第171話:付与魔法使いは心を揺さぶられる
エリアボスを倒した後は素材をギルドに売却し、売却した金額を参加者で分けるというのが討伐隊のルールになっている。ギルドの代わりに俺たちが買い取ればいいのだが、かなりの高額になることが予想され、それほどの現金はすぐに用意できそうにない。
「仕方ない。この前ケルベロスを誘き寄せたように、しばらく出現報告がないエリアを重点的に周ってどうにか見つけるしか……」
「ケルベロスを誘き寄せた⁉︎」
ユキナが声を裏返して驚いていた。そういえば、ユキナにはまだ話してないことだっけ。
「まあ、あの時は偶然だったんだけどな。詳しくは後で話すよ。よし——」
とその時だった。
「何を勝手に盛り上がっておるのじゃ」
「ああ、すまない。そういえばまだ話の途中だったな」
やれやれとため息を吐き、話を続けるソフィア。
「それでお主らはエリアボスを探さねばならんと言っておったが、その必要はない」
「えっ⁉︎ ど、どういうことですか⁉︎」
「実は、里の近くでジャイアント・ウルフと思われる魔物の足跡が見つかったのじゃ」
名前は聞いたことがある。通常のウルフの十倍以上の巨体で、白銀の毛皮が特徴的な魔物だ。人間の街でも発見されれば間違いなくエリアボス指定になる。
「なっ……! もしかして、昨日ジュピラと話してたのって……?」
「察しの通りじゃ。はっきり言って、これは里の一大事。一刻も早く対処せねばならぬ」
なるほどな。
昨日のジュピラが神経質になっていたのは、人間が里の中に入ってきたことだけじゃなく、里の一大事ということからの焦りもあったのかもしれない。
「そこでじゃ。既に里のエルフで討伐隊の準備を進めておるのじゃが、里としては、お主ら……アルスたちの腕を見込んで協力を要請したいと思っておる。成功した暁には、もちろん魔物の亡骸は自由にして良い。どうじゃろうか?」
「……っ!」
これは、願ってもない話だ。
エリアボス級の魔物は探してもそうそう見つかるものではない。しかも、里の周辺で手に入るなら、エルフの里の教会に行かなければならない俺たちにとっては都合が良い。
「なんと! 断る理由がないですね!」
「そうね。どうせいつか戦うなら、都合が良い話だわ」
ソフィアの提案で盛り上がるセリアとユキナ。だが、俺は一点だけ引っかかっていた。






