第20話『そして、同じ未来へ』
春――卒業式当日。
校門。
満開の桜。
「……綺麗」
小さく呟く。
花びらが、ゆっくり舞う。
「陽菜さーん!」
「……あ、はい!」
友達に呼ばれる。
「写真撮ろー!」
「……うん」
並ぶ。
笑う。
シャッター音。
でも――
(……今日で最後)
胸の奥が、少しだけ締め付けられる。
「陽菜さん?」
「……え?」
「泣きそうな顔してる」
「……してないよ」
少しだけ笑う。
「絶対してるって!」
「……もう」
笑い合う。
でも――
涙は、もうすぐそこまで来ている。
体育館――卒業式。
校長の話。
拍手。
名前を呼ばれる。
「……はい」
立ち上がる。
(これで、本当に終わる)
一歩、一歩。
歩く。
証書を受け取る。
「……」
頭を下げる。
(ありがとう)
席に戻る。
式が終わる。
「……終わったね」
「……うん」
ざわめき。
笑い声。
泣き声。
「陽菜さん!」
「……はい?」
抱きつかれる。
「寂しいよー!」
「……私も」
涙が、こぼれる。
「また会えるよね?」
「……うん」
「絶対だよ!」
「……うん、絶対」
教室――最後の時間。
「……」
自分の席に座る。
(ここで、いっぱい話したな)
机に手を置く。
「……ありがとう」
小さく呟く。
「陽菜さーん!」
「……はい?」
「黒板、一緒に写真撮ろ!」
「……うん」
黒板には、メッセージ。
“ありがとう”
“またね”
その前で、写真を撮る。
放課後――校舎裏。
静かな場所。
「……」
深呼吸。
(来てるかな)
「……陽菜」
「……っ」
振り向く。
「……さくやさん」
そこにいた。
制服じゃない姿。
でも――
変わらない。
「……卒業、おめでとう」
「……ありがとうございます」
少しだけ笑う。
でも――
涙がこぼれる。
「……やっぱり泣いてるな」
「……無理です」
少し笑う。
「……陽菜」
「……はい」
「……終わったな」
「……はい」
少しの沈黙。
でも――
それが、すごく優しい。
「……ねぇ、さくやさん」
「……ん?」
「……ここで、いっぱい話しましたよね」
「……ああ」
「……迷ったり」
「……ああ」
「……泣いたり」
「……ああ」
「……でも」
「……全部、無駄じゃなかったです」
その一言。
「……」
さくやが、ゆっくり頷く。
「……当たり前だろ」
「……ここまで来たんだから」
胸が、じんわり温かくなる。
「……陽菜」
「……はい」
「……これからさ」
「……はい」
「……同じ大学で」
「……はい」
「……また、最初からだな」
「……はい」
少しだけ笑う。
「……でも」
「……今度は、離れないですね」
その言葉。
「……ああ」
「……ずっと、一緒だ」
その一言。
涙が、また溢れる。
「……陽菜」
「……はい」
「……来いよ」
手を差し出される。
「……」
少しだけ見つめる。
(ここから)
(新しい未来)
その手を、取る。
「……はい」
ぎゅっと、握る。
「……さくやさん」
「……ん?」
「……好きです」
「……俺も」
「……好きだよ」
桜が舞う。
風が、二人の髪を揺らす。
(終わった)
(でも)
(始まる)
(今度は)
(同じ場所で)
(同じ時間で)
二人で歩き出す。
校門の外へ。
それは――
“別れ”じゃない。
“始まり”。




