第17話『一緒に、結果を迎えに行く』
冬――朝。
吐く息が白い。
「……寒い」
コートの袖を少し引っ張る。
手が、少し冷たい。
(……今日)
胸の奥が、ざわつく。
(全部、決まる日)
スマホを見る。
時間。
待ち合わせの場所。
(……もうすぐ)
駅前。
人が行き交う。
でも――
どこか、音が遠い。
「……」
立ち止まる。
深呼吸。
(大丈夫)
(やることはやった)
「……陽菜」
「……っ」
その声。
振り向く。
「……さくやさん」
そこにいた。
少しだけ息を切らして。
「……ごめん、待った?」
「……ううん、今来たところです」
少しだけ笑う。
「……寒いな」
「……はい」
少しの沈黙。
でも――
今日は、その沈黙すら緊張する。
「……陽菜」
「……はい」
「……顔、固いぞ」
「……そうですか?」
「……めちゃくちゃ」
「……」
少しだけ苦笑い。
「……さくやさんもですよ」
「……バレたか」
少しだけ笑う。
その笑顔に、少しだけ力が抜ける。
「……行くか」
「……はい」
並んで歩き出す。
足音が、揃う。
「……陽菜」
「……はい」
「……どうだ、今の気分」
「……怖いです」
正直に言う。
「……だよな」
「……でも」
「……?」
「……一人じゃないので」
その一言。
「……」
さくやが、少しだけ目を細める。
「……そうだな」
その言葉に、胸が少しだけ軽くなる。
「……もし」
陽菜が小さく言う。
「……もし、ダメだったら」
足が、少しだけ止まりそうになる。
「……」
「……どうしますか」
その問い。
さくやは、少しだけ前を見たまま。
「……その時は」
一拍。
「……また一緒に考える」
「……」
「……陽菜、一人で抱えるな」
その言葉に、目が潤む。
「……はい」
「……でも」
少しだけ笑う。
「……俺は、受かってると思う」
「……またそれですか」
「……勘だけどな」
「……もう」
少しだけ笑う。
緊張が、少しだけほどける。
「……ねぇ、さくやさん」
「……ん?」
「……ここまで来れたの」
少しだけ声が震える。
「……さくやさんがいたからです」
「……」
「……一人だったら」
「……」
「……きっと、途中で折れてました」
その言葉。
「……陽菜」
「……はい」
「……それでも、やったのは陽菜だろ」
「……」
「……俺は、ちょっと支えただけ」
「……違います」
少しだけ強く言う。
「……何回も、助けられました」
「……」
「……だから」
一歩、前を見る。
「……今日、ちゃんと行けます」
その言葉に、さくやが小さく頷く。
大学前。
人が集まっている。
ざわめき。
緊張。
掲示板の前。
「……」
足が、止まる。
(……ここだ)
「……陽菜」
「……はい」
「……行くか」
「……はい」
一歩。
でも、足が重い。
「……っ」
その時。
ぎゅっと、手を握られる。
「……」
「……大丈夫だ」
その一言。
「……」
「……一緒に見る」
その言葉に、強く頷く。
「……はい」
一歩。
また一歩。
掲示板が、近づく。
心臓が、うるさい。
(……怖い)
(でも)
手の温もり。
(大丈夫)
「……陽菜」
「……はい」
「……ここまで来たな」
「……はい」
「……開けようか」
掲示板の前。
深呼吸。
「……はい」
それは――
未来を開く瞬間。




