第8話 『屋上の小さな冒険』
屋上。
朝の光が柔らかく差し込み、桜の花びらがふわりと舞っている。
陽菜は少し早めに到着し、さくやを待ちながら、手を組んでそわそわしていた。
「……さくやさん、まだかな……」
「おはよう、ひな」
さくやが息を切らせながら階段を上がってくる。
「おはようございます……さくやさん」
陽菜の頬が少し赤くなる。心臓が早く鼓動する。
「ふふ、今日も早いね」
「ええ……さくやさんと会えると思うと、自然と早く来ちゃいます」
「それは嬉しいな」
さくやは微笑み、手を差し出す。陽菜は少し迷った後、そっと手を重ねた。
「……ねぇ、さくやさん」
「ん?」
「今日、少し冒険してみませんか?」
「冒険?」
陽菜は少し恥ずかしそうに頷く。
「はい……屋上の隅に、まだ見たことのない景色があると聞いたんです」
「ふむ……それなら、行ってみようか」
二人は屋上の隅へ歩き、花びらに囲まれながら進む。
「……わぁ、きれい……」
陽菜の瞳が輝く。隙間から見える街の景色は、光に包まれ幻想的だった。
「君と見ると、いつもより特別に感じる」
陽菜は少し頬を赤らめ、視線をそらす。
「……ねぇ、さくやさん」
「ん?」
「私、ちょっと高いところが苦手で……」
「大丈夫。僕がいるから、手を握っていれば怖くない」
さくやはぎゅっと手を握る。陽菜の胸が締め付けられ、でも安心感が広がる。
二人は隅の花壇に腰を下ろす。
「……桜の香りが、こんなに強く感じるなんて」
「君といると、香りまで優しく感じる」
陽菜は目を細め、微笑む。
「……ねぇ、さくやさん」
「ん?」
「私、怖いことや迷うことがあっても……」
「その時は僕が支える。手を握って、ひなが安心できるようにする」
陽菜の目がじんわり潤む。
「……さくやさん……ありがとうございます」
その時、小さなハプニングが起こる。
風が強く吹き、濡れた花びらが陽菜の顔に舞い落ちる。
「わっ……!」
「大丈夫?」
「はい……でも、ちょっと恥ずかしいです」
さくやは笑いながら、花びらを指で払い、そっと陽菜の髪に触れる。
「……さくやさん!」
「ふふ、似合うよ」
胸がぎゅっと締め付けられ、心臓が高鳴る。
「……ねぇ、さくやさん」
「ん?」
「私、これからもずっと……あなたと一緒にいたいです」
「僕もだ、ひな」
二人は自然に肩を寄せ合い、手をぎゅっと握る。
風が吹き、桜の花びらが二人を包む。
屋上での小さな冒険は、二人だけの特別な時間となり、絆を深めていく。
「……さくやさん、私……あなたといると勇気が出ます」
「ひな……僕もだよ」
光と花びらの中、二人の心は確かに未来へ向かっていた。




