第174話:付与魔法使いは着々と準備を進める
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ジャイアント・ウルフの戦い方についてソフィアと約束を交わした翌日の正午。俺たちは里から少し離れた、件の魔物の根城にやってきていた。
「ありました! あの洞窟ですね!」
「聞いていた通り、かなり大きな足跡があるわね」
十メートルはありそうな高い崖の下に空いた大きな穴。ここが洞窟の入口になっているらしい。人間とエルフの交流がまだあった太古の昔に、旅人が使えるように掘削されたものらしいが、もう何百年も使われておらず、いつしか森に生息する魔物が棲み着くようになったと聞いた。
——ということで、まずは全員に強化魔法を付与しておく。
強化魔法の種類は、いつも通り『移動速度強化』『攻撃速度強化』『攻撃力強化』『命中率強化』『防御力強化』『魔法抵抗力強化』『回復力強化』の七つ。
「じゃあ、話していた通り、誘き寄せるとしよう」
いくら腕に自信があるとは言っても、敵はエリアボス級。念には念を入れてどのように戦うか、シルフィを交えた四人で事前に打ち合わせをしていた。ちなみにシルフィを『人』換算して良いのかわからないが、他に数え方がわからない。細かいことは気にしないでおこう。
まず、精霊の森でケルベロスを誘き寄せた時と同様に、俺自身が発散する魔力の調整でジャイアント・ウルフを刺激。洞窟の外まで誘導し、三方から囲んで隙を見ながら攻撃する予定だ。
「でも、思ったより見通しが悪いわね」
「……確かに、そうだな」
「森の中じゃ仕方ないですよ」
「いや……」
セリアの言う通り、森の中で木々が密集しているのは当たり前。だが、このエリアは管理されていないため、単純に木々が密集しているだけでなく、様々な方向に伸びてしまっている。
地形の条件は魔物も俺たちも同じ。普通の魔物なら上手く活かせば、姿を眩ませることで逆に安全を確保しながら戦うということもできそうだが——今回はちょっと特殊だ。
ジャイアント・ウルフは、ウルフと名がつく通り、狼型の魔物。嗅覚に優れ、視力だけに頼らない特性を持つ。故に視覚を利用した小細工は通用しそうにない。加えて、話に聞く通りの巨体なら木々を薙ぎ倒しながら地形を無視して攻撃を仕掛けてくる可能性もある。
それなら——






