さなケーキを食べながら、二人の距離が少しずつ近づく。
「……陽菜、今の気持ち、言ってくれるか?」
「……え?」
「……さっきの、嬉しいっていう気持ち」
「……えっと……」
頬が赤くなる陽菜。
「……さくやさんと一緒にいると、幸せです」
「……俺もだ、陽菜」
微笑み合う二人。
初めてのデートは、ぎこちなくても、でも確かに心が通じ合う時間になった。




