第4話『初めてのすれ違い』
春――夕方。
大学のキャンパス。
「……陽菜」
「……っ」
振り向くと、さくやが立っている。
「……さくやさん、どうしました?」
「……話したいことがある」
その声は、少し低く、落ち着かない。
「……はい」
歩きながら、二人。
沈黙が長く続く。
「……さっきのこと」
「……返信のこと?」
「……ああ」
「……ごめんなさい」
「……陽菜、なんで黙ってたんだ」
「……だって」
「……?」
「……重いって思われるかもって思ったから」
「……重い?」
「……はい」
「……俺はそんなこと思わない」
「……でも」
「……でも?」
「……あの時、言えなくて……すごく不安だった」
胸が締め付けられる。
「……だからって」
「……?」
「……俺の気持ちまで疑うなよ」
「……疑ってません」
「……じゃあ、なんで黙る」
「……言ったら、怒られるかと思って……」
「……怒るわけないだろ」
少し声が強くなる。
「……でも、怖かったんです」
「……怖い?」
「……さくやさんに、嫌われたくなくて」
「……陽菜……」
言葉が詰まる。
「……嫌いになんか、絶対ならない」
「……でも……」
「……でも?」
「……私、さくやさんが楽しそうにしてると、ちょっと寂しくなるんです」
その言葉に、さくやは少し黙る。
「……それ、言えよ」
「……でも」
「……でも?」
「……重いと思われるかもって」
「……重くない」
少しだけ優しく、でも真剣に。
「……陽菜、俺はお前の気持ち、全部受け止める」
「……っ」
胸がぎゅっとなる。
「……でも、私……怖いんです」
「……?」
「……さくやさんに嫌われたらどうしようって」
「……嫌いになんか、絶対ならない」
その一言に、涙がにじむ。
「……でも……」
「……陽菜」
「……はい」
「……これからは、溜めるな」
「……はい」
少しだけ、頷く。
でも――
(本当に、うまくいくのかな)
(この距離、この気持ち、これからも)
キャンパスの風が、二人の髪を揺らす。
沈黙の中で、互いの心が少しずつ近づく。
でも――
(まだ、完全には戻ってない)
(揺れる恋は、ここからだ)




