第164話:付与魔法使いは謝られる
「に、にしても驚いたな……。まさかこれほどの実力者だったとは……。いったい、あの嬢ちゃんは何者なんだ……?」
「『剣聖』だよ。まだ俺から言わせりゃ未熟だけどな」
「なっ! あの幻のユニークジョブだと⁉︎ 確かに、それならこの歳の人間ではあり得ねえ力の説明はつく。だ、だがさっき嬢ちゃんはあんたの方が強いと……そりゃどういうことだ?」
「そのままの意味だとは思うが……とりあえず、じっとしてろ。治してやる」
命さえあれば、どのような怪我でも基本的には付与魔法でどうにでもなる。
腰椎の辺りを意識し、今回は戦う前の状態に戻すイメージで付与しよう。
「ヒール」
ちなみに、ヒール系の付与魔法は複数の手法を使い分けたり、併用したりしている。単純な怪我であれば患部を再生させるイメージで構わない。しかし、今回のような一度起こすと繰り返しやすい怪我は怪我する前の状態に戻した方が都合がいい。併用するケースは、怪我だけを再生させ、傷跡だけを後に残らないよう戻すような時だ。
時を戻すイメージの手法の方が汎用性が高い。しかし、時を戻す手法の方が魔力を消費しやすい。やはり使い分けは必要なのだ。
……と、それはともかく。
狙い通り、一瞬にしてリオレスのぎっくり腰は完治した。
「えっ? ど、どういうことだ? 痛くない……だと?」
目をパチパチさせるリオレス。何が起こったのか、理解できていないようだ。
「アルス……あんたが治してくれたってことなのか? この一瞬で……?」
「まあ、簡単に言うとそういうことになる」
「す、すげえな……。恩に着る! こりゃとんでもねえ回復術師だ」
「アルスは回復術師ではありませんよ?」
セリアは指をチッチと揺らし、なぜか自慢気な様子でそう伝えた。
「む? どういうことだ?」
「アルスは、『付与魔術師』なのです」
「『付与魔術師』だと⁉︎ 『付与魔法師』じゃなく、ユニークジョブってことか⁉︎」
「その通りです!」
「なんてことだ……。世界でもそう何人もいないユニークジョブがここに二人もいたとは……」
「ちなみに、ここのユキナも『賢者』ですよ!」
「……は?」
絶句するリオレス。
まあ、気持ちは分かる。ユニークジョブというのは希少すぎて、既に名が知られた者を除けば探すことさえ困難なのだからな。
「しかし、『付与魔術師』なら付与魔法がすごいんじゃないのか? 回復魔法も使えるなんて、何かがおかしいぞ……?」
リオレスは素朴な疑問を口にする。
すると、セリアがすぐさま答えた。何故か嬉しそうに。
「アルスは何でもできちゃうのです! 付与魔法も、回復魔法も、攻撃魔法も、剣技も!」
まあ、正確にはどれも付与魔法を応用しているので、付与魔法の範疇ではある。しかしここで細かく説明するのは面倒だ。そういうことにしておこう。
「やれやれ、身の程知らずな勝負を挑んじまったようだ……」
しょんぼりと肩を竦め、反省を口にするリオレス。
「一応聞いておくが、俺と真剣勝負……やるか?」
「いや……やめておこう。さっきは悪かったな」
「そうか。まあ、俺としてはどちらでも良かったんだが」
その後は、俺たちの強さを知ったエルフたちに指導をお願いされ、それに応えているうちに時が流れ、稽古の時間が終わったのだった。






