表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『君を忘れても、また好きになる』  作者: 優貴(Yukky)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/64

第14話『それでも、あなたを選ぶ』

秋――放課後。

教室に差し込む夕焼けが、少しだけ寂しい色をしていた。

「……はぁ」

ペンを止める。

ノートは、文字で埋まっている。

(……疲れた)

でも、手は止めない。

(ここでやめたら、意味ない)

そう思った瞬間――

「……陽菜さん」

「……え?」

呼ばれて、振り向く。

教室のドアのところ。

隣のクラスの男子。

「……來斗くん」

少しだけ緊張した顔。

「……ちょっといい?」

「……うん」

自然に立ち上がる。

でも――

胸の奥が、少しだけざわつく。

校舎裏。

風が、冷たい。

夕焼けが、ゆっくり沈んでいく。

「……どうしたの?」

「……」

來斗くんは、少しだけ視線を落としたまま。

「……急に呼び出して、ごめん」

「……大丈夫」

小さく笑う。

「……陽菜さん」

「……うん」

「……俺さ」

息を吸う音。

少しだけ、空気が変わる。

「……ずっと気になってた」

「……」

心臓が、少しだけ強く鳴る。

「……頑張ってるじゃん」

「……」

「……一人で、ずっと」

「……」

その言葉に、少しだけ驚く。

(……見てたんだ)

「……すごいなって思って」

「……」

「……だから」

顔を上げる。

まっすぐな目。

「……好きです」

その一言。

時間が、止まる。

風の音だけが、やけに大きく聞こえる。

(……どうしよう)

(ちゃんと答えないと)

「……陽菜さん?」

「……」

呼ばれる。

我に返る。

「……ありがとう」

ゆっくり言う。

「……すごく、嬉しい」

本当の気持ち。

でも――

「……ごめんね」

その一言で、空気が変わる。

「……やっぱり、ダメ?」

小さな声。

「……好きな人がいます」

はっきり言う。

「……」

沈黙。

「……その人と」

少しだけ息を整える。

「……約束してるから」

「……そっか」

來斗くんが、小さく笑う。

でも――

少しだけ、寂しそう。

「……遠距離?」

「……うん」

「……きつくない?」

その問い。

「……きついよ」

正直に答える。

「……毎日、寂しいし」

「……」

「……会いたいって思うし」

「……」

「……不安にもなる」

言葉にするたびに、

胸の奥が少しずつ痛くなる。

「……じゃあ、なんで」

その問い。

(……なんで)

一瞬、迷う。

でも――

「……それでも、その人がいいから」

自然に出た言葉。

「……」

來斗くんが、少しだけ目を見開く。

「……陽菜さんってさ」

「……?」

「……強いよな」

「……全然」

首を振る。

「……弱いよ」

「……え?」

「……すぐ不安になるし」

「……」

「……泣きそうになることもある」

「……」

「……でも」

顔を上げる。

「……それでも」

「……その人を選びたいって思えるから」

その一言。

沈黙。

風が吹く。

「……負けたな」

來斗くんが、小さく笑う。

「……そんな顔で言われたら」

「……引けない」

「……陽菜さん」

「……うん」

「……その人、大事にしろよ」

「……うん」

強く頷く。

「……泣かせたら、俺が奪うから」

少しだけ冗談っぽく言う。

「……ふふ」

思わず笑う。

「……ありがとう」

「……じゃあな」

背中が、遠ざかっていく。

静かになる。

「……」

空を見上げる。

夕焼け。

(……さくやさん)

胸が、ぎゅっと締め付けられる。

スマホを取り出す。

《今、少しだけいいですか?》

送信。

すぐに返信が来る。

《いいよ》

電話をかける。

「……もしもし」

「……陽菜?」

その声。

一瞬で、全部ほどける。

「……さくやさん」

少しだけ、声が震える。

「……どうした」

「……今日」

深呼吸。

「……告白されました」

「……」

沈黙。

「……ちゃんと断りました」

「……」

「……でも」

言葉が、少し詰まる。

「……少しだけ、揺れました」

正直に言う。

「……」

「……それでも」

「……さくやさんを選びました」

その一言。

「……陽菜」

優しい声。

「……ありがとう」

「……え?」

「……ちゃんと、選んでくれて」

胸が、じんわり温かくなる。

「……揺れるのは当たり前だ」

「……」

「……それでも、俺を選んだんだろ」

「……うん」

「……なら、それでいい」

涙が、こぼれる。

「……陽菜」

「……はい」

「……好きだよ」

「……私も」

「……好きです」

(揺れた)

(迷った)

それでも――

(選んだ)

それが、

“本当の想い”。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ