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『君を忘れても、また好きになる』  作者: 優貴(Yukky)


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第3章『同じ空の下で、揺れる想い』 第1話 『はじまりの距離』

春――大学初日。

キャンパス。

広い空。

新しい建物。

知らない人たち。

「……」

少しだけ立ち止まる。

(……ここが)

(これからの場所)

「……陽菜!」

「……っ」

振り向く。

「……さくやさん」

手を振りながら、駆け寄ってくる。

「……おはよう」

「……おはようございます」

少しだけ笑う。

「……緊張してる?」

「……少しだけ」

「……俺も」

「……え?」

「……ちょっとな」

少し照れたように笑う。

「……意外です」

「……失礼だな」

二人で少し笑う。

「……広いですね」

「……迷いそうだな」

「……もう迷ってます」

「……早いな」

笑い合う。

「……同じ場所にいるんですね」

ぽつりと呟く。

「……ああ」

「……やっとだな」

その一言に、胸がじんわり温かくなる。

講義室。

「……ここで合ってますかね」

「……たぶん」

「……たぶんって」

「……違ったら出る」

「……もう」

少し笑う。

席に座る。

周りは、知らない人ばかり。

「……」

少しだけ不安になる。

「……陽菜」

「……はい」

「……大丈夫か」

その一言。

「……はい」

少しだけ強く頷く。

講義が始まる。

先生の声。

ノートを取る音。

でも――

(……なんか)

(高校と違う)

(全部が、新しい)

講義終了。

「……疲れました」

「……初日だしな」

廊下。

人が多い。

「……すごい人ですね」

「……だな」

その時。

「ねぇ」

「……?」

知らない女子が、さくやに話しかける。

「同じ授業だったよね?」

「……ああ」

「よかったらさ、今度一緒に受けない?」

「……」

一瞬、空気が止まる。

「……あー」

さくやが少し困ったように笑う。

「……もう一人いるから」

「……え?」

その女子が、陽菜を見る。

「……あ」

少しだけ気まずい空気。

「……ごめんね」

女子が笑って去っていく。

「……」

沈黙。

「……モテますね」

ぽつりと呟く。

「……は?」

「……さっきの人」

「……ただ話しかけられただけだろ」

「……そうですけど」

少しだけ視線を逸らす。

「……陽菜」

「……はい」

「……なんだその顔」

「……なんでもないです」

「……嘘つけ」

「……ちょっとだけ」

小さく言う。

「……気になっただけです」

「……」

さくやが、少しだけため息をつく。

「……陽菜」

「……はい」

「……俺が誰といると思ってる」

「……」

その言葉。

「……私です」

「……だろ」

「……」

少しだけ顔が熱くなる。

「……でも」

「……?」

「……こういうの、増えますよね」

大学。

新しい人間関係。

「……まぁな」

「……」

胸が、少しだけざわつく。

(……離れないって言ったのに)

(同じ場所にいるのに)

(なんで、少し不安になるんだろう)

「……陽菜」

「……はい」

「……顔、分かりやすいぞ」

「……え?」

「……不安なんだろ」

その一言。

「……少しだけ」

正直に言う。

「……」

「……陽菜」

「……はい」

「……手、出せ」

「……え?」

「……いいから」

そっと、手を出す。

ぎゅっと、握られる。

「……っ」

「……ここにいる」

その一言。

「……」

「……離れてない」

胸が、じんわり温かくなる。

「……はい」

「……ちゃんといる」

「……」

「……だから」

「……?」

「……そんな顔すんな」

少しだけ笑う。

「……はい」

風が吹く。

キャンパスの桜が舞う。

(同じ場所に来た)

(同じ時間を生きてる)

でも――

(それでも、不安は消えない)

(だから)

(ちゃんと向き合う)

「……さくやさん」

「……ん?」

「……これからも」

「……はい」

「……ちゃんと、好きでいさせてください」

その言葉。

「……当たり前だろ」

「……」

「……俺も」

「……好きでいる」

手を、強く握る。

それは――

“はじまりの距離”。

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