第9話 『雨上がりの屋上で』
屋上。
昨夜の雨のせいで、桜の花びらにはまだ水滴が残っていた。
空は晴れ間がのぞき、湿った空気の中に桜の香りが漂う。
「……さくやさん、雨上がりの屋上って、少し違う雰囲気ですね」
陽菜は少し緊張しながら、手を組んでさくやを見る。
「そうだね……でも、君と一緒ならどんな景色も特別に見える」
その言葉に陽菜の頬が赤く染まる。胸がぎゅっと締め付けられる。
「……さくやさん」
「ん?」
「もし、私が怖くなったり、迷ったりしたら……」
「その時は僕が支える。ひなが安心できるよう、手を握っている」
陽菜は小さく息を吐き、目を潤ませる。
二人はしばらく屋上を歩く。雨に濡れた桜の花びらが舞い、足元を彩る。
「……わぁ、きれい……」
「ひなと見ると、さらに特別に感じる」
陽菜は頬を赤くして視線を下げる。
「……ねぇ、さくやさん」
「ん?」
「私……あなたといると、少しだけ勇気が出るんです」
「ふふ、それなら嬉しい」
「……でも、まだ怖いこともあります」
「大丈夫。怖くても、僕がいる」
その言葉に、陽菜の胸の奥がじんわり温かくなる。
その時、強い風が吹き、濡れた花びらが陽菜の顔に舞い落ちる。
「わっ……!」
「大丈夫?」
「はい……でも、ちょっと恥ずかしいです」
さくやは笑いながら花びらを払い、そっと陽菜の髪に触れる。
「……さくやさん!」
「ふふ、似合うよ」
二人は花びらの舞う中、手を握り合い、肩を寄せる。
「……さくやさん」
「ん?」
「これからも、ずっと……あなたのそばにいてもいいですか?」
「もちろんだよ、ひな」
陽菜は目を潤ませ、微笑む。胸の奥が温かくなる。
「……私、あなたといると、怖くても迷っても頑張れそうです」
「ひな……僕もだ」
小さな風が吹き、雨上がりの光と桜の花びらが二人を包む。
屋上の静かな時間は、二人だけの秘密の空間となり、絆を確かに深めていく。




