第10話『君を忘れても、また好きになる』
春――教室。
「……ひなー!」
「……ん?」
「進路、もう決めた?」
「……うん」
少しだけ笑う。
「……決めたよ」
「え、どこ?」
「……県外の大学」
「えっ、遠くない!?」
「……ちょっとだけ」
苦笑い。
「……でも、やりたいことがあって」
その言葉に、周りが少し驚く。
「……すごいじゃん」
「……うん、頑張る」
放課後――屋上。
あの場所。
あの景色。
でも――
今日は少しだけ違う。
「……ひな」
「……さくやさん」
いつもの呼び方。
でも、少しだけ大人びた響き。
「……聞いた」
「……はい」
「……県外、行くんだな」
「……はい」
風が吹く。
桜の花びらが舞う。
あの日と、同じ景色。
「……寂しくなるな」
ぽつりと、さくやが言う。
「……私もです」
素直に答える。
「……ひな」
「……はい」
「……俺さ」
少しだけ照れながら。
「……地元の大学にする」
「……そうなんですね」
「……うん」
「……やりたいこと、あるし」
「……」
「……でも」
少しだけ笑う。
「……ひながいないのは、やっぱ寂しい」
その言葉に、胸がじんわり温かくなる。
「……私も」
小さく笑う。
「……でも」
続ける。
「……大丈夫です」
「……え?」
「……離れても」
まっすぐ見る。
「……ちゃんと繋がってるって、思えるので」
その言葉に、さくやが少しだけ驚いた顔をする。
「……ひな」
「……はい」
「……強くなったな」
「……さくやさんのおかげです」
少しだけ照れる。
沈黙。
でも――
その沈黙は、もう怖くない。
「……ねぇ」
陽菜が口を開く。
「……はい」
「……もし」
少しだけ間を置く。
「……離れて、会えなくなって」
「……」
「……また、すれ違ったら」
その言葉に、さくやが少しだけ真剣な顔になる。
「……」
「……どうしますか?」
その問い。
でも――
答えは、もう決まっている。
「……その時は」
少しだけ笑う。
「……また、好きになる」
その一言。
「……」
「……何回でも」
続ける。
「……何回でも、やり直せばいい」
その言葉に、胸が熱くなる。
「……ひな」
「……はい」
「……それ、ずるいな」
少し笑う。
「……なんでですか」
「……何回でも好きになれるなら」
少しだけ近づく。
「……最強じゃん」
その言葉に、二人で少し笑う。
「……ひな」
「……はい」
「……約束しよう」
「……はい」
「……離れても」
「……はい」
「……どんなに時間が経っても」
「……はい」
「……また、会えたら」
その言葉に、胸が高鳴る。
「……」
「……その時、もう一度」
手を、そっと握る。
「……好きになる」
その一言。
「……」
涙が、にじむ。
「……はい」
強く頷く。
「……約束です」
桜が舞う。
風が吹く。
あの日と同じ景色。
でも――
二人は、もう迷っていない。
「……ひな」
「……はい」
「……好きだよ」
「……私も」
微笑む。
「……好きです」
手を、ぎゅっと握る。
今度は――
離れるために。
(大丈夫)
(離れても)
(きっと、また――)
未来は、わからない。
でも。
この想いは、消えない。
それが――
二人の答えだった。




