第169話:付与魔法使いは書庫を出る
◇
「少しは役に立てたようで良かったわい」
書庫に戻ってくると、ソフィアはほっとした様子で呟いた。
「おっと、それともう一つ。お主らが探しておる魔法書に関することじゃが……」
「……っ!」
ソフィアの言葉に反応して、ユキナがビクッと肩を揺らした。
しかし——
「色々と探してみたのじゃが、残念ながらどうもこれといった手掛かりがないのじゃ」
「……そう。仕方ないわ」
「まあまあ、諦めるには早いのじゃ。ワシでは見つけられなかったが、まったく当てがないというわけでもない。——外に出るのじゃ」
ソフィアはそのように言って、俺たちを書庫の外に誘導する。
そして、外に出たところで世界樹の下にあるエルフの里の教会の方を指差した。
「教会に行ってみるのじゃ。エルフの神は何でも知っておる。何かヒントをくれるやもしれぬ」
エルフは人間とは違った神を信じているという噂は聞いたことがある。エルフにとっては唯一神であるため、単に『神』としか呼ばれず、固有名詞はない。
「教会には人間が入っても大丈夫なのか?」
「神はケチくさいことは言わん。心配は無用じゃ」
「なるほど。それじゃあ……」
と、早速向かおうとしたその時。
「待つのじゃ」
「……?」
「神は心が広く、大らかな存在だと言われておるが……質問に答えてもらうには、相応の誠意を見せる必要があるのじゃ」
「誠意……? 丁寧にお願いすれば良いのでしょうか?」
「それは礼儀じゃ」
「となると、何か供物が必要ということかしら」
「うむ」
「何も条件がなければ、些細なことで質問攻めに遭い、神も困ってしまうからの。ある時から質問者の悩みの大きさを測るため神は供物を欲するようになったと言い伝えられておる」
なるほど、タダでは教えてくれないということらしい。
確かに、調べれば簡単に分かることも含め気軽に質問されまくれば、神にとってはたまったものではないのかもしれない。
「それで持っていくべき供物じゃが……ずばり、魔物の亡骸じゃな」
「魔物……?」
少し意外な答えだったため、反射的に聞き返してしまった。
ソフィアは気にせず説明を続ける。






