第5話『伝えたい、でも怖い』
春――夕方。
キャンパスの図書館前。
「……陽菜」
「……っ」
振り向くと、さくやが少し照れた顔で立っている。
「……話、ある?」
「……はい」
沈黙。
「……さっきのこと」
「……さくやさん、ごめんなさい」
「……いや、俺も悪かった」
「……?」
「……あの時、お前の気持ちをちゃんと聞かずに怒った」
「……怒った、ですか?」
「……言い方きつかったかもしれない」
「……そんなことないです」
「……でも、重く受け止めてくれたら嬉しい」
「……はい」
お互い少しずつ歩きながら。
「……陽菜」
「……はい」
「……本当に、寂しかったの?」
「……はい」
「……正直に、全部言ってくれていいんだぞ」
「……でも」
「……でも?」
「……さくやさん、怒るかもって思った」
「……怒らない」
「……でも、怖かった」
胸が、ぎゅっとなる。
「……陽菜」
「……はい」
「……俺はお前の全部、受け止める」
「……っ」
涙がこぼれそうになる。
「……でも、私……まだ怖いです」
「……怖い?」
「……はい、さくやさんに嫌われたら……」
「……嫌いになんか、ならない」
その一言に、胸が震える。
「……でも……」
「……陽菜、信じろ」
「……っ」
少し沈黙。
「……私、もっとちゃんと気持ち伝えます」
「……それでいい」
「……怖いけど、ちゃんと話す」
「……うん、待ってる」
「……さくやさんも、ちゃんと聞いてくれますか?」
「……もちろん」
二人の距離が少し縮まる。
「……ありがとう、さくやさん」
「……俺も、ありがとう、陽菜」
桜の花びらが舞うキャンパスの中、風が二人の髪をそっと揺らす。
「……ねぇ、さくやさん」
「ん?」
「……怖くても、迷っても、ちゃんと伝えていいんだって思いました」
「……ああ、そうだ」
「……これからは、ちゃんと手を取り合って進もう」
「……ああ」
二人の手が自然に重なり、心の距離もぐっと近づく。
「……もう、怖くないです」
「……俺もだ」
沈黙が訪れる。
でも、それは寂しさではなく、互いを確かめ合う安心感に満ちた静かな時間。
「……ねぇ、さくやさん」
「……うん?」
「……これからも、ずっと一緒ですよね?」
「……ああ、絶対だ」
陽菜は胸の奥に温かい光が灯るのを感じ、手を握り返す。




